今季ここまでのエディー・エンケティアのパフォーマンスの分析
W杯期間中にガブリエル・ジェズスがひざのけがで離脱すると発表された際に、アーセナルファンの間に衝撃が走った。
ジェズスはアーセナルを劇的に変えた選手の一人であったからだ。
控えストライカーのエンケティアは昨季終盤に得点をある程度挙げたとはいえ、ジェズスの代役が務まる選手なのか、という疑いの声も上がっていた。
ファンの多くはエンケティアが得点力を備えたストライカーであることは理解していたし、恐らくむしろ単純にゴール数だけでいえば彼がジェズスを上回る可能性もあると考えていたはずだ。
だが、ファンが心配していたのは得点以外の部分だった。
モダンサッカーの変化というのは非常に興味深いもので、このような議論は20年前であれば起きなかっただろう。20年前のサッカーファンに『控えストライカーは点を決めてくれると思うのだが、その他のところが心配なんだ』といった説明をしてもなかなか理解してもらえなかったであろうにに違いない。
もちろん、だからといって現在のファンの考え方が的外れであるというわけでもない。
最近のマンチェスター・ユナイテッドでのクリスティアーノ・ロナウドを見ればそれは明らかだろう。彼は多くの得点を挙げたが、その他の部分でのチームへの貢献は非常に少なかった。
また、アーセナルに目を移しても、興味深いのは得点力抜群のイアン・ライトをストライカーとして擁していた時代にアーセナルはリーグ優勝をそこまで多く果たせていないという点だろう。
ライトのアーセナル在籍時にクラブが優勝を果たしたのは1998年のみで、この年イアン・ライトは怪我でほとんどプレイできていなかった。
同様にファン・ニステルローイはマンチェスター・ユナイテッドで5度得点王を獲得しているが、このうちリーグ優勝したのは1シーズンのみだ。
彼がクラブを去り、ユナイテッドがテベス、ルーニー、ロナウドのスリートップを導入して以降彼らはリーグ3連覇とCL優勝を成し遂げた。
過去の傾向から見ても、絶対的な得点力のあるストライカーに得点を頼るチームはそこまで好成績が残せないことが多いのだ。
したがって、エンケティアに対するアーセナルファンの懸念も根拠のないものではなかったと言える。
だが、実際のところ現在のエンケティアはキャリア初期の頃とは様々な点で大きく異なる。また、タイミング的にもジェズスのけがが明らかになったのがW杯期間中であったため、アルテタがエンケティアを指導し、フレンドリーマッチで試すことなどができたことも好影響を与えたかもしれない。
エンケティアがよりオールラウンドなFWとなれるようにハードワークを続けているのは明らかだ。もちろん、ジェズスとエンケティアはタイプが全く異なる選手ではある物のジェズス離脱後のストライカーとしてのパフォーマンスで、エンケティアは見事に疑念を払しょくして見せた。
ジェズスは中に入ってマルティネッリと流動的にポジションチェンジを繰り返すことが多かったが、これに関してはエンケティアにストライカーが変わって以降減少しており、同時にマルティネッリの90分当たりのパス数は増加(30→35)し、パス成功率は大きく下がっている。
恐らくこれはジェズスが担っていたボール保持時の役割をある程度分担しつつも、より近くでボールを受けてくれる選手がいないことの影響だろう。
ジンチェンコがオーバーラップでマルティネッリをサポートする代わりに中に入っていくことが多いのに加え、ストライカーが左サイドに流れてきてくれる頻度がジェズス離脱後減少した。ショートパスで連携できる相手やおとりのランでマルティネッリのためにスペースを作ってくれる選手がいないため、ジェズスの離脱で最も影響を受けているのがマルティネッリだと言っていいだろう。
最近の試合ではマルティネッリのすぐ内側にジャカがいるのみ、という場面が見られる。
そのジャカも、ジェズスの離脱後90分当たりのタッチ数は53.7から57.2へと増加しており、やはりジェズスの分のボールタッチを少し肩代わりしているような形となっていることがわかる。
それも当然と言えば当然で、今季のプレミアリーグでのジェズスの90分当たりの平均ボールタッチ数は45.1となっている一方で、エンケティアは33.8だ。
実際のところ、これはそこまで悪い数字ではなく、例えば相手ボックス内でのタッチ数でいえばエンケティアは欧州上位12%に入る水準なのだが、単にジェズスのタッチ数が欧州トップクラスで多いのだ。
だが、事前の期待通り、ジャカとマルティネッリはジェズス不在によりプレイを少々変える必要はあったかもしれないが、得点に関してはエディーは申し分のない活躍を見せている。
彼はハーランドではないのでボールに3回するだけで4ゴールを挙げるというわけにはいかないが、アルテタが求めるFWのビルドアップへの貢献もある程度は行いつつゴールを両立させることが出来ている。
エンケティアの仕事は何もジェズスの貢献をすべて再現することではなく、ここまでのところジャカとマルティネッリと分担しながらも、中央でエンケティアらしさを見せられるチャンスがあれば、きちんと結果を出せているといっていいだろう。
source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):
ディスカッション
コメント一覧
正直なところジェズスはマルティネッリに対して献身的(過保護)気味で、ジェズスの得点力が少々犠牲になっていたように見えていたし、
今こそマルティネッリが自ら考えて自ら形を作って打開する能力を得る良い機会であるようにも思います。
彼はどうやらボールを持ってから考える事が多く、むしろ相手に持たされてる感があります。よりシンプルに自分の形を確立して欲しいですね。
三苫やトロサールから吸収出来ることもあるはず。
大変興味深く、精緻な分析と思います。
マルテネッリは若く、真っすぐ。サカも最初は苦労した。この二人はもっと伸びる。
ンケティアの才能は異常というべきものだが、開花しないかも。今までレギュラーでなかったこと自体おかしい。プライベート、社会構造等も関係してると思われる。が、もう自分で責任を取らないと。
ジャカは理解しているが、
ウーデゴーアはまだ。アーセナルに太陽をみたならば、今度はウーデゴーア自身がそうなるとき。