アーセナル新加入選手レポート: ブルーノ・ギマランイス
特に昨季終盤、アーセナルは技術面のクオリティ不足やボールを前進させる力の欠如が露呈し、苦しい試合が続いた。多くのファンからはより低い位置を主戦場としてテンポを作り、1試合100本のパスを出すような、6番タイプの選手を求める声も聞こえた。
その気持ちは理解できたが、私個人としては完全には同意していなかった。というのも、世界のサッカー界でその役割を最高レベルでこなせる選手は3人しか存在していないからだ。そして彼らはPSG、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティでプレーしている。
ヨーロッパ全体に目を向け、そこから一段下がるレベルにいる選手、ロカテッリ、パヴロヴィッチ、ガルシア、シュティラーといった選手を考えてみても、彼らは獲得が現実的ではない、あるいは大金を投じてまで獲るべきほどの選手だとは思えなかった。
そのため、メトロノームのように試合のリズムを刻む純粋な6番タイプが居れば理想的だったが、アーセナルが獲得するのはどちらかというと6番兼8番タイプのMFだろうと思っていた。
ブルーノ・ギマランイスのボール保持時の能力に疑問はない。彼のパスは鋭く、そして野心的だ。
中盤の最も低い位置でも、その一列前でもプレーできる彼がまず考えているのは、相手にどう脅威をもたらすか、そして守備から攻撃へいかに速く移行するかだ。
昨季終盤にはハムストリングの問題で6試合を欠場したにもかかわらず、彼はプレミアリーグ全体で、相手の守備ラインを破るパスが46本、スルーパスが21本と、どちらもトップ5に入った。
90分あたりの相手のラインを突破するパスは6.97本で、スビメンディの4.25本、デクラン・ライスの3.61本を大きく上回っている。これはかなり期待の持てる数字だ。参考までに比較すると、マルティン・ウーデゴールは90分あたり7.21本だった。
攻撃的な選手を評価する際には、チャンスを外しても引きずらず、気持ちを切り替えて次のプレイに移れることは長所とみなされる。ブルーノもその部類だ。彼は配球時には恐れ知らずだ。スルーパスが5本連続で通らなくても、気にすることなく、気づいたときにはもう次の一本を狙っている。
彼は難しいパスを好む傾向にある。そして彼のパスは高い技術と、意図を隠す巧さがある。当然ながら、逆サイドへの大きな展開や斜めのパスといった、より目に見えて分かりやすい武器も持っている。
また、ブルーノと一緒にプレーすることで特に恩恵を受けそうな選手が2人いる。ブカヨ・サカとヴィクトル・ギェケレシュである。
ニューカッスルとアーセナルではチームのスタイルは大きく異なるが、ブルーノがニューカッスルでプレーしていた時期に繰り替えし見られ、トレードマークとなっていた彼特有のパスがいくつかある。
センターバックと左サイドバックの間に滑り込ませるような巧妙なパス、そしてセンターフォワードが走り込めるように、ワンタッチで最終ラインの背後へ送るパスだ。
イサクはそうしたワンタッチの裏へのパスから大きな恩恵を受けていた。そしてギョケレシュもまさに同じタイプのランを好む。早い段階からスピードに乗り、そのままゴールへ突進していく形だ。
サカとウーデゴールは右サイドで以心伝心のコンビネーションから、細かなパス交換やワンツーによって、引いて守る相手を頻繁にこじ開けてきた。ギマランイスもまた、試合を切り開くために内側へ差し込む短いパスを好んで用いる
もちろん大胆なパスが増えれば、当然ボールロストも増える。すべてが成功するわけではない。しかし、普段はかなり安全志向の中盤なのだから、より危険な状況を意図的に作り出すために、ひとりくらい積極的な選手がいても良い。
彼は、狭い場所で相手をドリブルで抜き去るようなプレイを得意としているわけではないが、ブルーノは常に最終ラインからのパスを受けられる位置に顔を出し、プレッシャーから逃れるようにターンする。特に、ワンタッチで巧みにスペースへボールを置き、相手を置き去りにするプレーがうまい。
技術のある選手で、時折少しボールが乱れることはあるものの、プレッシャーを受けた際のボール保持能力は非常に高い。これは4月から5月初旬にかけての苦しい時期、アーセナルが苦戦していた部分でもある。
パスに目が行きがちだが、彼はあらゆる意味で攻守両面に貢献するMFであり、それは守備の数字にも表れている。エディ・ハウ時代のニューカッスルは基本的に対戦相手からすれば非常に嫌なチームだったが、ブルーノはそのチームを体現するような存在だった。激しく、泥臭く、闘争心にあふれた選手だ。
Optaのデータによると、昨季のブルーノは90分あたりのデュエル勝利数が6.1回、タックル数が2.1回で、どちらもアーセナルのどのMFより多かった。ボール改修数だけは、ライスが5.2回でブルーノの5.0回を少し上回っている。
全体的な数字は年々多少下がっているものの、ニューカッスルで過ごした4シーズンすべてで、デュエル勝利数はチーム内1位か2位だった。昨季はサンドロ・トナーリより前へ出る自由を与えられたことで、高い位置でボールを奪う能力にも優れていることを示した。
