オーバメヤンの得点力不足の原因を探る【戦術コラム】後編

考察海外記事

この記事は前編の続きとなっています。

オーバメヤンのゴールの傾向の変化

アーセナルは本来これを予測出来てしかるべきだったかもしれない。

基本的にオーバメヤンはキャリアを通して、自身のxGを上回るタイプの決定力抜群というストライカーではないのだ。

元来オーバメヤンは決定力は平凡な選手だ。そして、それは特に問題ない。最近xGに基づく分析が行われるようになって明らかになったことだが、最高峰のストライカーに最も重要な素質は決定力よりもむしろ、いかに多くチャンスに顔を出すか、なのだから。

だが、オーバメヤンが19/20シーズンにアーセナルで挙げた29ゴールという数字はxGを大幅に上回っていた。アーセナルにおいてオーバメヤンに与えられたチャンスはどんどん減少していったが、総得点に影響がなかったのは、特に昨季、オーバメヤンが難しいチャンスを多く決めていたからなのだ。

さて、このことをアーセナルはどれくらい認識していたのだろうか?もし認識していなかったとすればそれはクラブの過失だし、もし認識していてなおオーバメヤンに破格の新契約をオファーしたというのであれば、それはそれで疑問の余地がある。

もしチームがキャプテンの能力を十分に生かせないのだとしたら、その新契約に何の意味がある?

ここまでオーバメヤンはアーセナルとドルトムント合わせて274試合で195ゴールを挙げている。しかし、そのうちのPKの割合はじわじわと上昇している。

2014年からドルトムントを去るまでの期間中、リーグで挙げた85点のうちPKによるものは10だけだった。PKを除くと125分あたり1得点という成績で、これらのほとんどすべてはゴールから非常に近い位置からのものだ。85点中エリア外からのゴールはFKの一本しかなかった。

そして、これら75のPKを除いたゴールの総xGは80.77(Understatによるもの)で、したがって、オーバメヤンが得点を量産していたのは決定力をもってチャンスの質以上の得点を挙げていたからではなく、チャンスの最終局面に顔を出す能力が秀でていたからなのだ。

アーセナルに加入して以降、オーバメヤンはより遠くからのシュートや質の低いチャンスも増え、そして、総xGも低下している。

もちろんプレミアリーグはブンデスリーガより競争が激しく、かつドルトムントほどアーセナルは国内で圧倒的に強い時期があったわけではないことが影響を与えたのも事実だろうが、それでも、オーバメヤンが昨年のような得点を挙げ続けられると期待するのに無理があることは、ずっと前からわかっていたことなのかもしれない。

とはいえ、ブライトン戦でオーバメヤンが見せたプレイは、アーセナルファンに希望を抱かせるのに十分だという見方もできるかもしれない。

結果として得点にはならなかったが、彼のトレードマークの走り込みからボールを受けて大チャンスを迎えた場面があった。

それでもオーバメヤンは枠内にシュートを飛ばし、これは得点の可能性の方が高いレベルのチャンスだった。Understatによると、実際にこのチャンスの得点期待値は0.61だ。

実はこの0.61という値は、アルテタが監督に就任してからオーバメヤンが得たチャンスの中では最も高いものだ。

かつては、オーバメヤンには2戦に1度程度の頻度で、得点期待値が0.5を超えるような数/質のチャンスが訪れていた。だが、19/20シーズンにはそれが90分当たり0.14まで減少してしまった。

つまり、オーバメヤンが再び得点を量産できるかどうかはアーセナルがオーバメヤンにかつてのようなポジションでボールを渡せるかどうか、ブライトン戦のようなビッグチャンスを彼に作れるかどうかに懸かっている。

あのような形を継続して作れるのであれば、オーバメヤンは外すことよりも決めてくれることのほうが多いだろう。

身体能力的にはまだオーバメヤンにそこまで明確な衰えは見られず、未だに得意の形での走りを見せることは出来る、というのは良いニュースだろう。

昨季のオーバメヤンはラッキーだった?

恐らく19/20シーズンにオーバメヤン史上最低ともいえるxGを記録したにもかかわらず、得点数が下がらなかったのは、もともと何年も継続して起きるような出来事ではなかった、ということだ。

18/19シーズンはPKを除いた90分当たりのxGが0.55あり、実際にそのうち90分当たり0.59点の非PKのゴールを挙げたが、昨季は90分当たりのxGは0.41しかなかった。にも関わらず、彼は90分当たり0.72点という異例の数字を記録したのだ。

この時点で、恐らく我々は低下を続けるxGにより注目すべきだった。

実は、同じようなことが起きたのは今回が初めてではなく、18/19シーズンに11試合で9つの非PKでの得点を挙げ、大幅にxGを上回った時期があったが、その後そのような決定力は息をひそめ、最終的な数字は平凡なものに収束した。

今のオーバメヤンと昨季を比べればわかる通り、もともとオーバメヤンは得点期待値など無視するようなレベルで得点を量産するタイプの選手ではないのだ。

したがって、年齢を重ねるごとにオーバメヤンが衰えていくのは当然のことだろう。

彼の強みは決定力ではなく、ビッグチャンスに走りこむ力だ。

今季アーセナルはオーバメヤンに得意とする形でいいエリアにボールを届けられていないか、あるいは届けられてもなぜかそのような場所でヘディングでシュートを打たなくてはならない形を作っている。

確かに、オーバメヤンにかつてほどのスピードがもうないのは間違いないが、彼の得点が大きく減少しているのは、それよりも、アーセナルのチャンス創出の方により大きな問題があると見るほうが自然だろう。

(全盛期ほどのキレはないかもしれないが)今でもオーバメヤンは今まで通りの走り込みを継続している。だが、ボックスの脇から稲妻のように彼にボールが届くような形はあまりない。

アーセナルの攻撃が遅すぎて相手ボックス内に既に何人もDFがそろってしまっている状態か、そもそもオーバメヤンにボールを届けられない場合が多いのだ。

もしアーセナルが今後もオーバメヤンの大量得点に期待したいのであれば(もちろん、彼はすでに31才であり、ピークは過ぎたのは事実かもしれないが)アーセナルはより早く、より正確に、より良い位置から彼にボールを供給しなくてはならない。

そうすれば、オーバメヤンはそれなりの得点を挙げることは未だに出来ることは間違いない。

だが逆に、もしそれが出来ないのであれば、オーバメヤンへの巨額の新契約は愚かな過ちに感じられ始めることだろう。

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Posted by gern3137