【データグラフィックで見る】アーロン・ラムズデール

スタッツ・戦術Jon Ollington,海外記事

もともとサッカーファンの意見というのは変わりやすいものだが、それを考慮に入れても、この短い期間でのアーロン・ラムズデールに対する意見の変わり様は異例なものだと言っていいだろう。

昨夏アーセナルはボーナス込みで最大30m£という条件でシェフィールド・ユナイテッドからラムズデールを獲得したが、私自身を含め、ファンも評論家もこの移籍金に驚いていた。

だが、結果的にはこれは賢い投資だったと言える。

もちろん、経歴だけ見れば、23歳とまだ若いながらシニアレベルで115試合に出場しており、U-18から全てのレベルでイングランド代表に選出されてきており、3年連続でチームの最優秀選手に選ばれた(それも、3つとも異なるクラブでだ)GKをターゲットにするのはそこまで驚くべきことではない。

だが、当時のファンの間でのコンセンサスは、ラムズデールはアーセナルでプレイするレベルにない、というものだった。

特に注目されたのは彼が2年連続で60失点以上を喫しており、所属チームが降格となっている点だった。GKの最も重要な仕事はシュートを止めることで、ファンは基本的にGKの能力をセーブ数と比較して何失点したかで測ろうとする。

多くのセーブを見せるGKは目立つものだが、多くシュートを浴びるチームでプレイするGKのセーブ数は自然と多くなる。ソリッドな守備陣の後ろでプレイするGKはクリーンシート数は増えるものの、これは必ずしもGKの能力と比例しているわけではない。

枠内xG(訳注: シュート後得点期待値という語も用いられる)はこれらの外部の要因を排除し、シュートの質を評価するもので、これと実失点を比べれば、GKのシュートストップ能力を測ることが可能だ。枠内xGよりも失点が少ないGKは、得点を阻止する能力が平均より高いということができる。

ラムズデールのシュートストップ

ラムズデールは19/20シーズン、ボーンマスでPKを除いた177本のシュートから被枠内xGは61.3で、実失点は60だった。翌年シェフィールド・ユナイテッドでは被シュート209本、被枠内xG56.3に対して実失点は57だったので、特に数字で見る限り彼のシュートストップ能力が秀でていたようには見えない。

青が枠内xG、赤が実失点。右に表示されている数字がマイナスであればあるほど、ラムズデールがその分シュートストップにより失点を防いでおり、逆にプラスであればシュートの質から想定されるよりも失点が多いことを表している。

しかし、上の図から見て取れる通り、アーセナル移籍後、今季のラムズデールはセービングにより、枠内xGから想定されるよりもかなり少なく失点を抑えることが出来ている。

ある程度調子の波があるのは若いGKとしては当然のことだが、アウェイのレスター戦では枠内xG換算ではなんと2点以上を防いでいる計算で、全体的な好調と相まって、既にラムズデールは今季プレミアリーグで枠内xGから想定されるよりも3点以上少なく失点を抑えている。

そして、プレミアリーグのGK全体にこの指標を適用して見ると、ラムズデールはリーグ3位の成績を残している。これは年齢を考えるととんでもない成績だと言えるだろう。今季より前にラムズデールはセーブ率は71%以上を記録していたことがなかったが、今季は80%に迫る勢いで、彼の成長を示している。

ラムズデールの飛び出しとクロス対応

そして、当然ながら現代のGKに求められるのはシュートストップだけではない。レノは何度か飛び出しの頻度が少ないことに対する批判が寄せられたりもしていた。以下の図は、プレミアリーグで最も飛び出しが得意なGKとラムズデールとそして、比較対象として飛び出しを全く行わないタイプであるデヘアと昨季のレノの数字を比較対象として掲載したものだ。

点線が守備アクションの平均距離、赤がパンチング、青がキャッチ、黄色が飛び出し

一見すると、レノの守備アクションのゴールからの平均距離がラムズデールより大きいのは不思議に見えるが、これはそもそもレノがクロス対応の回数が少ないことが理由だ。

ラムズデールはGKどれだけ飛び出しに積極的であるかを示す指標でリーグで900分以上プレイしている22人のGKのうち8位の数字を残している。

レノと比較すると、クロスをキャッチする回数が特に非常に多い

ラムズデールはクロスのストップ率でも9.9%とリーグ5位に立っており、これらのデータからはボックス内を支配できるGKの姿が浮かび上がってくる。

彼は俊敏かつ勇敢で、ペナルティエリア内を良く守ってくれるため、守備陣の負担を軽減してくれる。今季のアーセナルがセットプレイから無失点となっているのはラムズデールの獲得とも無関係ではないだろう。

ラムズデールのボール配給

さらに、アルテタのアーセナルでは後ろからパスをつなぐことは欠かすことのできない基本的なプレイとなっているが、これにラムズデールが加わることができる事も非常に大きく、チームがこの点で大きく改善した理由の一つとなっている。

だが、ラムズデールはこれらの素晴らしいクオリティを備えているにもかかわらず、今季ファンの印象に一番強く残っているのは彼の左右のウイングへのロングパスや相手陣深くを目がけた矢のようなラインブレイキングパスといった中長距離のパスかもしれない。

ラムズデールのロングパス(36.5m以上)精度は毎年向上しており、ボーンマス時代は成功率が30.4%だったが、昨季シェフィールドでは33.8%、今季は34.8%を記録している。

ただし、ラムズデールが他のGKと異なる点は成功率の高さというよりも、チャンスと見ればリスクを冒してでも相手陣に鋭いパスを送り込むことが出来る点で、今季22回相手ファイナルサードへのパスを成功させており、これはリーグ6位の数字だ。

彼の存在の大きさは土曜日のアストン・ヴィラ戦でよくわかり、レノはその他の面では素晴らしいパフォーマンスを見せたが、ロングキックとボール配給に関してはやはりラムズデールと比べると物足りなさが残った、

まとめ

ラムズデールはまだ23歳で、既に完成した選手というわけではない。リバプール戦でも見せた通り、今後も好不調の波はいくらかあるだろう。だが、彼は順調に成長を遂げており、チームをがっかりさせるよりはチームを救ってくれることの方が多いに違いない。

今季すでに12回のクリーンシートを記録というのは、まだ10試合をプレミアリーグで残しているにもかかわらず、既に過去6年間で最高の数字だし、これはその他のスタッツにも裏付けされている。

たったの7か月の間にラムズデールはアーセナルのヒーローの座を勝ち取り、疑いを抱くものの誤りを証明するアルテタアーセナルを象徴する選手となったのだ。

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Posted by gern3137