アーセナルの新フェイマス・バック5
今季、ミケル・アルテタはチームにジンチェンコ、サリバ、ジェズスとう3人の新たな選手を組み込んでおり、彼らはアーセナルを大きく変えることに成功した。
中盤や前線の選手たちの役割に注目が集まりがちだが、今季の好調は安定した守備陣のおかげでもある。
アルテタは攻撃時の形としてペップ・グアルディオラと同じように2-3-5あるいは3-2-5の形を採用しており、実際のフォーメーションは4-3-3というよりも5-5に近いものだ。うしろが2-3となるか3-2となるかは微妙な違いはあるし、彼らがそれぞれどの位置を担当するかは時々異なるが、主にアーセナルは前にマルティネッリ、ジャカ、ジェズス、ウーデゴール、サカの5人を並べている。
そして、アルテタはサイドバックのオーバーラップをあまり好まず、彼らを攻撃の一員というよりも中盤に入ることを要求する。ウーデゴールとジャカは攻撃時の5人の一員であり、彼らが前に上がると中盤がトーマス・パーティ一人となってしまうためだ。
ベン・ホワイトがパーティと並ぶような形でジンチェンコと3人で中盤を形成することもあれば、逆にホワイトはサリバと並び3バックのような形になることもあるが、チェルシー戦では以下のような形でチェルシーの3人のアタッカーに対して数的優位を作っていた。
基本的にはジンチェンコは攻撃の最前線には加わらず、アーセナルがボールを持った時に後ろから挙がっていく役割はジャカ(アンダーラップ)が主に担当していた。
後ろに5人が控えている形であれば、スペースを埋められるだけでなく、前線や中盤の選手たちもよりリスクが高いプレイ選択が可能になり、対戦相手もその対応に手を焼くこととなる。
これらを非常に上手く活かしていたのがトーマス・パーティで、ポジションを離れてプレスの第二陣の開始役となったり、高い位置でインターセプトを見せたりもしていた。
このようなプレイで仮にパーティがボールを奪い切れなかったとしても、まだ後ろには4人の選手がいるし、もし奪取に成功すれば、彼の前には5人のアタッカーが攻撃の合図を待っている、という状況になる。
今季のアーセナルの守備陣の選手たちは皆非常に積極的な守備を見せており、冨安、ジンチェンコ、ホワイト、パーティの全員が一試合3回以上のタックル+インターセプト数を記録している。
ここにガブリエルとサリバの2人が含まれていないのは、恐らくこのCB2人の役割は少し異なるためだろう。
どのようなフォーメーションを採用しても、どこかしらにはある程度スペースが生まれてしまうもので、アーセナルの対戦相手にとっては、それがどこなのかはかなり明確だ。
ホワイトとジンチェンコの二人は伝統的なサイドバックのようなポジションを取らないため、彼らの後ろのスペースは空くことが多い。
もちろん中央を空けるよりはサイドを空けた方が危険が少ないに違いなく、これは計算されたリスクと言えるが、これらのスペースにボールが出された場合にも、ガブリエルとサリバの二人が追い付いてここを埋めてくれるだろう、とアルテタから信頼されている。
ホワイトやジンチェンコが最前線まで上がっていくことは少ないため、彼らも少し時間があれば後ろに戻って、CBをサポートすることが出来る。
したがって、ガブリエルとサリバの仕事は、スピードを活かして相手のロングボールを回収するか、ボールが相手選手に届いた場合には、サポートが到着するまで相手を遅らせる事、となっている。
攻撃的なシステムをうまく機能させるためには、ピッチ上の誰かにある程度超人的な仕事を期待する必要があるが、中盤ではアーセナルはパーティのポジションの選手への負荷がかなり高い。そして、同じことがCBにも言えるだろう。彼らは非常に広いスペースをカバーすることが求められている。
リバプールはファンダイクの存在を活かしてアレクサンダー=アーノルドとロバートソンをウイングのようにプレイさせていた。昨季のリバプールはGKとの1対1を作られた回数がノリッジに次いでリーグワースト2位だったが、これは織り込み済みのリスクだったわけだ。アリソンが非常に1対1に強いGKだというのもある。
今のアーセナルの守備陣を構築しているラムズデール、ホワイト、冨安、サリバ、ジンチェンコ、パーティ、ガブリエルと言った選手たちは皆それなりの移籍金で獲得されてきた選手たちだ。中にはファンを少し驚かせた額で獲得されてきた選手もいる。
だが、アルテタは流動的な攻撃を機能させるためには、これらの選手に資金をかけることが重要だと分かっていたのだろう。サカ、ジャカ、マルティネッリと言った前線の選手たちはアルテタが監督就任時点で既にチームに在籍していた選手たちだが、守備陣はサリバを除けば全員がアルテタ監督就任後に獲得されてきた選手だ。
ジョージ・グレアム時代の名を馳せたバック5のメンバーとはまたキャラクターが違うかもしれないが、無敗優勝を果たしたローレン、トゥーレ、キャンベル、コールの4人は皆スピードがあり、孤立した状態で守備することを苦にしない選手たちだった。
トップレベルのクラブは、守備の構造だけではなく、タイトな場面での1対1を制することが出来るDFが必要なのだ。
ついに今のアーセナルには攻撃陣を輝かせるための素晴らしい守備の準備が整ったということだろう。
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ディスカッション
コメント一覧
はい。5FWはサッカーという競技の必然。パスが発明された時点でそうなったとうかがっている。ただどうすれば負けにくくするかと考えた場合、後ろの人数が増えるのも当然。最終的に全ての選手が多種多様な能力を求められる。イングリッシュフットボールへの回帰。そして進化。それを世界中の人たちで行う…素晴しい。
この分析の通りだと思います。
後ろで5角形作ってる時間帯はかなり安定感があり、敵の攻撃をほとんど跳ね返すことができるし深刻なピンチには陥りません。
問題はラインを上げすぎた時やホワイトやジンチェンコが開きすぎたり高すぎたりする時に起きます。
チェルシー戦でジンチェンコは時々開きすぎた位置でロストするなどしてピンチを招いていました。無理してボール保持するより外に出してもいいんですけどね。