素材本位のアーセナル 後編
(この記事は前編の続きとなっています)
MF: ジャック・ウィルシャー
今回の企画の真打といってもいいのではないだろうか。アーセナルファンではなくとも、未完の大器と聞いてこの選手を思い浮かべる人は非常に多いはずだ。
アーセナルの類まれなる才能にあふれながらもワールドクラスに上りつめられなかった悲しい選手たち列伝を代表する一人で、10代で鮮烈デビューを果たし、セスクの後継者、あるいはそれ以上の選手にと期待されながらも怪我に泣き、結局は期待されていたほどの結果は残せないまま移籍となった。
もちろん、その好戦的とでもいうのか、タックルを誘うようなプレイスタイルのおかげで長期離脱が多く、それが成長を阻害したのは間違いないのだが、同時に誰もがウィルシャーと聞けば思い出すであろうバルセロナ戦の幻影にも常に苦しめられた。
良いパフォーマンスを見せても、本来のウィルシャーはもっとできるはず、という悲しい評価が常について回った選手である。
アブ・ディアビ
ウィルシャーと同じくアーセナルを象徴するような選手で、怪我に泣いたところまで全く同じである。
好調時のプレイはすさまじく、ヴィエラとラムジー、あるいはポグバとカンテを足して二で割ったような選手になれるのではないかと期待させたが、あまりにも怪我が多すぎた。
今でも何戦だったか忘れたが、久々の復帰戦で怪我をしてピッチを去っていった悲しい姿は印象に残っている。
ただ、ウィルシャーにもいえることだが、誰よりもアーセナルファンの記憶には残っている選手ではあるはずだ。
ジュディオン・ゼラレム
上の二人は怪我に泣いた選手だが、もちろん怪我がなくとも順調に成長するというのは難しいものである。
その典型的な例がゼラレムで、恵まれた技術が目を引く選手で、なんと16歳の若さでFA杯デビューを果たし、ウィルシャーや今でいうならばネルソンのようにユースアカデミー随一の有望株とされていたが、結局プレミアリーグデビューを果たすことなくアーセナルを去って行ってしまった。
今はアメリカに舞台を移しているらしいが、デビューがあまりにも若かったので、もうずいぶん前の選手のように感じられてしまうが、まだ23歳なので、今後に期待したい。
FW: 宮市亮
日本人だからひいき目で見て、というわけではなく、ポテンシャルという意味では宮市亮も近年のアーセナルの若手の中では随一のものがあったと思う。
もちろん一番の強みはそのスピードで、日本人でもついにフィジカルで世界に通用するどころか世界でもトップクラスの選手が現れたか!と思わせたものである。
フェイエノールトのレンタルでもまずまずの結果を残し、プレミアリーグでもその快足を披露した時点ではもしかすると、と感じさせた。
だがそこから怪我に泣き、結局そのスピードを生かせないままイングランドを去ってしまった。今また幾度もの苦難を乗り越えドイツ二部で再起を果たし、活躍できているようなので、応援したい。
セオ・ウォルコット
ウォルコットはシーズン2桁得点を決めた時もあったことだし、まずまずの活躍を見せたことは事実なのだが、『もっとやれたかもしれない』と思わせる、という意味では他の選手たちにも負けてはいない。
ウィルシャーと同じく、非常に若い段階でデビューし、まさかのイングランド代表にも選出されたりと、イングランドとアーセナルの大きな期待を背負ったが、10代のころのポテンシャルを実現できたかといわれると、少し首をかしげてしまう。
かといって、怪我に泣いた残念なキャリアだったのか、と言われるとそういうわけでもないのだが、やはりアーセナルファンの多くが彼の姿をアンリと重ねていたこともあり、どうしても不完全燃焼気味に感じられてしまう。
そういった意味ではウィルシャーと同じく、高すぎるハードルの犠牲者なのかもしれない。
ウェルベック
アーセナルのメディカルチームへの不信を体現するような選手で、マンチェスター・ユナイテッド時代にはほとんど大けがはなかったのに、なぜかアーセナルに移籍して以降怪我が非常に増えてしまった。
一時期はアレクシスと左サイドの先発を争うような活躍を見せていたし、その恵まれたフィジカルと、どたばたしながらも点を決める能力で、国内でも一流のストライカーあるいはウイングになれるのではないかと期待させた。
確かユナイテッドvsバイエルンの試合だったと思うのだけれど、ことごとくユナイテッドのロングボールを収め、一人でカウンターを機能させていたのを見て凄まじい選手だなと思ったのを覚えている。
個人的に非常に好きだった選手で、それだけにアーセナルで花開けなかったのが非常に残念だ。
・・・なんだか悲しい結びばかりになってしまった今日の記事だけれど、今アーセナルで頭角を現している若手たちは順調にのびのびと成長してもらいたいものである。
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