スカッドの中間層

分析Tim Stillman,海外記事

ミケル・アルテタ就任後のアーセナルのベンチマークとして、ユルゲン・クロップのリバプールがよく比較されてきた。

彼らが収めた成功を考えればこの比較は魅力的であり、かつこれはアーセナルと似たクラブの予算内で成し遂げられたものでもあった。

クロップのリバプールの改革を考えた際に、特徴的であったのはいかに迅速に彼がチームの中心となる選手を確立させたかだ。

クロップの監督就任後、かなり早い段階でベンテケやマルコヴィッチ、サコ、アレン、イングズといった選手たちはチームを去った。恐らく彼の中で、自身の目指すサッカーをプレイできる選手ではない、というのが明らかだったのだろう。

また一方で、クロップがプロジェクトの中心に据えた選手たちもいた。マネやサラー、そしてフィルミーノはクロップの監督就任以前から在籍していた選手だが、彼はホッフェンハイムの彼のことをよく知っていたはずだ。

ここにアリソン、ロバートソン、ワイナルドゥム。ファンダイクにアレクサンダー=アーノルドといった選手たちが加わった。

そして、クロップのチーム作りにおいて興味深いのは彼が上記の二つのカテゴリーの間に位置する選手をいかに活用したかだ。彼らは大体の場合、即座に放出はされないが、1度しか契約延長は行わない選手たちだった。

そのもっともよい例がアダム・ララーナであり、ララーナは数年はクロップのもとでプレイしていたが、どこかのタイミングでこのポジションの補強をすることはクロップの頭の中にあったに違いない。

さて、リバプールの話はこのくらいにしてアーセナルに話を戻そう。

全く同じというわけではないが、アルテタも似たような優先度に応じたチーム作りを行っている。アルテタのチーム内では完全に居場所がない選手たちがクラブを去り(エジルとゲンドゥージに関してはサッカー的なクオリティの問題というよりも規律面と合わさってのことではあっただろうが)、一方で、現在プロジェクトの中心となっている選手たちがいる。

さて、ここで再び興味深いのは、その間、中間層に位置する選手たちだ。アルテタの監督就任からもある程度時間が経ち、そろそろ彼らの将来に関して決断を下さんくてはならない時期に差し掛かっている。

では、リバプールにおけるアダム・ララーナやナサニエル・クラインのような選手がアーセナルでは誰になるのか、という点だが、キーラン・ティアニー、エミール・スミスロウ、そしてロブ・ホールディングらではないだろうか。

ティアニーは日に日に移籍の可能性が高まっているように見えるし、ホールディングは次の夏に関してはわからないが、今の出場状況で契約延長に応じるとは考えづらい。

既にアーセナルはファビオ・ビエイラとレアンドロ・トロサールを獲得しており、スミスロウも少し将来が不透明だと感じているかもしれない。

また、リバプールで例えるのであれば、グラニト・ジャカはまさにジョーダン・ヘンダーソンのような選手だと言っていいだろう。

当初はジャカのポジションもアーセナルはアップグレードを望むのではないかと思われたが、ヘンダーソンと同じようにジャカもまた、そのパフォーマンスとリーダーシップでチームの絶対的なメンバーとしての立場を固めた。

2021年の夏にアーセナルはジャカのローマ移籍を許可するつもりでいたし、もしローマがアーセナルが適切だとみなす移籍金を支払っていれば、移籍は実現していたはずだ。

だが実際にアーセナルは彼と契約延長を行い、恐らくこの夏再び契約延長となるだろう。

これは、当たり前だが監督の構想における選手の立ち位置は流動的であることを示している。アーセナルが2020年にオーバメヤンに契約延長を提示した際には、彼こそ向こう数年にわたってプロジェクトの中心となる選手だと考えていたはずだ。

恐らくだが、ティアニーは既に夏の移籍の決意を固めているのではないかと考えている。彼は良い選手でみょいプロフェッショナルだが、より定期的な出場機会を求めるのであればそれは納得も行く姿勢だ。

スミスロウに関しては、まだそこまで気持ちは明確ではないだろう。

最も状況が複雑なのがロブ・ホールディングで、アルテタは彼が第四CBという立場に満足してくれるのであれば、スカッドに留めたいに違いないが、問題はホールディング自身がどう考えるかだろう。

彼はエルネニーのように、その役割に満足してチームに残ることを望むだろうか?だが彼はエルネニーよりも若い。27歳の時点ではもっと異なるものをキャリアに望むだろうか?

スカッド作りという観点で見ると、アーセナルは比較的短い期間中に多くのことを成し遂げた。ここまでのアーセナルの放出の中心はチームに居られないことが明らかである選手だったが、この夏以降はここまでのアーセナルの功労者だが、絶対的なポジションを得られていない選手を放出し、代役となる選手を獲得するのか、それとも彼らをチームに留める姿勢を明確にするのかの決断を行っていくことになるのかもしれない。

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Posted by gern3137