居場所を失うギョケレシュはアーセナルでの物語を書き換えられるか

分析Tim Stillman,海外記事

年齢を重ねるほど、人生に絶対的なものなどほとんどないのだと気づかされる。互いに矛盾するような事実やテーマが、同時に正しいこともある。サッカーもそれと同じだ。

昨季、ヴィクトル・ギェケレシュと彼のゴールがなければ、アーセナルはリーグ優勝を果たせなかっただろう。ハヴァーツが長期離脱し、さらにシーズン後半には緊急時の代役だったミケル・メリーノまで負傷したことを考えれば、なおさらである。

チームの必要に迫られる形で、ギェケレシュは重要な選手になった。新しいチーム、新しいリーグに適応中の状態で、アーセナルの優勝への希望をその肩に背負わなければならなかったのである。

ポルトガルでの彼の得点記録を見ると、ゴールの大半はリーグ下位のチームを相手に挙げたもので、彼は「格下相手に荒稼ぎするタイプ」という評価も得ていた。

したがって、ポルトガルリーグ内でも下位のチームを圧倒して積み上げた数字が、どこまでプレミアリーグでも通用するのか。不安視されるのはもっともだった。

ただ、結局のところ、この傾向はそのままプレミアリーグにも持ち込まれた。

ギェケレシュは昨季、プレミアリーグでオープンプレーから11ゴールを記録したが、以下が、PKを除く得点相手の一覧だ。

リーズ(H)
ノッティンガム・フォレスト(H)
バーンリー(A)
リーズ(A)
サンダーランド(H)×2
スパーズ(A)×2
エヴァートン(H)
フラム(H)×2。

このうち、シーズンの最終順位が10位以上だった相手から奪ったのはサンダーランド戦のゴールだけである(ホームのボーンマス戦ではPKを決めている)。

さらにチャンピオンズリーグでは、オープンプレーからのゴールはホームのアトレティコ戦での途中出場から2ゴール、アウェイのインテル戦、ホームのカイラト戦での得点があった。ただ、このうち、試合が同点の状況での得点はホームのカイラト戦だけだった。

FA杯ではアウェイのサウサンプトン戦、EFLカップではアウェイのチェルシー戦でもゴールを記録している。

これらは決して華々しい対戦相手のリストとは言えない。

そして、2024-25シーズンのアーセナルはリーグ戦で14試合も引き分けている。

ブライトンとは2試合とも引き分け、エヴァートン、フラム、ノッティンガム・フォレスト、ブレントフォード、クリスタル・パレスとも引き分けた。

つまり表面的に見て言えば、昨季のアーセナルはこうした試合の均衡を破る、あるいは1点リードの試合の差を広げることに課題があり、昨季ギェケレシュはその問題を緩和するうえで大きな役割を果たした、と言うことができる。

これ自体に特に異論の余地はない。

しかし実際に試合を見ると、ギェケレシュが最前線にいる際のアーセナルは、しばしばぎこちなく、連係を欠いているように映った。そしてあまりにも頻繁に、彼のところにボールが入った瞬間、アーセナルの攻撃がブラックホールに吸い込まれるように消えてしまった。

彼の獲得は、アーセナルが何年も欠いていたタイプの補強だとして、おおむね歓迎された。そこに必要性があったことは理解できる。

アーセナルのスカッドには、ゴールを決めることを何よりも優先する選手が少ない。それは疑いのない事実だ。

ついにフィニッシャーらしいフィニッシャーがチームに来た、と喜ぶ人は多かった。

しかし私は以前から、この考え方は単純化しすぎだと感じている。

しかしストライカーにはチャンスを作る手助けをすること、危険なエリアでボールを失わないこと、ボールが届かない時も相手センターバックにとって厄介な存在になることなど、そもそもチャンスが彼のもとに訪れる前段階として、こういった要素が求められる。

ストライカーの仕事をシュートを決めることに限定してをただペナルティーエリアの中に配置し、ビルドアップには関与させない、という形は実際には機能しない。チームが作れるチャンスの数が減少してしまうからだ。

最高のチーム、最高の攻撃陣とは、必ずしも決定力が最も高いチームではない。最も多くのチャンスを生み出し、最も試合を支配するチームなのだ。

サッカーにおける攻撃とは質より量のゲームだ。

ほとんどのチャンスは外れる。だからこそ、大量のチャンスを作らなければならない。

昨季、プレミアリーグとチャンピオンズリーグを合わせると、ギェケレシュが先発しながらシュートを一本も打たなかった試合が8試合あった。さらに、先発し、シュートが一本だけだった試合も11試合ある。つまり、シュート数が2本未満だった先発した試合が19試合もあったということだ。

彼がほとんど試合に入れておらず、ただの傍観者になってしまう試合があまりに多すぎた。

ギョケレシュの大ファンでも、彼を組み立てへの関与度が高い選手、あるいは特に技術に優れた選手とは表現しないだろう。

ビルドアップへの貢献が少ないストライカーは、その埋め合わせとして大量のゴールを決めることが期待される。その代表例がハーランドだ。

彼ほどではなくとも、バルセロナ時代のレヴァンドフスキや、アーセナル時代のオーバメヤンのような選手も、チーム全体のプレーに関与することは多くないが、十分な数のチャンスに顔を出し、十分なゴールを決めてきた。だからこそ、そのトレードオフを受け入れることを少なくともチームは検討するのだ。

