アーセナルを救うミケル・メリーノ
この2年間、アルテタはなんとか左8番でプレイしたグラニト・ジャカの代役を見つけようとしてきた。だが、その役を担うべく夏に獲得されてきた選手は二年連続で、シーズン途中でストライカーに転向することとなっている。
メリーノはゆっくりと時間をかけ、チームに合わせて育て上げる、というタイプの獲得ではなかった。既にユーロ2024優勝経験があり、28歳で、プレミアリーグでのプレイ経験もあり、かつプロフィール的にもアルテタがこのポジションの選手に臨む多くを備えているように見えた。
体格はよく、空中戦に強く、かつボックス内に飛び込んでその威力を発揮し、かつデュエルに圧倒的に強い。これはアルテタが左8番に望む、ボールを持ってというよりも味方に合わせて走りこむ形でプレイするスタイル向きだ。
以前はスミスロウやビエイラ、トロサールをアルテタは起用することもあったが、これはどちらかというと相手が5バックなどで試合に臨み、アーセナルが多くボールを持てることが予期される場合が多く、通常の場合はアルテタはボールを足元で受けて存在感を見せられるタイプの選手をこの位置に置くことを好まない。過去のアーセナルで、このポジションでアルテタから安定して信頼を得たのはジャカとライスの2人のみだ。
だが、メリーノもまた、過去の前任者たちと同じように、即戦力として獲得されたにもかかわらず、この左8番の仕事に適応するのに苦戦していた。
EUROの影響で合流が遅れたため満足なプレシーズンは送れず、かつシーズン序盤に怪我もしてしまった。そして、メリーノが復帰したころにはアーセナルにはウーデゴールが不在で、少し普段と異なる戦い方を強いられていた。
そのため、メリーノは10月のリバプール戦でセットプレイから得点を挙げたのを除けば、思うような活躍は見せられていなかった。
カラバオ杯のプレストン千でぇあハーフタイムで交代し、その数日後の古巣ニューカッスル戦でも60分程度しかプレイしなかった。そのさらに数日後のインテル戦でもまたハーフタイムで交代した。
アーセナルが敗北を喫したFA杯マンチェスター・ユナイテッド戦では前半ボールタッチを7回しか記録できなかったこともあった。
ただ、アルテタが左8番に求めているのは積極的にボール回しに絡むことではなく、ボックスに飛び込んで仕事をすることであり、プレスに走り、デュエルに勝ち、そして右からのボールに対してファー側に走りこんでウーデゴールやサカからのボールをペナルティエリアで受けることだ。
その点では、この時期のメリーノのプレイもそこまで悪かったわけではないが、ウーデゴールの不在、そして復帰後もすぐには調子が戻らなかったこともあり、アーセナルにはチャンス創出力が不足していた。ファンはよりクリエイティブな選手を望み始めていた。
だが、そこでハヴァーツの怪我が起き、メリーノには昨季のハヴァーツと全く同じ機会が与えられることとなった。
アーセナルの前線の人員が揃っている状況でメリーノが再びストライカーとしてプレイするかどうかは不透明で、その点ではハヴァーツとは少し状況が違うが、ハヴァーツの離脱直後の試合のワントップにアルテタはトロサールを起用したもののうまく機能せず、メリーノを投入することとなった。
この試合で彼はいきなり2得点を挙げ、その後はよく知られている通りだ。
アーセナルはハヴァーツの離脱後のプレミアリーグ5試合で7.8のxGしか記録で来ておらず、最高でもフラム戦の2.0だ。
これだけ前線に多く離脱者が出れば当然と言えば当然で、かつ、恐らくハヴァーツやジェズスの離脱よりも、サカの不在が影響を与えているだろうが、この期間中のアーセナルはあまり攻撃で脅威を多く作れてはないなかった(マルティネッリもかなり長く離脱していた)。
だが、メリーノは急に人生で一度もこなしたことのない仕事を与えられ、それを上手くこなしている。もし彼が超高額で獲得されてきたストライカーであれば、得点以外の部分でもう少し望みたくはなるかもしれないが、もちろん彼は違うし、彼は最前線にポジションを移して以降既に5得点を記録しており、状況を考えればこれは素晴らしい数字だ。
WhoScoredのデータによれば、メリーノが初めてストライカーとしてプレイした2/15のレスター戦以降に限ってみれば、メリーノの枠内シュート率はプレミアリーグ全選手中最高を記録している(10本以上シュートを打っている選手に限る・36.4%)。
もちろんこれがずっと続くものではなく、一時的な好調にすぎないのは間違いないが、それでも素晴らしい成績だ。
メリーノは少々物足りない新加入のMFから、アーセナルの救世主へと立場を変えた。
フラム戦のメリーノのゴールは少々アーセナルらしからぬゴールで、完璧にデザインされ、狙いすましたシュートというよりも、とりあえずシュートを打ってみた所、相手のDFが密集していたところでラッキーなディフレクションが起き決まったものだった。
来季以降、メリーノが再びMFに戻った場合にどのようなパフォーマンスを見せるのかは非常に興味深い。ストライカーとしてプレイした経験が彼のMFとしてのプレイにも何か深みをもたらすだろうか。もしかすると、よりストライカーがどのようなサポートを必要としているかを体感できたのはプラスに働くかもしれない。
彼の今後がどうなるにせよ、非常に奇妙な経緯ではあったが、メリーノは結果的に今季アーセナルにとって最も重要な選手の一人となった。
本来であれば、アルテタは毎試合機能しないオプションを入れ替えながら試し続ける、という状態に陥ってしまっていても不思議ではなかったが、メリーノがそのような悩みを解消してくれたのだ。
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