ウィリアンの獲得と短期的将来を見据えた補強の是非について

分析Tim Stillman,海外記事

アーセナルのチェルシーからのウィリアン獲得は、多くの論争を巻き起こしている。かれのクオリティに関して疑念を抱く人は少ないが、問題は彼の年齢だ。32歳の選手の獲得は、"賢い市場での立ち回り"からは程遠く思え、かつ彼の代理人との関連を無視することは不可能だ。

この1年間でアーセナルはキア・ジューラブシャンの顧客である32歳のダビド・ルイス、29歳のセドリック・ソアレス、32歳のウィリアンを獲得している。彼はサンジェイ・エドゥとの密接な絆があり、エドゥがコリンチャンスでSDを務めていた時代に、彼らのチームはジューラブシャンの選手たちを中心に形成されていた。

もちろんこの補強自体を見れば、ウィリアンを獲得するのは理に適っている。だが、同時にアーセナルは限られた予算のうちのかなりの額をオーバメヤンの契約延長にも投資するようだ。

2018年にもアーセナルはトップ4に返り咲くために、短期的な将来のための補強を行った。ムヒタリアン、オーバメヤン、そしてエジルへ多額の投資をしたのだ。この中で成功だったと言えるのは一人だけだろう。もちろん今後次第だが、ルイス、セドリック、オーバメヤン、ウィリアンといった選手たちに2018年の面影がちらついてしまい、少し不安にはなる。

とはいえ、ウィリアンに関してはエジルやムヒタリアンほどの高給ではない。報じられるところによると彼の給与は週給十万£+ボーナスといった形式で、フリー移籍の選手にしてはそこまで高くない(もちろん、ここに契約ボーナスが加わるので総額はかなり上がるだろうが)。

ウィリアンはキャリアを古巣のコリンチャンスで終える気が満々のようなので、1,2年後にアーセナルが彼をMLSやカタールに売却する、といったシナリオはあまり考えられない。

私はウィリアンが今のアーセナルのチームを向上させてくれると確信しているが、問題は、彼が34歳になっても週給10万ポンド分の働きができるかどうかだ。

アルテタはウィリアンのユーティリティ性を称えていたが、基本的には彼はキャリアを通してペペと同じ位置でプレイしてきた。かつて左でもプレイしたことはあるが、あまりそれが上手くいったとは言えない。

ウィリアンの優れた点は、スペースがないところでも相手のサイドバックをかわせることだ。彼は中にカットインするタイプのウイングとして輝く選手ではないように思える。

実際の所、どちらかというと彼は昔ながらの肩を落としてライン際を駆け抜けるのが好きなタイプだろう。私が思うに、クラブが最優先すべきは左を主戦場とするウイングだったように思う。

もちろん、オーバを中央に移してその両脇にペペとウィリアンを置く、という布陣は考えられるが、ここまでの所アルテタはオーバを中央で使う様子を全く見せていない。

とはいえ、タイプ的にはウィリアンは今のアーセナルにいないタイプだ。彼は外に張って横幅を保つことができ、これはオーバメヤンやペペ、中に入ってきたがる彼らとは全く異なる。

奇妙なことに、アルテタのチームはカウンターを得意としているが、これはペペとオーバメヤンが両サイドにいることと無関係ではないだろう。

だが問題は、より低く構えられた時にどうやって相手を崩すかで、これが来季のアーセナルの主要な課題になるはずだ。この点では、ウィリアンは非常に役に立つ。外に残ることで相手守備陣を引き延ばすことができ、かつ彼は少ないスペースでも相手サイドバックをかわすことができる。

ブラジル代表では、自由が与えられたネイマールの逆サイドでバランスをとる存在として重宝されていたし、もしアルテタがいわゆるサイドプレーヤーを望んでいたのであれば、今のプレミアリーグでは少ないタイプの存在で、ウィリアンはその型にうまくフィットしている。

アーセナルの前線が経験豊富だとはいいがたく、FA杯のベンチはユース卒の選手で埋まっていることが多かった。サカ、エンケティア、ネルソン、ウィロックらは良い選手で、来季は恐らくここにスミス=ロウとマルティネッリも加わるだろうが、いずれにしろ若い選手ばかりだ。

もちろん、アーセナルにも経験豊富な選手がいないわけではなく、ソクラティスは32、エジルは31、オーバメヤンも31、ルイスは33歳だ。だが、ソクラティスとエジルは出場する気配がないし、ルイスは残り一年しか契約がない。

ウィリアンは監督の指示をよく聞く選手という評判だし、その人間性の評判も良い。調子が良い時のウィリアンはアーセナルを手助けしてくれるだろう。

しかしながら、ウィリアン、ペペ、オーバメヤンの3人が共存可能かに関しては疑問が残り、もしかすると、どちらかというとウィリアンはスカッドの厚みをもたらすためのオプションなのかもしれない。

もちろん選手層を厚くするのは大切だが、アーセナルが恐らくより資金を費やすべきなのはスタメンの強化で、ウィリアンは非常に高額なベンチのオプションになってしまう可能性もある。

だが、正直これに関しては、この夏のアーセナルのビジネスの全容を見てみたいことには何とも言えない。金銭的にタイトな状況であり、ウィリアンのフリーの獲得により、CMFやCBという他のポジションにより投資が行えるのであれば、これは賢い獲得だったと言えるかもしれない。

ファンにとっての問題は、ここまでクラブの獲得方針があまり一貫性のあるものだとは言えないことで、本当にフロント陣が戦略的に選手獲得を行っているのかがわからないという事だろう。

これはテクニカルディレクターであるエドゥの仕事のはずで、プレイスタイルをクラブにもたらし、それに従った選手を獲得する、というのが筋のはずだ。

報道によれば、アルテタの意見を取り入れてウィリアンを獲得した、とのことなので、それならば理解できる。だが、『アルテタがウィリアン獲得を進言した』と『ウィリアン獲得を望むかアルテタの意見を聞いた』では大きな違いがある。

私が思うに、ウィリアンは即座にガナーズの攻撃をよくしてくれるはずだ。だが、攻撃陣のバランスをどう取り、2022年に我々がこの獲得のことをどう考えているかはまた別の話だ。

もしかすると、そのころにはCOVID-19の影響はなくなっており、当時の短期的な獲得も特に問題ではなかった、という事になるかもしれないが。ただ、我々は今のような状況を以前にも経験したことがあるような気がすることだけが気がかりだ。

source:

関連記事(広告含む)

Posted by gern3137