ギョケレシュの移籍金は約5500万ポンドだったが、現在のプレミアリーグの相場を考えれば、それは控えストライカーに払う金額でもある。

昨春、ハヴァーツが復帰した途端に彼は正ストライカーの座を奪った。アウェイのマンチェスター・シティ戦、そしてチャンピオンズリーグ決勝で先発したのはハヴァーツだった。

これこそまさにアーセナルにとって究極の勝負ともいえる試合で、監督が本当に信じる選手が誰なのかを示すのもこう言った試合だろう。

もちろん、チーム内の誰もが何らかの役割は与えられるきだ。しかし、本当に重要な局面になれば、選考の序列は見えてくる。

ギョケレシュは当初、『1つのオプション』として獲得された選手だったのだろう。それがハヴァーツの負傷によって、急速にそれ以上の役割を果たさなくてはならない存在に変化した。。

昨夏、アーセナルはシェシュコにも関心を示していたが、シェシュコの方が、タイプとしてはハヴァーツに近いように感じる。しかし2025年夏、アーセナルは『今季勝つ』ことを最優先し、経験と得点数を理由にギェケレシュを選択した。

それはもちろん、理解できる判断だったとは思うが、それが短期的な視点に偏った判断だったことは間違いない。

今季、ギェケレシュは開幕2試合では途中出場すらしなかった。

チェルシー戦では途中出場したが、正直に言えば、これは彼に合わない状況だった。

アーセナルはリードを守ろうとしていた。そして率直に言わせてもらえば、彼のポストプレーでの貢献は全く期待できない。

こういう状況で、彼はプレッシャーを受けたチームがボールを逃がすための逃げ道にはなれない。

彼に関して、最も残念な点は、ギョケレシュは驚異的なフィジカルを持っているにもかかわらず、それをどう使えばいいのか分かっていないように見えることだ。

技術的な限界については仕方がない。彼はもう28歳であり、ここから技術面が劇的に改善する、ということもないだろう。

彼は、もっと相手DFにとって脅威となるプレイができるはずだ。少なくとも、その体格を使って相手DFを圧倒し、無駄に動かし、嫌がらせることはできるはずだ。

昨季、それができていた試合はあった。例えば昨年9月のアウェイのニューカッスル戦では、相手DFに背中を預け、味方がサポートに来るまで身体を張ってコンタクトを受け止めるプレーは非常に良かったと思う。

しかし、これはあくまで例外的なプレーにしかならなかった。

現在も過去も、プレミアリーグには、才能という面ではギョケレシュより遥かに恵まれておらず、全体的なプレイ制度も彼より劣るストライカーもたくさんいた。

だが、そういう選手たちでも、少なくとも「自分のできる範囲で、相手のDFにとって徹底的に厄介な存在になる」という覚悟は決まっていた。

ウォルコットの技術不足には何度も落胆させられたものだ(何度か大声で悪態をついたこともあった)。しかし少なくとも、彼には怖さがあった。

どれほど酷いプレーをしている日であっても、スピードと縦への推進力によって、少しでも気を抜いていると、一瞬のうちに何かを起こされてしまうかもしれない、相手DFに、そう感じさせるだけの怖さがあった。

ギェケレシュには、それが十分に見えない。

水曜夜のナポリ戦で、アーセナルのxGは4超えを記録した。それにもかかわらず、ギェケレシュはシュートを一本も打たなかった。

これは、アルテタが彼の起用に消極的だった理由をよく表していたと思う。

コヴェントリー戦とヴィラ戦で彼が最後までベンチに座っていたのも、フリアン・アルバレスがアトレティで疎まれ続けるよりアーセナルへの移籍を選んだ場合に備え、アーセナルがギョケレシュを取引の一部として使う用意があったからかもしれない。

だがその後、ハイレベルなチェルシーを相手に1点のリードを守る試合では、チームの逃げ道になることができなかった。低い位置で守る相手に対し、アーセナルが快調に攻め続け、次々とチャンスを作った試合では、シュートを一本も打てなかった。

ギョケレシュという選手が輝ける、彼に適した試合展開が訪れることが少しずつ減少しているように見える。

彼の名誉のためにも言っておくと、彼は、昨季アーセナルの選手たちが皆リハビリ室に次々と消えていく中で、彼だけはピッチに常にとどまり、試合に次ぐ試合に出場し続けてくれた。

もちろん、今季同じことがまた起こる可能性もある。

いずれにせよ、仮にそうならなかったとしても、アーセナルはギョケレシュに良いプレーをし、ゴールを決めてもらう必要がある。今季それでも彼はそれなりに出場機会を得るだろう。シーズンは長いし、彼はスカッドの重要な一員だ。

ギョケレシュが物語を書き換える時間はまだ残されている。

しかし現時点では、彼は価値あるチームのメンバーというよりも、ただ頭数を埋めるための選手、そしてチームのスタイルにフィットしていない場違いな選手に、少しずつ見え始めている。

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Posted by gern3137