【戦術コラム】アルテタアーセナルはいかにしてトッテナムに勝利を収めたか 後編

分析

前編はこちら:

アーセナルの相手陣内での配置

下の画像は先制点に至ったビルドアップの場面だが、アーセナルが相手陣内でどのような配置でプレイしていたかが明確に見て取れる。

アルテタはアーセナル監督就任当初から攻撃時には前線に5人が並ぶ形を志向しており、そのメリットの一つに高い位置でボールを回しやすくし、選手が満遍なく配置されることで、中央でも密集した相手に囲まれるという事態が起きにくい、というものがある。

加えて、この2-3-5/3-2-5の形はボールを失った際も、選手間の距離が近いため、カウンタープレスに移ることが容易になる。そして、画像からもわかる通り、左右のハーフスペースはジンチェンコとホワイトが守っている。

彼らがトーマス・パーティに近い中寄りに構えていることで、ソンとリシャルリソンはハーフスペースへのパスを警戒しなくてはならないため、どうしても中に入らざるを得なくなる。

また、スパーズが中央をコンパクトに固めていたおかげで、大外のサイドは空くことが多く、サカやマルティネッリのウイングの二人はもちろん、ジャカとウーデゴールの二人も外に出ればボールを持てる形となっていた。

アーセナルは一方のサイドから逆サイドへとトッテナムを揺さぶり続け、最終的にサリバがサカへと良いパスを届け、またしてもペリシッチに1対1を仕掛けられる形が演出された。

この試合を通じて見られたように、ソンはサカに対応するペリシッチを助けるためにサイドに出ていったが、今回はホワイトはオーバーラップするのではなく、中に留まってサカへのオプションとなっている。

アーセナルの前の5人の右側には既にウーデゴールとサカがいるため、そのさらに外ではなく、ホワイトはハーフスペースで相手のカウンターに備えるという意味もあった。

前線の3人

また、アーセナルの攻撃において、徹底した右サイドの崩しが功を奏しただけではなく、前線の3人が相手守備陣を上手くピン止めしていたことにも触れるべきだろう。

例えば、以下の画像の場面では、ウーデゴール、マルティネッリ、ジャカの3人が中に入っている。本来であれば、アーセナルの攻撃陣5人に対してトッテナムのDF5人という形では数的優位は生まれないが、ウーデゴールがラングレの前に立ち、マルティネッリがロメロとダイアーの間、ジャカがロイヤルの後ろを取ろうとしている、という形のおかげでジェズスがフリーになっている。

この後ホワイトはクロスではなくパーティにボールを渡すことを選択し、彼のシュートが見事に決まった。スパーズの選手たちは中の3人に人数を割きすぎており、パーティへのマークが間に合わなかったのだ。

xGで見れば、このような形はかなり決まる可能性が低いチャンスであることには違いないが、これがリバプールや特にマンチェスター・シティがデブライネのようなキックの名手をチームに揃えている理由だろう。シティはこのような形から何度も得点を決めてきた。

この観点から見ると、最近はプレシーズンのチェルシー戦でも見られた通り、パーティはミドルシュートの調子は悪くなさそうだ。

パーティの重要な役割

また、守備においてトーマス・パーティが非常に重要な守備を試合を通して果たしていたことも言及するべきだろう。彼は常に素晴らしいポジショニングで危険の芽を摘み、ボールを奪回した。これはアーセナルが相手にプレスをかけ続ける上で必要不可欠なプレイだった。

今のアーセナルのシステムにおいては、孤立した状況での1対1にも対応できる2人のCBが必要なのはもちろんだが、彼らの前でより守備力を強化できる選手が非常に重要で、まさにパーティがそれだ。

彼は前にボールを進める上で中心的な役割を果たしただけではなく、特に後半守備での貢献が目覚ましかった。

ガブリエル・ジェズスの活躍

上で既にアーセナルが常に前線の中央に3人を配置し、相手の守備ラインを押し下げていたという点には触れたが、これは同時に、もし相手にとって危険なエリアでルーズボールが生まれればそれに反応するのが容易になるということでもある。

とはいえ、それが狙いではあるが、これに関しては個人の反応速度や資質が大きくものを言う。だが、現在のサッカー界でこれをジェズスよりうまくこなせる選手は多くない。

彼は得点場面のように、一瞬のスキを逃さない嗅覚も備えているのだ。

さらに、彼のエリア内でのクレバーのランや相手より一歩先立ちマーカーを外す能力での攻撃への貢献は素晴らしい。ジェズスは以下の場面のように、ボールが届く最後の最後に相手から離れるような動きでチャンスを演出するのが非常に上手い。

まとめ

同じような攻撃パターンを少しずつバリエーションを変えながら繰り出したアーセナルの右サイドの攻撃は非常に効果的で、相手を押し込み、アタッキングサードを支配することに成功した。

忍耐強い繰り返し。これはアルテタが示した、『ローブロックを敷く相手に対して相手DFの間を突くパスを封じら多彩にいかにして攻略すべきか』の一つの答えだ。

今回の試合は、このアプローチがトッテナムを揺さぶり、アーセナルに勝利をもたらすのに十分だった、という結果になった。

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Posted by gern3137