【アーセナル移籍間近】徹底分析: カイ・ハヴァーツ

移籍

デイビッド・オーンスティン記者とファブリツィオ・ロマーノ記者の二人を含めた各メディアで、アーセナルとチェルシーがカイ・ハヴァーツの移籍に関して合意に達したと報じられています。ボーナスの割合に関しては若干報じているメディアによって差があるものの、合計で最大65m£まで達するような移籍金となっているようです。

カイ・ハヴァーツがどのような選手なのか紹介しつつ、移籍金が妥当なのか、アーセナルでのプレイポジションなどについても考察していきます。

ハヴァーツの基本プロフィール

・年齢: 24
・身長: 193cm
・国籍: ドイツ代表
・所属: チェルシー
・ポジション: MF/FW
・利き足: 左
・Transfermarkt算出による市場価値: 47m£

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ハヴァーツのこれまでのキャリア

ハヴァーツはオランダ国境にほど近いドイツの街アーヘンに生まれ、その後レバークーゼンのユースチームで育ちました。

レバークーゼンのU-17で18得点を挙げる素晴らしい活躍を残した翌年、17歳でトップチームデビューを果たします。これは、最近ウィルツに破られるまではレバークーゼンの史上最年少デビュー記録でした。

ここから彼は神童と呼ばれるにふさわしい活躍を見せ始めます。デビューシーズンには17歳にしてCLに3試合、ブンデスリーガに24試合に出場、4ゴール6アシストも記録すると、そのまま安定した出場機会を得続け、18歳の時にはブンデスリーガ50試合出場を達成した史上最も若い選手となります(それまでの記録はヴェルナーが保持していました)。

また、彼はブンデスリーガ75試合出場もドラクスラーに次ぐ史上2番目の若さで達成、19歳でPKの得点者となるのはレバークーゼン史上最年少、18/19シーズンにはまだ19歳ながらリーグ戦で17ゴール4アシストという出色の活躍を見せ、この年マルコ・ロイスに次いでドイツ最優秀選手投票で2位にランクインしました。

その翌年も12ゴールを挙げ、安定した活躍を残したハヴァーツには多くのビッグクラブが興味を示していましたが、最終的には約70m£の移籍金でチェルシーへと移籍することとなります。

プレミアリーグ移籍後はドイツ時代ほどの圧倒的な数字は残せてはいませんが、特に昨季に関してはチェルシー全体の不振もあり、この期間をどう見るかは少し難しい所です。

CL決勝での得点をはじめとして、既にドイツ代表でも37試合に出場し13得点を記録、EUROとW杯といった大舞台でのプレイ経験もあります。

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ハヴァーツの特徴・プレースタイル

よほどのことがない限りはハヴァーツのアーセナル移籍は実現すると思われますが、多くのファンが気になっているのがハヴァーツのポジションでしょう。彼は非常にユーティリティ性が高い選手で、レバークーゼン時代は最も多かったのがトップ下としての起用、次いで右ウイングとなっていた一方では、チェルシーではストライカー起用が主となっていました。

彼の一番の強みと言ってもいいのがオフザボールのランやボックス内への飛び込みで、ボックス内のランの回数は昨季のハヴァーツリーグ2位でした。サカやマルティネッリからのボールに合わせてくれるような活躍は大いに期待できそうです。

最初から前線に位置してボールを受けるというよりも、走り込みが上手く、得点機に飛び込んでこそもっともその能力を活かせるタイプ、といった感じでしょうか。起用ポジションや体格などは違うものの、ラムジーを彷彿とさせるものが少しあります。

また、ティエリ・アンリはハヴァーツは少しだけロビン・ファン・ペルシーを思い起こさせるものがある、ともコメントしており、確かに、もしハヴァーツをワントップとして起用するのであれば、よりゼロトップ的な後ろにも降りてくる万能型のFWになりそうです。

加えて高い身長を活かした空中戦の強さも目を瞠るものがあり、今季のプレミアリーグではアタッカーとしては第4位の空中戦勝利数を記録しており、直近の365日での空中戦勝率も55.8%とFWとしては欧州でも上位6%に入る水準です。もしジャカが退団となれば少々不足気味のフィジカル面での存在感を前にもたらしてくれそうなのもアーセナルにとってはありがたい所です。

さらに、ハヴァーツは技術も非常に高く、タイトなエリアでのボールを受け、パスを出すことも苦にしないタイプです。

ストライカーとしてはプレス下でのパス成功率はリーグトップクラス(4位・78.1%)で、例えばフィルミーノ(79.5%)と同水準です。また、エリア内のパス成功数とチャンス創出数でもFWではハリー・ケインとトロサールに次ぐ数字を残しています。

同時に、FBrefの数字によると、タックルやブロック、インターセプトなどの数字もFWとしてはかなりの高水準です。

アーセナルでのハヴァーツのポジションは?

