【移籍金アーセナル史上最高額更新】スカウトレポート: デクラン・ライス

分析Phil Costa,海外記事

14歳の際にフィジカル面が不足しているという理由でチェルシーのユースアカデミーを放出となったデクラン・ライスだが、幸運にもそこから車で1時間もかからないウエストハムのアカデミーは当時のライス少年を受けれいれる決断を下した。

その後、ウエストハムでは2017/18シーズンにスラヴァン・ビリッチ監督のもとCBとしてデビューを果たしたが、その後デイビッド・モイーズにMFへとコンバートされることになった。

そして、このポジションでライスはウエストハムの絶対的な一員となり、50試合出場をマイケル・キャリックに次ぐ若さで成し遂げると、クラブの象徴的存在であったマーク・ノーブルの引退に伴ってウエストハムのキャプテンにの座も引き継いだ。

昨季の時点で既にライスは契約延長の意図はなく、移籍を望む姿勢を明確にしていたが、それでも彼はチームの主力としてウエストハムに40年以上ぶりのとトロフィーであるUEFAカンファレンスリーグ優勝をもたらす活躍を見せた。

ライスの強み

ボール奪取力

サッカー選手というのはその特質や強みを理解するのにより微妙な知識が必要となるポジションというのもあるが、ライスの強みは非常にシンプルで分かりやすい。

彼はその守備力の高さを活かしてウエストハムでは中盤の底として起用されることが多く、リーグで最も守備ラインが低いチームであったウエストハムの中盤で、訪れる危機の芽を全て摘み取って見せた。

特に目を引くのは、ライスが非常に様々な方法を駆使してボールを奪える点だ。

かれはデュエルにはアグレッシブに望むが、タイミングよくクリーンかつテクニカルにボールを奪うことも出来、これによりむらのない安定したボール奪取が可能となっている。

昨季ライスはプレミアリーグで最も多くボール回収(334)を記録した選手であり、過去三年間でのタックル成功数の合計は311と、これはこの期間中リーグ2位の数字だ。

さらに、ライスはこれだけタックルを行っていながらも、204試合で26枚しかイエローカードをもらっていない。彼はあばれ牛のようなタックラーというよりもより巧妙なボール奪取者だ。

ライスは185cmと比較的長身だが、敏捷で動きも鋭く、これと判断の早さを活かしてインターセプトを連発する。彼は昨季インターセプト数もプレミアリーグトップを記録しており、ゆったりと歩み寄るライスが突如スピードを上げ、パスの行方に足を出すのに相手選手が驚かされる、という場面も何度も見られた。

彼はまるで第六感を備えているかのようにボールの行き先を予測することが出来、これはウエストハムより高いラインを敷くアーセナルにおいて大いにチームの助けになってくれるに違いない。

攻撃面

昨季ウエストハム全体が不調に陥り、相方のソーチェクが思うような活躍を見せられなかったことで、結果的にライスはその攻撃面の才能も開花させることとなった。

彼は身長の影響か、ドリブル時に少しバタついて見えるものの、技術は高く、ボールを前に運ぶ力も高い。

昨シーズンはボックストゥボックス型MFのような形で、記録したプログレッシブキャリーの数315というのはアーセナルのどのMFよりも多い数字であり、実はライスは昨季ドリブルによるボール前進距離5152ヤードという欧州5大リーグ1位の数字も叩き出している。

もちろん、これらの数字はカウンター志向のモイーズのウエストハムのアプローチによって少し多めに出ているというのは前提としてあるが、特に彼のスタミナは素晴らしく、他の選手の勢いが落ちてくる試合終盤にはこの推進力は非常に役立つだろう。

ライスの最適ポジションは?

ライスの推進力と技術があれば、中盤の底だけではなく、より前の位置でもプレイできるかもしれないが、トーマス・パーティには退団の可能性も報じられており、やはり第一番の候補はアンカーということになるだろう。

スタッツ的にはライスとパーティはよく似ているが、一方でライスが直近の3シーズンで7試しか欠場がないというのは心強い。

今後の課題

今後重要となってくるのはライスがいかに素早くアーセナルでのボール保持時のプレイに慣れることが出来るかだろう。彼のミドルレンジのパスは基本的に安定しているし、ボール配給力は高い。

だが、ウエストハム時代の対戦相手のチームはウエストハムからカウンターを食らわないために、わざとゆったりとボールを持たせる、というアプローチをとることがしばしばあった。このため、ライスがパスを出す状態で時間とプレスに追われている、という展開はあまりなかった。

だが、アーセナルで対戦相手がアーセナルにボールを持たせてくれるような試合では、スピードは遥かに重要になる。ワンタッチ、ツータッチでチームメイトと連携し、縦へのパスを差し込めるだろうか?

あるいは、強豪相手の試合で相手が激しくプレスをかけてくれるような試合でもボールをコントロールし、テンポよくパスを出せるだろうか。

また、昨季のアーセナルは非常にアグレッシブな前からの守備を見せ、前線でのボール奪取数はリーグトップの388と、ウエストハムの281を100以上上回っている。

ウエストハム時代、ライスは自身で何とかしなくてはならないという思いからか、持ち場を置いて上がっていってしまう場面もあったが、アーセナルではよりタイミングを賢く選ばなければならないだろう。

まとめ

ライスの獲得を決めたウエストハムのスカウトは『彼がチェルシーのU-14を放出となったと聞いた時は衝撃を受けたよ。だが、次の日には彼をうちのアカデミーに呼ぶように動いていた。彼が他の選手と最も異なるのはその性格、意志の強さだった。』と語った。

そして、それこそがアーセナルのライス獲得に際して最も重要となるものでもあるだろう。

もちろん彼が攻守万能に活躍できるMFなのは間違いないが、彼はジャカ退団後のリーダーシップ面での穴を埋めてくれる、アーセナルのプロジェクトにとって完璧な選手だ。

もちろん移籍金100m£というのは非常に高額だが、プレミアリーグのクラブ間の移籍となると、最早相場など存在しないようなものだ。

今回のライス獲得はリバプールのファンダイクと比べる声も上がっているが、インパクトという意味では同規模のものはソル・キャンベル獲得くらいしか思い浮かばない。

もちろんその分プレッシャーも大きいだろうが、ついにクラブは持っているチップをテーブルに広げ始めた。手札を信じ、勝利を収めなくてはならい時期が近づいている。

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Posted by gern3137