アーセナルの中央の方程式
先週、The Athleticの動画チャンネルでアーセナルの今季に関する非常に興味深い動画が公開された。結論としては今季のアーセナルのパフォーマンスは昨季より悪い、というわけではないが、守備の安定性と引き換えに攻撃の迫力を失っていることが指摘されている。
今季アーセナルは中央から攻めるのに苦戦しており、データにもそれは表れている。
アーセナルにとっての大きな問題はチームの背骨ともなる中央のポジションの選手の顔ぶれが大きく入れ替わっていることだ。
去年最もアーセナルが好調だった時期には、トーマス・パーティがアンカーを務めたその横にジンチェンコが左から入る、その前にウーデゴールとジャカが位置する、という布陣だった。
ジンチェンコが中に入らず外に出ている場合にはジャカがパーティの横にスライドすることでシームレスにソリッドな中盤をキープすることができた。
今季アーセナルは中盤の変革に乗り出しており、デクラン・ライスの獲得を行い、またパーティは今季右サイドバックとして3試合に先発している。
昨季後半のアーセナルはジェットコースターのような展開の試合が増えすぎ、ボール非保持時に非常に高い能力を発揮するライスのような選手を必要としていたのは間違いないが、彼の起用により、ガナーズは昨季の布陣を少し調整する必要があった。
15 – Times Declan Rice lost possession, tied for the most with Arsenal.
— Scott Willis (@scottjwillis) October 24, 2023
He has added a TON of running and really good things but he passing was a bit loose today. Hopefully, he can clean that up. pic.twitter.com/XdDmGCdDIO
アルテタは中盤の守備力を強化する必要があり、パーティとジンチェンコが並ぶ布陣は技術的には申し分ないが、走力やスピードという点では堅固なものだとは言えなかった。彼らは素早く裏のスペースをカバーするのがそこまで得意ではないのに加え、両者とも繊細な筋肉の持ち主で怪我がちだったというのもあった。
更に、彼らを補完できる存在だったグラニト・ジャカも今季はいない。
ジャカは走力とフィジカル面で安定感のあるアスリートだった。彼はファイナルサードで巧みな駆け引きを任せられるようなタイプではないが、左のハーフスペースで上下動を繰り返すのには最適な素質の持ち主で、昨季の左の8番のポジションは彼のプロフィールに合っていた。
今季アーセナルはジャカに代えてカイ・ハヴァーツを起用する実験を行っているが、これは控えめに言ってもまだうまくいっていない。結果的にアーセナルは中盤で様々な策を試しており、ハヴァーツ起用以外にも。ジョルジーニョを中盤の底においてライスにジャカの役割を任せようとする試みなどもあった。
ただし、記事の冒頭で触れた動画内で語られている通り、ライスは素晴らしい選手ではあるものの、今の所相手の中央のブロックよりも少し離れたところでボールを持った方が輝く選手だ。
彼はトーマス・パーティのように味方のCBからタイトなエリアでボールを受け、スマートなターンから相手を突破する縦パスを出す、のようなプレイは出来ない。
アスリートとしてパーティはライスには及ばないが、彼がフルコンディションでプレイできる日には、彼は中盤の底でずっと相手をかわし、パスでボールを前に届け続けることができる。これこそが彼の一番の強みで、今のアーセナルにはそれがない。
ジョルジーニョは中盤の底から似たようなことができなくはないが、パーティと比べると少々テンポがゆっくりだ。
さらに、ジョルジーニョとジンチェンコを中盤の底に並べるのは少しプロフィールが被りすぎているように感じられる。
今季ウーデゴールとジンチェンコが不調なのはトーマス・パーティの不在と無関係ではないだろう。
更にここに加えてアーセナルのセンターフォワードのガブリエル・ジェズスも怪我で離脱している、あるいはサイドでプレイすることが多く、今季プレミアリーグではエンケティアが中央で先発する試合が多い。
エンケティアはかなり調子の波があり、たまに完全に試合から消えてしまうことがある。特にエンケティアとハヴァーツが同時期用となった際には二人そろって行方不明になってしまうこともある。
ホームのPSV戦とアウェイのセビージャ戦が今季のアーセナルのベストパフォーマンスだと思うが、この試合では両方ともジェズスが中央でプレイしていた。
アーセナルはジャカの代役をまだ見つけられておらず、中盤にトーマス・パーティを欠き、そしてジェズスをセンターフォワードとして起用できていないのだ。
そして昨季のアーセナルのプレイを象徴するような選手だったジンチェンコも今季は冨安とのローテーションが行われ、ジンチェンコが起用できる試合とそうでない試合、という風に分かれ始めている。
もちろんこれはジンチェンコ自身の問題だけでなく、中盤がシャッフルされている影響も大きく、トーマス・パーティが中盤をまとめ上げてくれれば彼の活躍の場は広がるだろうが、ここまでくると最早トーマス・パーティは起用できるケースがむしろラッキーで、コートのポケットに丸まった千円札を見つけたときのようなものだと捉えなくてはならないだろう。
より中長期的に重要なのは、アーセナルが今後安定した中盤の組み合わせを見つけ出せるか、あるいはある程度機能する複数のオプションを柔軟に繰り出せるかだ。
例えば、冨安を左サイドバックに置き、ライスを左の8番に置く形はバランスが取れるかもしれない。
今のところはアルテタはまだ最適な形を模索中であるようだ。
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