上の通り、ハヴァーツの強みをまとめると
・前線への走り込み
・得点
・プレス下でボールを受けることを苦にしない技術の高さ
・空中戦の強さ
・守備の献身性
といったところですが、非常に多彩な能力を備えているからこそ彼の起用法はかなり複雑になっているようです。

具体的には『空中戦に強い』『前線でボールを繋げる技術がある』からと言って最前線で起用すると、持ち味である後ろから飛び込んでの得点力が活かしきれず、かといって守備の献身性というのはあくまでFWとしては、であり、前線での献身性は期待できるものの低い位置での守備の精度は未知数、という所に不安がある、といった所でしょうか。

そういった意味では恐らく彼最適のポジションを一言で言うのであれば『シャドーストライカー』ということになるのではないかと思われます。ただし、現在2トップを採用しているチームはあまり多くないのが悩ましい所です。

2020年のインタビューでハヴァーツ本人は最も好きな選手はイニエスタであり、自分としては出来るだけボールを持ちたいので、トップ下というよりも8番タイプのMFが理想だと思う、という旨のコメントを残しています。その一年後にはAthleticに『僕はボックスに飛び込むのが好きなMFだよ』とも話していました。

ただし、チェルシー移籍以降は中盤での起用はほぼなく、レバークーゼン時代でも、より後ろ寄りのMFとしての起用はあまり多くない(全体の15%程度)ため、基本的には彼を起用する監督はハヴァーツをより前で輝ける選手とみているようです。

個人的にはアーセナルがボールを持つ時間が多いことが想定されるような試合では今のジャカのポジションでの起用も何とかなりそうかな、と思いつつも、アウェイ戦などではよりゼロトップ的なストライカーとしての起用が現実的なのかな、と感じますが、ストライカーには既にジェズスもいますし、65m£という移籍金はローテーション要員に支払う額としては高すぎますし、その辺りをアルテタがどう考えているのかは気になる所です。

ちなみに、Athleticのチェルシー担当の方の記者はアーセナルはジャカの完璧な代役を見つけたと考えている、という記事も出しています。

ハヴァーツの移籍金の妥当性は?

さて、その65m£という移籍金ですが、かなり賛否両論あるようです。ロマーノ記者によると移籍金は60m£+5m£のボーナス、という形だそうなので、これが事実であれば少なくとも60m£を下回ることはなさそうです。

最近のプレミアリーグを見てきたファンからはチェルシーでこれだけの活躍しか出来ていない選手に65m£は高すぎる、という意見もある一方で、レバークーゼン時代のハヴァーツを知るファンからは十分その価値はあると論じる人もいます。

実際に現在のアタッカーの相場を考慮に入れると、既にプレミアリーグに適応できており、ブンデスリーガ時代は2桁得点が当たり前、ユーティリティ性があって複数ポジションをこなせ、かつ24歳になったばかりと若い選手に払う移籍金としては比較的妥当にも感じられます。

ハヴァーツは本来キャリアを通して決定力が低い選手ではないもの(平均すると安定して実得点がxGを上回る)の、昨季は極端に実得点がxGを下回っており(xGで見れば11-12得点程度決められていてもおかしくなかった)、不調のシーズンの直後に獲得するというのはむしろ賢い戦略である、という意見もあります。

恐らくアーセナルファンがこの移籍金が高すぎると感じる背景には、ハヴァーツ自身の素質というよりも、彼のようなタイプの選手が今のアーセナルの明確な補強ポイントなのかが定かではないため、既に在籍しているトップレベルの選手とポジションが被る選手に対して支払う移籍金としては高すぎる、というニュアンスも含まれているように思います。

このあたりはアルテタがハヴァーツをどのように起用するつもりでいるのか次第でもあるので、プレシーズンマッチなど開始後に、楽しみに見守りたいですね。

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Posted by gern3137