アーセナルの躍進を支えるスマートな補強戦略 後編

分析Tim Stillman,海外記事

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②無名の選手を発掘する

もう一つの魅力的な獲得戦略は、まだ誰も知らないタレントを見つけることだ。ただし、現代では誰もが次世代のスターを見つけようと躍起になっており、これは非常に難しくなってきている。

アーセナルはガブリエル・マルティネッリの獲得に関しては(バルセロナとマンチェスター・ユナイテッドはマルティネッリの存在は知っていたが)これに成功したと言える。

若手中心の選手獲得を行うことのメリットの一つが、好循環をもたらし、これがうまくいけばいくほど若手の獲得がさらに容易になるという点だ。

例えば、アーセナルは近年21~24歳の選手を多く獲得しているが、アーセナルのターゲットとなる若手たちは今後クラブでスミスロウやサカ、ホワイト、ウーデゴール、マルティネッリやラムズデールといった年代の選手たちが活躍しているの見て、アーセナルでならチャンスを得られるかもしれない、と思うことだろう。

これが軌道に乗れば、若いタレントの説得の難易度は下がる。

2000年の夏にアーセナルがロベール・ピレスの獲得を巡ってレアル・マドリードと争った際には、既に北ロンドンでアンリやヴィエラといった同郷の若手が成功を収めていたことが、ピレスの決断に影響を与えたのは間違いない。

③燻ぶっている選手を再起させる

そして、これと関連する最後の一つは、アーセン・ベンゲルが最も得意としていた手法だ。彼は素晴らしいタレント発掘力を持っていた人物推されている。確かにそれはその通りなのだが、同時に特にアーセナルでのキャリア前半でベンゲルが非常に上手かったのは"アウトレット"型の獲得だ。

アーセン・ベンゲルはパトリック・ヴィエラとティエリ・アンリの才能を見出したとされる。だが、それは正確な言い方ではないだろう。彼らがアーセナルにやってきた時点で、この二人が無名の選手であったわけではない。

ACミランは19歳のパトリック・ヴィエラの獲得を決めたわけだし、アーセナル移籍前にアンリは既にワールドカップ優勝を経験しており、モナコからユベントスへの移籍を勝ち取るだけの評価を得ていた。

違いとなったのは、ベンゲルが彼らがビッグクラブで活躍できていないのは才能がないからではなく、環境次第で復活させることが出来ると信じたことだ。

彼はインテルからカヌーを獲得した際にも同じようなことを行っている。彼はアヤックスからインテルへの移籍を勝ち取ったが、心臓の不調の影響で、かつてのプレイはもう見せられないとされていた。だが、ベンゲルは彼の獲得を決めた。

そして、オーフェルマルスも同様のケースだ。かつて彼はヨーロッパで最も恐れられたウイングだったが、ACLの怪我の影響で、もうスピードを取り戻せないと他のクラブは考え、そこまで市場の興味を集めていなかった。だがこれにベンゲルは賛同せず、獲得を決めた。

他のクラブで思うような活躍を見せられていない選手をアーセナルで輝かせるのがアーセンは抜群に上手かったのだ。

彼は態度面で問題を抱えているという評判の選手をリスクを承知で獲得することも多かった。ヴィルトール、ファンペルシー、ナスリ、アデバヨールらは皆性格面で扱いが難しい選手だとされており、彼らのうち何人かは実際にその通りだった。

そういった意味ではベンゲルは一種の才能の伝道者だったと言える。彼は自身が才能があると見た選手であれば、態度面の問題にかかわらず受け入れた。

恐らく、アルテタは同じようなアプローチは取らないだろうが、今のアーセナルは当時とは違いカルチャー面の変革期でもあり、扱いが難しい選手を獲得しないという方針は筋が通っている。

そして、これに関してとても興味深いのがマルティン・ウーデゴールの獲得だ。

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彼は非常に典型的なアーセン・ベンゲル型の獲得に見える。16歳でレアル・マドリードに移籍したものの、ローンを繰り返しマドリードではスタメンに定着できなかった。

ローン先のアーセナルでは悪くない活躍を見せたにも関わらず、夏の時点でウーデゴール獲得に動いたアーセナルはそこまで激しい競争には遭遇せず、35m€で獲得が可能だった。

①でも述べたが、恐らく今季のウーデゴールの活躍を見て、彼の獲得に動くべきだったと後悔しているクラブも多いに違いない。

恐らく、レアル・マドリードもアーセナルとの交渉でウーデゴールの市場価値を過小評価し、移籍金を少なく要求してしまったことを後悔しているに違いない。

これこそアンリやヴィエラと同じく、"アウトレット"タイプの獲得だと言えるだろう。何年もその才能は知られていたが、ビッグクラブで結果を出せず、ウーデゴールの才能は色あせてしまったと多くのクラブが考えていた。

だが、アーセナルは違った。

まとめ

アーセナルのようなクラブにおいては、補強戦略は上に述べた3つの方針をちょうどよくミックスする必要がある。

元サッカー長のラウール・サンジェイがクラブを去り、今のエドゥ-アルテタ体制になって以降、クラブの補強戦略はよりシャープになっている。まだ発掘が必要なチームに必要なピースは残っており、アーセナルがこれを続けてくれることを願おう。

ここまでの獲得の結果を考えれば、クラブが若干奇妙と思えるような選手獲得を行うことがあっても、ファンは少し様子を見てみようと思えることだろう。

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Posted by gern3137