【戦術コラム】ボックス手前のスペースを活用しトッテナムを打ち破ったアーセナル

スタッツ・戦術Lewis Ambrose,海外記事

今回のアーセナルのノースロンドンダービーでの勝利には、多くの注目すべきポイントがあった。いかにして前半アーセナルが試合を支配したかや、ガブリエルとサリバのボール前進、サカのためのスペースを生み出したウーデゴールとジャカの外に開いてのプレイなどだ。

だが、今回特に注目したいのはアーセナルのファイナルサードでのアプローチだ。

これが今季のアーセナルがずっと練習を続けていた形であることは間違いなく、前回のトッテナム戦、10月の時点でウーデゴールはトーマス・パーティの得点に関して以下のように語っていた。

素晴らしいゴールだったね。試合前から彼があれくらいの位置でフリーになれるということはわかっていたし、沢山練習した形だった。彼のシュートは良かったね。

この得点の場面と、今回の試合でパーティがポストを叩いた場面を比較してみよう。

彼が10月に得点したのとほとんど同じ位置からシュートを打っていることが分かる。

全く同じような形でホワイト-ウーデゴール-サカがトライアングルを作っており、ボールロストに備えてサリバがケインをマークしているのも同じだ。

そして、トッテナムは自陣深くに8,9人の選手がいるにもかかわらず、誰もパーティには寄せておらず、フリーでシュートが打てている。

ボールがサイドに出た際にトッテナムが非常に奥深くに引くというのは去年からアーセナルの選手たちとアルテタは知っていたに違いない。それは今回の試合では変わりなく、アーセナルは今季のノースロンドンダービーでは、合計36本のシュートを放ったがそのうちの約半分の17本はペナルティエリア外から放たれたものだ。

今季のアーセナルは今季88本のシュートをボックス外から放っているが、割合としては全シュートのうちの31%とシーズンを通してみると、プレミアリーグの平均と大きく変わらない。

実際の所、アーセナルのシュートの平均距離はリーグ3位の短さであり、1位と2位であるリバプールとブレントフォードはヘディングでのシュートがアーセナルよりもかなり多い。

したがって、アーセナルは普段からミドルシュートが多いチームというわけではない。

一方で、トッテナムの守備戦術はボックス内を固め、対戦相手に低いクオリティの長距離からのシュートを強いるというものだ。トッテナムの対戦相手のボックス外からのシュートの割合は44%とリーグ最も高い。

だがアーセナルは、これに乗る形でボールをゴールに流し込もうとするのではなく、貰ったスペースを活かそうとし、実際にこれが機能した。

通常は、パーティはボックス外でボールを持った場合は再び組み立てなおすことを選択することが多い。

今季パーティのミドルシュート数は以前よりも減少しており、15試合で12本に留まっている。だが、この12本のうち4本がノースロンドンダービーでのものだ。

ウーデゴールは今季ボックス外からのシュート数は一試合平均1.3本だが、トッテナム戦の2試合で6本を放っている。このうちの5本がオープンプレイからのものだ。

前回の試合で得点に至ったのはパーティだったが、今回の試合ではウーデゴールだった。

コンテの戦術的に、この位置にスペースが生まれることが分かっていたからこそのプランだったと言えるだろう。

似た形は試合を通して何度も生まれていた。

実際にウーデゴールが得点した場面では、スタイル的には果敢にアプローチに行くタイプのDFであるロメロはウーデゴールに寄せないことを選択し、ドハーティはマルティネッリの外のランに引っ張られていた。

そこからドハーティはマルティネッリへのスルーパスが出るのを防ごうと中に入ったが、その間にウーデゴールは5mは進んでおり、既にシュート圏内だった。ロメロとドハーティの間には隙間があり、特にトッテナムの選手たちはミドルシュートを止めようとするような素振りは見せなかった。

もちろん、統計的にはミドルシュートが入る確率は低いし、中距離からのシュートを決めるにはシューターの質が重要となる。だが、だからと言ってそれが攻撃の戦略として成立しないということはないのだ。

ニューカッスル戦でもアーセナルは6本のボックス外からのシュートを放ったが、そのうちの半分は84分以降に放たれており、結果として得点に繋がらなかっただけではなく、タイミングとして少々遅すぎたように感じられた。

トッテナムのような自陣に深く引くタフな相手を攻略するためには、まず相手をつり出す必要があるが、その有効な手段の一つが、こちらがミドルシュートから得点を狙えるチームだと相手に考えさせることだ。

アーセナルはボックスの手前でスペースが得られることは10月の時点で既に分かっていたはずだが、トッテナムは特にアプローチを修正することはせず、今回の試合でも全く同じやり方で、アーセナルはトッテナムを攻略することに成功したのだ。

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Posted by gern3137