アーセナルは夏により積極的に選手獲得に動くべきだったか?
先週私は、アーセナルの攻撃に関して、サカとセットプレイに続く第三の矢、ゲームチェンジャーが必要なのではないか、という記事を書いた。
ただし、アルテタの戦術やシステムがアーセナルの攻撃にとっての障害となっているわけではない、という前提はもう一度述べておく必要があるだろう。
アーセナルは昨季プレミアリーグで91得点を挙げているし、アルテタのアーセナルでブカヨ・サカはプレミアリーグ最高のアタッカーの一人へと成長を遂げた。
アーセナルは対戦相手をボール保持で圧倒することが多く、スポルティングやウェストハム戦など大量得点する試合もあり、1点を挙げれば満足して守備的な戦い方をする、ということも基本的にはない。
今のアーセナルが抱えているのはどちらかというと人員の問題だろう。最近はマルティネッリもトロサールもあと一歩足りず、ハヴァーツも得点は物足りない。
スターリングは全くチームに貢献できていないし、ジェズスは調子に波がある。
したがって、今のアーセナルの問題は監督の戦術やコーチングではなく、補強戦略に起因すると見るべきだ。
そしてその場合に興味深いのは、アーセナルは夏にもっと補強を行うべきだったか?という問いだろう。
これに関してアーセナルにはある程度弁明の余地がある。
アーセナルはライプツィヒのベンジャミン・シェシュコ獲得に動いていた。彼は将来性のあるFWだが、この移籍は実現しなかった。
クラブがアタッカーをもう一人加える必要があると考えていたのは明らかで、スターリングのローン移籍がまとまるまで、リース・ネルソンの移籍も許可しなかった。
これはファンにとってはあまり聞きたくない現実かもしれないが、夏の市場の状況は非常に悪かった。何度か言っているが、リバプールは怪我の多いため安い移籍金で獲得することができたキエーザを獲得し、シティもアルバレスの代役を獲得することをしなかった。
世界で最も高額でアタッカーを獲得することに躊躇いのないチェルシーはネトとサンチョを獲得したが、彼らも今季得点を量産している、というわけではない。
アルテタはもっとアタッカーの獲得を優先すべきではないか、という議論を行う際には文脈も考える必要があるだろう。
アルテタが監督に就任した時点で現在アーセナルの主力となっているサカとマルティネッリが既にクラブにいたし、アーセナルは3人の高額FW獲得に162m£を費やしたばかりだった(そのうち移籍金に見合った活躍をしたのは1人だけだったが)。
確かにアルテタとアーセナルが進めたウィリアン獲得は失敗だったが、彼は移籍のためにある程度の減給を飲むつもりがあり、経済的にはこの失敗がクラブに大打撃となった、というわけでもなかった。
その一方で、この獲得を、もし補強候補の選定に失敗した場合に何が起きるかの警告と捉えるべきだろう。
もし100m£近い額でストライカーを獲得し、その選手がチームにフィットしなかった場合、すぐにまた異なる選手を獲得する、というわけにはいかない。数年は待つ必要があるだろう。
確かに、そろそろアーセナルは100%の確信が持てなくとも選手獲得に踏み切ってもいい時期に近づいているとは思うが、これは簡単な選択ではなく、常にリスクが伴う。
ただし、これに関しては、アルテタは守備的な選手に関してはある程度のリスクを冒してでも獲得に踏み切るではないか、という反論は確かに考えられる。
アトレティコ時代にトーマス・パーティはかなり慎重に出場分数が管理されていたように見えたし、カラフィオーリは過去に彼が膝に深刻な怪我を負ったことがあることはアーセナルはわかっていたはずだ。それでもクラブは獲得を決めた。
もしかすると、アーセナルは50m£のリスクは受け入れられるが、その倍近くが想定されるFWに関してはギャンブルは出来ない、と感じているのかもしれない。
もちろん『少なくともトライはした』ことが免罪符となるべきではないが、アーセナルは過去にはヴラホヴィッチやムドリク獲得にも動いており、高額アタッカー獲得というリスクを負いたくない、と考えている、というわけでは必ずしもないだろう。
高額な移籍金を支払ってのムドリク獲得よりもリスキーな獲得がそうあるとは思えない。
今の移籍市場では多くのクラブが良いアタッカーを探している。DFに関しては、スムーズに獲得できることもあるが、有望なFWは皆争奪戦になり、移籍金が吊り上がってしまう。
私としては、どちらかというと、アーセナルは有望な候補が居ないのであれば、無理して既に完成したタイプのアタッカー獲得に踏み出す必要は必ずしもない、と考えている。
今の市場を見るに、ハヴァーツやマルティネッリよりレベルの上の選手を獲得するのは非常に難しいだろう。
どちらかというと、より問題なのは、アーセナルが夏にエンケティアとネルソンを放出した代わりに、彼らよりワンランク上のレベルの選手の獲得を行うことができなかった、という点だ。
今季ここまでの所、ジェズス、スターリング共にエンケティアやネルソンとは異次元の活躍ができているとは言い難い。ジェズスの調子が昨日のハットトリックをきっかけに上向いてくれることを願っているが、エンケティアも昨季ハットトリックを記録したことがあった。アーセナルがジェズスに必要としているのは安定したパフォーマンスだ。
上の記事で述べた通り、恐らくアーセナルはもう一人主力となるようなアタッカーを必要としているが、ベンチから投入する選手として、スターリング以上の選手の獲得も課題だろう。トロサールは完ぺきなアタッカーというわけではないが、それでも彼の獲得はアーセナルの攻撃のレベルを引き上げてくれた。
アーセナルがシェシュコ獲得に動いていたということは、必ずしもクラブは既に実績があり完成された選手だけを狙っているわけではないだろう。もし彼の獲得が実現していれば、それは現在の市場の状況も加味し、将来性を見込んでのものだったはずだ。
また、先日の会見でアルテタがイーサン・ヌワネリは将来ストライカーになるかもしれない、と話していたのも興味深い。
もしも今後もストライカーの補強をめぐる市場の今のような状況が継続するのであれば、ヌワネリをストライカーにコンバートするのは非常に賢い策となるだろう。
彼はアーセナルアカデミー史上最も才能のある選手の一人で、その選手をスカッドが最も必要とするポジションで起用する、というのは理に適っている。彼がプレイできるだろう他のポジションに既にサカとウーデゴールがいるのであればなおさらだ。
先日アーセナル・ビジョンのポッドキャストでエリオットが非常に面白い思考実験を提案していた。
もしタイムマシンがあり、以下のうちどちらかを行えるのであれば、どちらを行うか?というものだ:
①夏にアタッカーを獲得する
②補強はせずにアーセナルの今季のレッドカード3枚をなかったことにする
これは非常に興味深い問いで、このどちらかを選ぶかが、恐らくあなたがアーセナルの攻撃陣に関してどう考えているかを表すものになるだろう。
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