売却下手なアーセナル? 前編
移籍市場が閉幕したが、今年のアーセナルの移籍市場は2つのフェーズに分かれていたといっていいだろう。
まずは前半の獲得フェーズで、クラブは約200m£を費やしてティンバー、ライス、ハヴァーツを獲得したものの、獲得したばかりのティンバーが怪我に見舞われたことで、アーセナルの守備陣は少々手薄になってしまった。
ただ、アーセナルはそれに関してはこれ以上の短期的な補強を行うことはせず、移籍市場終盤では選手の放出に力を入れていた。
選手の放出がプラン通りに行ったとは言い難い。アルテタ自身も会見で『必要あるすべてのことを行うことは不可能だ』と認めていたが、5/31の時点でまさかロブ・ホールディング、キーラン・ティアニーといったある程度の移籍金が期待できるかに見えた選手に対して非常に少額な移籍金しか得られないとは予想していなかった。
但し、これはアーセナルだけが抱えている問題ではなく、トッテナムはロリス、ブライアン・ヒル、ロチェルソ、ダイアーといった選手を放出できなかったし、エンドンベレやレギロン、タンガンガ、スペンスといった選手たちもローンでの放出に留まった。
チェルシーも200m£かけて集めたルカク、ツィエク、ケパといった選手たちをローンに出すことを強いられた。ユナイテッドは現イングランド代表であるハリー・マグワイアの放出に失敗し、ファンデベークとマクトミネイも同様だ。
リバプールは主にサウジアラビアに選手を放出することで中盤の再建を行い、また、シティはビッグ6の中ではスカッドのスリム化に最もうまくいっているチームだと言っていいだろう。
ただ、シティのスカッドは勝利を目指して構成されており、彼らは特に金銭的な面で売却する必要性を抱えてはいない。彼らが今季放出したのは32歳のマフレズと33歳のギュンドアンでオファーが届けばウォーカーも放出する姿勢を見せていたようだが、彼らはサウジプロリーグから破格のオファーが届かない限りは、通常は移籍金の回収は見込めない年齢の選手たちだ。
これは上手い売却のやり方とは言えないが、彼らはキャリアのピークを迎え、そして過ぎるまで選手を留めることができる。
一方でアーセナルに目を移すと、この夏アーセナルがそれなりの移籍金で売却出来た選手はグラニト・ジャカとフォラリン・バログンの二人だ。
バログンはアーセナルでのプレミアリーグ出場は1試合しかないが、基本的に買い手クラブはポテンシャルのある若手に興味を示すもので、モナコがバログン獲得に対して支払った金額は、PSG以外のフランスのクラブが支払う移籍金としては異例と言っても良い額だった。
アーセナルの近年の高額の移籍金での放出は主にアカデミー育ちの選手で、彼らはポテンシャルを示すに十分なプレイ機会を得てまだ移籍金が下がる前に放出となるというケースが多い。ウィロック、バログン、イウォビ、マルティネスあたりがその例だ。
ジャカの放出はこれとは少し事情が異なり、ジャカにそれなりの移籍金がついたのは彼がアーセナルの絶対的なスタメンの選手ったからだ。チェルシーのハヴァーツやマウント放出もこれと似たケースだろう。
ケパやルカク、ハドソン・オドイといった既にチェルシーのプラン外だった選手たちでは十分な移籍金は回収できなかった。
これはアーセナルとも関連してくるが、最も興味深いのは、ビッグ6ではないプレミアリーグの他のクラブの獲得戦略が大きく変わってきている、という点だ。
彼らが目指しているのは大成功を収めているブライトンやブレントフォードのようなアプローチなのだ。市場で過小評価されている、キャリアのピークを迎える前の年齢の選手をスカウティングし、彼らが好パフォーマンスを見せれば高額の移籍金で上位クラブに放出する、というやり方だ。
そして、26歳のティアニーや27歳のホールディングは既に給与がアーセナルレベルの水準であり、このアプローチには適していない。
また、個人的にホールディングは深いブロックを敷いて守るようなチームであれば、十分にプレミアリーグで活躍できる選手だと思っていたが、確かに、今のプレミアリーグで常に深く構えて守り切る、というスタイルを志向するようなチームはあまり多く存在しない。
後編に続きます
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