ガブリエル・マルティネッリ&ジェズス

分析Tim Stillman,海外記事

ガブリエル・マルティネッリは非常に素早くアーセナルで台頭を果たした。サンパウロ地域リーグ所属のイトゥアーノから2019年にアーセナルへとやってくると、その夏のプレシーズンで印象的なプレイを見せると、ヨーロッパリーグとリーグカップで結果を残し、2019年のうちに既に7ゴールを挙げていた。

オーバメヤンが出場停止で2020年の1月に3試合を欠場した際には、その穴を埋めたマルティネッリは2得点を挙げ、そこには思い出深いスタンフォードブリッジでのソロゴールも含まれている。

ただし、オーバメヤン復帰後は少し調子を落とし、そしてその後ひざの怪我によりマルティネッリの出場機会は減少してしまった。

チームで担う役割という意味でマルティネッリのそれとオーバメヤンのそれは共通点が多すぎたし、マルティネッリが本格的にチャンスを得るには、オーバメヤンや、他のより年長の選手たちがクラブを去るのを待たねばならなかった。

マルティネッリはオーバメヤンがチームのメンバーを外れた昨季の12月以降に過去2.5シーズン分よりも多くの出場機会を得たが、それは偶然ではないだろう。

また、マルティネッリは右でもプレイできるが、このポジションにはウィリアンやニコラ・ペペがいた。

だが、ウィリアンは既にクラブを去っているし、アルテタもどうやらペペを自身の望むウインガーへと育成できるという考えを諦めつつあるようだ。

マルティネッリの左サイドの競争相手にはスミスロウがいるが、この競争は非常に健全なものだと言っていいだろう。

マルティネッリの存在はアルテタにとって魅力的なオプションとなるはずだ。もともと前からの激しいプレスはオーバメヤンの得意とするプレイではなかったし、スミスロウの強みであるともいえない。これはマルティネッリのユニークなアピールポイントになるはずだ。

だがもちろん、マルティネッリを先発起用することの一番のメリットは彼の得点/アシスト力だろう。ウイングの中には、外でプレイするプレイメイカーのようなタイプもいれば、外でプレイするストライカーのような選手もいるが、マルティネッリが後者であることは間違いない。

恐らくアーセナルのコーチ陣の今のプロジェクトは、技術が高く、ビルドアップや組み立てにも絡め、かつ相手ボックス内でも仕事が出来るという両方の素質を持った選手を育成することのはずだ。

既にブカヨ・サカがそのような選手となっている。もともとはよりドリブルが多く、クリエイティブ名タイプの選手だったが、彼は得点が増加している。

昨季マルティネッリの技術面はかなり改善され、いつ一対一で仕掛けるべきで、いつボールをキープするべきなのかの判断の精度や、味方との連携プレイの質も向上した。

ただし、その一方で昨季の90分当たり0.29ゴールという数字は彼がアーセナルに移籍して以降最低の水準だった。

もちろん、単純に出場試合数が増えた影響もあるだろうが、3か月ゴールがなかった期間もあり、マルティネッリは今季はより得点を増やしたいと考えていることだろう。

そして、私が思うに、ガブリエル・ジェズスの獲得はこれに良い影響を与えるはずだ。

時々、周りの選手のレベルも引き上げてくれるようなスペシャルな選手というのが存在するが、ジェズスは既にそのような影響をアーセナルでもたらしつつあるように見える。

『勝者のメンタリティ』のような、直接的には計測できないファクターの影響もあるだろうが、むしろ、オーバメヤンが去って以来、実質的にストライカーが居ない状態でプレイしていたチームに再びエースストライカーがやってきたというのは大きいはずだ。

マルティネッリの攻撃時の行動方針はシンプルで、どのような手段を使ってでも出来るだけボールを相手ゴールに近づける、というものだ。自身でシュートを放つ場合でも、チームメイトにパスを出す場合でも、どちらにせよ彼は全力で相手ボックス内に侵入しようとする。

そして、言うまでもないことだが、この際にボックス内に相手を引き付け、走り込むターゲットが居ることはマルティネッリにとって大きな意味を持つだろう。

いくつかの難しい障害を突破し、全力で相手陣内前に侵入できても、自身のパートナーがまだ自宅でお出かけの準備をしているようでは、このオペレーションは成功の見込みが高いとは言えない。

ガブリエル・ジェズスが居ればアーセナルは相手ボックスを攻撃する際に、より相手は対応しなければならないことが増え、このような状況でマルティネッリは輝く選手だ。

そして、この二人はポジションチェンジを駆使して連携できる可能性もあるだおる。ブラジル代表でのジェズスとネイマールの連携は素晴らしく、ジェズスは相手DFをネイマールから引き離す素晴らしい仕事を何年も継続してきた(彼らは2016年のオリンピック優勝を契機にお揃いのタトゥーを入れたほど、絆が強かった)

ジェズスはワイドFWの活かし方を知っている選手であり、これはマルティネッリにとって大きなボーナスとなるだろう。

そして、マルティネッリは自身と同じ波長で激しくプレスをかける相方を手に入れたわけでもある。

南米出身のFWというのは走力などのフィジカル面に秀でている傾向にあるが、これは、若い選手たちのサッカー環境が原因だろう。ヨーロッパとは違い、年齢別のカテゴリーなどにはわかれておらず、8歳の選手が13歳や14歳の選手と日常的に戦い、そして身を守らなくてはならない。

マルティネッリはもともとフットサル選手であり、彼の狭いスペースでのプレイ精度の高さはそこにルーツがあるのだろう。ジェズスもマルティネッリも元々はサンパウロのストリートサッカー育ちだ。

マルティネッリにとって今季は『将来性のある選手』から『毎週違いを見せられる選手』へのステップアップを果たせるか、非常に大きなシーズンとなるはずだ。

そして、もし彼がそれを果たせるのであれば、そこにはガブリエル・ジェズスが一役買ってくれるに違いない。

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Posted by gern3137