彼は試合を読む力に優れ、ボールと相手選手の間に自分の体をねじ込む方法を知っている。タックルも意外なほど我慢強く、それでいて粘り強い。そのため、デュエルを終えた時にそのまま自分がボールを保持していることが非常に多い。
直近3シーズンのプレミアリーグで、デュエル勝利200回以上・ボール奪取200回以上・タックル200回以上・ファウル獲得200回以上という4つ全てを記録しているMFはブルーノだけだ。汚れ仕事を厭わない選手であることがよく分かる。
ただし、飛び込んだ結果かわされてしまう場面もある。そしてトップクラスのスピードや、ライス級の運動量があるわけではないため、広いスペースをカバーする必要がある場面ではこれが問題になる可能性がある。特に、よりオーソドックスなダブルボランチの一角としてプレーする場合はそうなるだろう。
また、メンタル面も一つの疑問点ではある。彼が常に全力でプレーする選手であることは分かっているが、試合の感情に飲み込まれ、くだらないファウルをしたり、必要のない小競り合いに巻き込まれたりすることがある。ニューカッスル時代のように多少のことなら大目に見てもらえる、という状況でなくなれば、これが本人にとって痛手になる可能性もある。
一方で、そこまで注目されていないが、中盤から飛び出していった攻撃の最終局面での貢献も期待できる。ライスはアーセナル移籍後に少し時間をかけてそれをレパートリーに加え、昨季はスビメンディも重要な場面で結果を残した。しかし昨季のアーセナルは全体的に得点力の低いチームであり、中盤からの得点も少なかった(これは、リーグ全体の傾向でもあったが)。
ブルーノはそれとは対照的に、昨季キャリアハイの数字で、リーグ戦9得点5アシストを記録した。ニューカッスルでのリーグ戦通算成績は153試合で30得点25アシストとなっている。
これは見事な数字だ。ペナルティーエリア外からもシュートが打てるし、さらに彼は密集地帯でも巧みにプレーする。相手に捕まらないタイミングで遅れてエリア内に入ったり、低い折り返しに合わせたりするのも得意だ。
他にも選択肢がある中で、28歳(もうすぐ29歳になる)のMFに払う金額としては75m£は多少割高なのかもしれない。
これまで28歳以上のMFに支払われた史上最高額は、2001年にレアル・マドリーがユヴェントスからジネディーヌ・ジダンを獲得した際の77.5m€(66m£)だった。
しかし現在の移籍市場は、以前までの「選手の妥当な価値」に対する感覚を完全に粉砕してしまった。
それよりも、今後数年間にわたってイングランドサッカーを支配できるかもしれない、非常に現実的なチャンスをアーセナルが最大限に生かすことができるかに注目すべきだろう。
マンチェスター・シティとリヴァプールはいずれも新監督の下で過渡期にあり、スカッドも大きく入れ替わっている。チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドも、それぞれ新監督の下でのチーム作りを続けている。
その一方でアーセナルは、昨季ついに優勝できないという重圧を振り払い、ようやく一息つくことができる。ヨーロッパでも屈指のスカッドを擁し、王座防衛に向けてこれ以上ない位置につけている。そこにプレミアリーグを熟知し、数々の激戦を経験してきたMFを加えるのは、完全に理にかなっている。
ライスとブルーノを並べれば、国内でも屈指の機動力と戦闘力を備えた中盤コンビになるだろう。
同時にではなく、ライスの代役としてブルーノを起用することもできる。ライスの体をいたわってやることが可能になるだろう。そして相手や試合展開によっては、ライスより前のポジションでブルーノを使うこともできる。
ほかにも考えられる組み合わせはいくらでもある。
スビメンディ、マイルズ・ルイス=スケリー、マルティン・ウーデゴール、ミケル・メリーノはいずれもそれぞれ異なるものをもたらしてくれる。突然、中盤にはワクワクするほど多くの選択肢が揃うことになる。
そしてさらに、ブルーノ・ギマランイスという選手はリーダーシップも併せ持っている。
競争者としての姿勢。チームの感情的な心臓部となる存在感。相手からは心底嫌われる狡猾なマリーシアの使い手。だが、そんな選手が自分たちのユニフォームを着ている時ほど心強いものはない。
確かに、ギマランイスは嫌な奴だ。だが今や彼は、『我々の嫌な奴』なのだ。
サッカーとは不思議なものだ。
6年半前、ヒースロー空港でエドゥと一緒に歩いているべきだったのは、ハンサムなパブロ・マリではなく、ブルーノだった。そしてその2年後、リヨンが売却を必要としていた時にも、ニューカッスルに先を越される前に絶対に彼を獲っておくべきだった。
その後、アーセナルはその判断ミスの代償を、何度も支払うことになった。
しかし、最後に笑うのはアーセナルなのかもしれない。セント・ジェームズ・パークで誰からも愛されていたキャプテンを奪い取り、さらなるタイトル獲得を狙うのだから。
そして、たいていの場合において、最後に笑う者が、一番大きく笑うものだ。
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