ブカヨ・サカはアーセナルにとってのケイン、ソン、ロナウドになれるか?
現在プレミアリーグ4位の座をかけて争っているアーセナル、トッテナム、マンチェスターユナイテッドの3クラブはそのどれもがそれぞれが少しずつ異なる形で足りない部分を抱えている。
マンチェスター・ユナイテッドはロナウドのハットトリックで3-2で勝利を収めたノリッジ戦が彼らのプロジェクトの象徴的な例だが、クラブは迷走中で、明確な方針があるようには見えないが、個人の力でなんとかトップ4争いに参戦している。
トッテナムはユナイテッドよりは組織がしっかりしている者の、彼らもまた2人のスターアタッカー、ソンとケインに引っ張られているチームだ。
クルゼフスキが彼ら二人を補う良い補強だったとは思うが、ここまでルーカス・モウラやベルフワイン、ベイルといった選手たちが交代でこの第三の矢の役割を果たしており、この役割は前の二人と比べるとそこまでの重要性はないだろう。
この2クラブと比べると、アーセナルの違いは明らかだ。アーセナルは選手というよりも監督の意図が浸透したチームで、よりストラクチャーに重きを置いている。
だが一方で、アーセナルはファイナルサードでマンチェスター・ユナイテッドやトッテナムのような独力で試合を決めてしまえるようなスターは備えていない。
むしろ、そのようなスター性があり個人技を持つ選手をアルテタはあまり好まないようだ。
マンチェスター・ユナイテッドはほとんど構造を持ち合わせていないが選手個人の力がそれを埋め合わせており、スパーズは構造を持ち合わせているが、二人のFWによってチーム力がワンランク上に引き上げられている。
アーセナルはむしろ構造主体のチームで、チームのシステムが機能しなければ逆になすすべがない。
そんなアーセナルがパーティとティアニーというカギとなる選手を二人欠いたことで不調に陥ったのは少し皮肉なことだと言えるだろう。
もともと冨安が不在だったこともあり、ティアニーの離脱によりアーセナルはファーストチョイスのサイドバック2人を欠くこととなってしまい、サイドバックのバランスが取れなくなってしまった。
セドリックとタヴァレスを両サイドに起用したセインツ戦とパレス戦の両方でアーセナルは敗北を喫している。彼らは二人ともオーバーラップを好むタイプだが、アルテタのシステムには一人はボール保持時に後ろに控えて3バックの一員となれる選手を必要としている。前線に駆け上がるサイドバックは一人のみなのだ。
通常時であれば、この役割を冨安がこなし、ティアニーが前線に上がっていくという形だったが、冨安の不在により、サイドが逆転し、ティアニーが後ろに残り、セドリックが上がっていきクロスを量産する形となった。
この点、タヴァレスとセドリックは両方が前に上がって以降とするタイプであるため問題となっているが、ジャカの左サイドバック起用は中盤がジャカを必要としていたためうまくいかなかった。
アルテタはチェルシー戦でセドリックをベンチに下げ、右サイドバックにホワイトを起用することでタヴァレスとのバランスをとった。
そして、この起用は左右のサイドバックのバランスをとるだけではなく、今のアーセナルのチームにおいてロナウドやケイン、ソンに最も近い存在ともいえるブカヨ・サカを自由にするという目的もあった。
ベン・ホワイトは右サイドを一人で守ることを強いられることも多く、結果としてチェルシーは数的有利を作り出すことが出来、得点はこちら側のサイドから生まれた。
セドリックやホワイトを狙うのがタヴァレスを狙うよりも効果的だったとチェルシーが考えたというよりも、これはブカヨ・サカの前線での脅威を減らすという意味もあったのだろう。
トマス・トゥヘルのような監督に対策を打たせる20歳の選手は世界にも多くない。
だが、この試合のポジションマップを見ればわかる通り(チェルシーが赤でアーセナルが水色となっている)、アーセナルは右サイドから2失点したにもかかわらず、サカを守備に奔走させるよりも前でプレイさせる方がリスクに見合ったリターンを得られると判断した。
そして、実際にこれは効果的でサカはアロンソとサールをものともしなかった。
そして、この試合がアルテタとアーセナルが今季の残り6試合に直面している課題を示している。
今のアーセナルにはかつてのファンペルシーやアデバヨールのような、独力でアーセナルをトップ4へと導いてくれるようなストライカーはいない。
エンケティアはきちんと一定の出場機会が与えられ、チャンスが訪れればファンが想定していたよりも遥かに良い選手だということを示したが、余程の好調にならない限り、ケインやロナウドのような影響力をチームにもたらすとは考えづらい(もちろん、可能性がないわけではないが)。
現実的にはアーセナルを導くスターとしての役割はブカヨ・サカが担うことになるだろう。
もちろんこれは彼が独力でアーセナルを4位へと導くという重荷を背わなければならないという意味ではない。彼の周りには良いサポートを行える選手が揃っている。アルテタのタスクは、サカのタレントを最大限引き出すような方向にシステムを修正することとなるだろう。
水曜日の試合では終盤サカが左サイドにこれはプレミアリーグで最も経験豊富なDFの一人であるアスピリクエタにとって大きなプレッシャーとなったようだ。結果として彼はサカをファウルし、PKを献上することとなった。
プレミアリーグ4位の座は、チームの構造とチームが備えたスター選手のタレントのバランスを最もうまく撮れたチームが手に入れることになるだろう。
いずれにしても、非常にエキサイティングなシーズン最終盤になることは間違いないはずだ。
ディスカッション
コメント一覧
まさに書かれている通りですね。
僕も今のアーセナルでは両サイドバックがあがっては守備が疎かになる為、3連敗の際はそれが明確になった為、深刻だなぁと感じていました。
チェルシー戦では右なホワイトが入った事でヴェルナーには1点決められたしたがアロンソ辺りはある程度は防げていました。
冨安が戻ってきて、サカのバックを冨安がやって、反対サイドにタヴァレスが攻撃参加すれば、攻撃も安定するんじゃないですかね。
ここはラスト数試合のいい結果を待つばかりですね。
また、良い記事期待してますよ!
ありがとうございます!頑張ります!