【戦術分析】いつも通りのアーセナルと対策を打ったマンチェスター・シティ

スタッツ・戦術Lewis Ambrose,海外記事

以前ペップ・グアルディオラのバイエルン・ミュンヘンでの一年目に関しての密着取材が行われたことがある。その模様を記録した本に、記者が監督とコーチ間でのミーティングに同席した際の様子が記されている。

グアルディオラは記者にもし彼ならCL決勝でどのような11人を選ぶか、と尋ねた。記者の答えは『最も好調な11人を選び、4-2-1-3で送り出す』というものだったが、 当時ペップのアシスタントだったドメネク・トレントは『対戦相手がレアルマドリードでもジェローム・ボアテングを、バルセロナ相手にシュバインシュタイガー、チェルシー相手にゲッツェとミュラーを外すつもりですか?』と尋ね返した。

メッセージは明確かつシンプルで、送り出すメンバーを選ぶ際には対戦相手を考慮しなくてはならないというものだ。

これこそまさしくマンチェスター・シティがアーセナルに対して行ったことで、現状のメンバーで出来る限り自チームの強みを発揮できると思われる先発メンバーを送り出したアーセナルとは対照的だった。

グアルディオラは強豪相手の試合であればあるほど、より対戦相手の対策に特化したシステムを採用する傾向にあるが、これは今回の試合でシティがアーセナル戦に対して例年よりもリスペクトを見せた証だと見ることが出来る。

一方で、もしかすると、アルテタが特に何か大きな変更をチームに加えなかったのは、それらを行うことで、選手たちにシティよりも格下であるという意識を植え付けてしまう可能性を危惧したのかもしれない。

ただ、結果的にグアルディオラはアーセナルの強みを消すために、最終ラインではジョン・ストーンズを中盤に動かすのではなく固定気味に起用することで、アーセナルの前線に数的優位を作られないようにし、かつ通常より多くのDFを起用した代わりに、普段より多めにロングボールを多く用いることでアーセナルのプレスを回避した。

試合後ケビン・デブライネはインタビューで以下のように語った

アーセナルのプレスはトップレベルだ。彼ら相手に後ろから繋ぐのは不可能に近い。だから、僕らがロングボールを多用しなくてはならないのはわかっていた。練習でいくつかの形を試したよ。僕が普段より低い位置からアーリングにボールを預けて走る形も機能したね。

普段は8番の位置の選手に二人を置いてプレイすることが多いけれど、ペップはアーセナルのプレス対策として、より中盤のコントロールを重視したかったんだと思う。だから、ギュンドアンはダブルボランチとしてより低い位置で起用されたね。ジャカとパーティのどちらが僕に対応しに来るのかに応じて、僕も前に上がるタイミングをきちんと選ばなければならなかった。パーティがプレスに来た時は僕は裏に走ってホールディングとガブリエルが僕とアーリングどちらを見るべきか迷うような状況を作るようにしていたよ。

そしてシティのアーセナル対策が上手くいったかどうかは試合結果を見れば明らかだろう。

ビルドアップ時にシティは5人ではなく、4バックとその前の2人という合計6人でボールを回すことで、サカとマルティネッリのプレスを完全に無効化した。

これは恐らくアーセナルが予期していなかった作戦で、最後まで対応することが出来なかった。

攻撃時にはシティはツートップのような形で、デブライネは単に相手のCBの一人を連れて(大体はガブリエルだった)中盤に滑り込める機会を窺っていた。

このようにしてアーセナルの選手を前に一人つり出して3対3の状況を作ったところでロングボールを前に送ることで数的同数の状況をシティは活かしていた。

フィジカルと技術が非常に高いハーランドとデブライネの二人が前でボールを収め、裏に走り込む選手にパスを叩けていた。

ロングボールの出し手にプレスをかけるためにパーティが前に出れば、今度はアーセナルは数的不利になり、右に流れるデブライネにガブリエルは持ち場を空けてついていくことは出来ないし、彼がより自由になってしまう。

これはシティの選手たちの練度が高く、様々な役割を自在にこなせるからこそなせる業だが、現時点ではまだアルテタのチームはまだこのレベルに達していないようだ。

また、やはり際立っていたのはハーランドがグアルディオラのチームにもたらしたものだろう。

彼らは今やロングボールという武器も手に入れてしまった。

シティ相手に低く構えて守ろうとするのはやられるのを待つようなものだが、前に人数をかけてプレスに行こうとしても、そのプレスがほんの少しでも完璧なものからずれていれば、シティはロングボールを放り込み、ハーランドとデブライネとのフィジカルバトルに守備陣は挑まなくてはならないことになる。

グアルディオラはアーセナルがハイプレスでこの試合に臨むことを予期しており、対策を打ったに違いない。

もちろん、グアルディオラと比べればアルテタはまだ非常に若い監督だし、アルテタもいつか彼と同じ境地に辿り着くかもしれない。そもそも、グアルディオラ自身ですら、ビッグゲームで戦術的なミスをするのは珍しい事ではない。

もちろん、水曜日の試合に関して言えば、アーセナルは正確なパスを繋ぐこととフィジカル面でシティに対処すること両方に苦戦していたため、もしも何か戦術的な解決策があったとしても、試合に敗れていた可能性はある。

もちろんたらればを挙げればきりがないが、少なくとも今季のアーセナルを観る限り、今回の試合のようなビッグゲームでアルテタが再びタクトを振るう機会が近いうちに訪れることは断言できるだろう。

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Posted by gern3137