アーセナルの中盤の中心となったトーマス・パーティのストーリー
ガーナ代表をW杯へと導く得点を決めるなど、ジョーダン・アイェウ、アマーティらといった選手たちと並んでガーナ代表で最も重要な選手の一人となっているトーマス・パーティだが、彼はガーナ西部の小さな町であるオドゥマセに生まれ、ローカルチームのユースアカデミーでサッカーを始めたが、2012年にアトレティコ・マドリードへと移籍した。
これは、ディエゴ・シメオネがアトレティコの監督に就任した年でもあり、当初若きトーマスは出場機会を得るのに苦戦していた。ユースチームに帯同したのちに、最終的に出場機会を得るためにマジョルカやアルメリアへとローンに出ることになった。
アトレティコの中盤にはコケ、ラウール・ガルシア、ガビといった選手たちが揃っており、彼らを差し置いて監督の注目を引くにはどこか外部で能力を証明して見せる以外になかった。
最終的にパーティがアトレティコのトップチームに帰ってきたのはアトレティコ移籍から3年後の2015年で、このシーズンの彼の目標はトップチームで出場機会を得ることだった。実際に、この年の11月にパーティはデビューを果たすと、その一か月後にはアトレティコでの初ゴールも記録する。
そこから2017年の夏にベテランのチアゴ・メンデスが引退し、その翌夏にはキャプテンのガビがクラブを去るわけだが、この二人の主力MFの退団に伴ってトーマス・パーティはこれまでシメオネが様々な選手をローテーションすることが多かった、コケの相方としての立場をアトレティコで確固たるものにした。
このシーズンアトレティコはリーグは2位に終わったもの、アーセナルも破ってヨーロッパリーグ優勝に成功する。アトレティコの躍進を支える重要な選手の一人がパーティだったことは間違いない。
そして、その後2020年夏にトーマスは新たな冒険が必要だという結論を下し、移籍市場最終日にアーセナルへと5年契約で移籍した。
移籍直後は怪我にも苦しんだが、調子さえ整えば、アルテタのファーストチョイスのMFであることは間違いなかった。同じように今季苦しむ期間もあり、現時点でクリスタルパレス戦で負ってしまった怪我からの今季中の復帰は難しいと見られているが、それでも彼がアーセナルの今季の躍進の原動力であったことは間違いないだろう。
アーセナルが今季トップ4争いが出来る位置につけているのはパーティの活躍の影響が非常に大きく、彼はまるで全盛期のエッシェンのように、ボール保持時非保持時問わずアグレッシブで、守備的なチームでも、ポゼッション志向のチームどちらでも輝ける選手だ。
彼はボール配給がとんでもなくうまく、長短のパスやドリブルを駆使して相手ラインを突破してボールを前に進めることが出来る一方で、必要があれば4バックの前に構えてフィルター役として相手からのボール奪取をすることも出来る。
彼はその粘り強さと推進力でチームを変えてくれる。
アトレティコ時代はコケの隣で、より守備的に、相手のパスをカットしシュートをブロックするのが主な仕事だったが、アーセナル移籍後はよりボックストゥボックス型MFのような役割を与えられ、彼のおかげでエジル退団後のアーセナルは新たなゲームプランを見出すことが出来た。
ジャカとともにプレイすることで、トーマスは中盤を動き回ってチャンスを作り出したり、ルーズボールをカットし、相手の攻撃を止めたりといったプレイを万能にこなす。彼のプレス回避能力の高さがボールをビルドアップの第二段階へと進めることに非常に役立っているのは言うまでもない。
現在のサッカー界では伝統的なトップ下が減少しつつあり、よりトランジション主体のチームが増えている。その際にプレイメイクを担うのは一列下がった3列目の選手となることが多いが、パーティはまさに、最終ラインからボールを受けて、それを前に進め、カウンターのスタートポイントとなるのが非常に上手い選手だ。
彼は中盤のどんなエリアでもプレイでき、その万能性はチームにとって非常に有用なものとなっている。彼の離脱後にエルネニーは良いプレイを見せているが、それでもパーティがアーセナルの中盤の心臓であることは間違いない。
来季こそは、彼が怪我無くフルシーズンを送ることが出来れば、6年ぶりのCL出場権を得られる可能性があるアーセナルの来シーズンは素晴らしいものになるだろう。
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