今季のアーセナルでのエゼの役割は?
アーセナルがエベレチ・エゼを獲得したのは、昨年8月23日のことだった。彼が獲得可能であることはかなり前から知られていたが、もともとアーセナルは、強く興味を示していたわけではなかったように見えた。
ところが、昨季開幕戦でカイ・ハヴァーツが膝を負傷したことで、状況は一気に変わった。そしてアーセナルはトッテナムへの移籍が目前となっていたエゼを獲得した。
ただ、エゼの才能そのものには疑いはないが、この補強にはいくつか疑問が残る。昨季のリーグ戦では7ゴール2アシストを記録したが、正直に言えば、これは攻撃面で重要な役割を任されている選手としてはトップクラスの数字とは言い難い。
同じポジションにエゼとウーデゴールを抱えるのは、少々過剰にも思えるし、逆に、非常に選手層が充実していると言うこともできる。エゼとウーデゴールがタイプが全く異なり、これはチームに多彩さと柔軟性をもたらす一方で、継続性や連係にとってはマイナスの可能性もある。
一つ指摘したいのは、ハヴァーツが負傷するまでは、そこまで大きなものではないだろうが、アルテタもエゼ獲得について何らかの疑念を抱いていたはずだ、ということだ。
当初は、長年補強の必要性が指摘されてきた左ウイングの選択肢としてエゼが起用されるのかと思われ、それを楽しみにしていた人も多かった。
しかし、エゼはクリスタル・パレスでは伝統的な意味での左ウイングではなかった。3-4-2-1の左の10番、つまりアーセナルの左ウイングが従来プレーしてきた位置よりもかなり内側でプレーする選手だった。
そして実際に、移籍後の左ウイングでのプレーへの適応はぎこちなかった。パレスでは非常に自由度の高い役割を与えられていたため、アルテタが掲げるプレスや、極限まで走ることを求められる、守備面での要求に慣れていなかったのかもしれない。
昨季はウーデゴールがずっと負傷していたため、エゼが「非常に才能はあるが、ベストな役割を見つけるのが難しい選手」だったという事実は、あまり問題にならなかった。
だが、もしエゼと同じだけの出場機会を与えられていたなら、イーサン・ヌワネリでも同程度の数字を残せたのではないか、という疑問は十分に妥当だ。
もちろん、エゼはホームのパレス戦、そしてホームのニューカッスル戦で、重要なゴールを決めたし、3月に負傷する直前には、アーセナルの10番として何を求められているのかを掴み始めている兆候も見せた。彼が復帰した頃にはマルティン・ウーデゴールも復帰していたので、エゼの役割はまた曖昧なものになってしまったが。
根本的な問題は、エゼは左ウイングでも10番でもなく、その両方を合わせたハイブリッド型の選手だということだ。そして、アーセナルがそのようなポジションの選手を起用するシステムを採用することはないように思える。
ブルーノ・ギマランイスの加入によって、この状況はエゼにとってさらに不利な方向へ傾いたように見える。
昨季はエゼとウーデゴールが同時に中盤でプレーする機会もそれなりにありそうに見えたが、今夏アーセナルが28歳のブルーノに8000万ポンド近い大金を投じたのは、ローテーション要員にするためではないだろう。
今季はデクラン・ライスの出場は昨季よりは減らすべきかもしれないが、とはいえ彼をずっとピッチに立たせず温泉につからせておく、というわけにもいかないだろう。
加えて、ルイス=スケリーが中盤の選手として台頭してきたことで、選手層にはさらに厚みが生まれ、中盤はかなり込み合っている。
エゼは4月、マンチェスター・シティとのタイトル争いを左右する大一番で左ウイングとして先発した。また開幕ののコヴェントリー戦でも、左ウイングとして途中出場している。
冬のヴィラ・パークでキャッシュをマークできなかった出来事がずっと頭に残っているように見えたアルテタも、再び彼をサイドで起用することを考えているようだ。
春に、アーセナルの一部の選手たちが暗雲に気を取られはじめた時期に、エゼがチームに必要だった落ち着きをもたらした、という意見には一理あると思う。
ただ、それは一時的なものだったと考えるべきだろう。
長々と書いてきたが、結局のところ問いたいのは、もし今季アーセナルが中盤でとんでもない数の負傷者に見舞われない場合(もちろん、アーセナルには前例もあり、これが起きる可能性はあるが)今季のエゼのアーセナルでの役割は何になるのだろうか、ということだ。
スカッドの人数配分という観点だけで考えれば攻撃的MFとしてより、左ウイングの方がはるかに理にかなっているが、アルテタが長期的にここで彼を使うつもりなのかは、まだ分からない。
監督は、選手層を優先して試合結果に影響する決断を下したりはしないだろう。そして、するべきでもない。
もちろん、エゼにとって有利に働きそうな要素もいくつもある。
現時点では、左ウイングでツォリスが素晴らしいプレーを見せているが、まだ彼への期待はある程度抑えておくべきだろう。
トロサールは売却され、マルティネッリの移籍も進んでいる。もしアーセナルがウイングではなく、アルバレスを獲得するなら、左ウイングでエゼを使う選択肢はさらに現実味を増す。
エゼがこのポジションでのプレイに適応できれば、左サイドには居場所がある。そして、それは十分に起こり得ることだ。
ただ、人生でもサッカーでも、「そうなればその集団にとって一番都合がいい」という理由で、全てが綺麗に収まるわけではない。
私はエゼのプレイが大好きだし、チームにとって非常に有用な資質を持つ選手だと思っている。ただ、今季のアーセナルのどこに彼が収まるのかが気になるだけだ。そしてそれは今の所どこかに決まっているわけではなさそうだ
アルテタがこれまでにも特定のポジションというよりプレーエリアに基づいて選手を獲得し、彼らの起用法を変えてきた例はある。
ライスは6番と8番を行き来してきたし、ハヴァーツは最終的に、中盤よりもストライカーとして結果を残した。スビメンディが調子を落とした昨季終盤にはルイス=スケリーがCMFとして台頭した。
エゼにも同様のことが起こる可能性はあるが、二つの違いがある。
まず第一に、アルテタはハヴァーツやライスほど強くエゼ獲得を望んでいたわけではなかった、という点だ。
第二に、エゼが輝くプレーエリアは左のハーフスペースだが、このエリアがアルテタが磨き上げていきたいと考えているエリアなのかについては、定かではない。もちろん、他のすべてと同様、この点についても、私が間違っている可能性はある。
だからこそ、今季のエゼがどのような役割を与えられるのか、注目していきたい。
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