【戦術コラム】アーセナルはティアニーの前にスミスロウあるいはブカヨ・サカを起用すべきである

スタッツ・戦術Lewis Ambrose,海外記事

Youtubeにヨハン・クライフがダイヤモンド型のフォーメーションについて解説する素晴らしい動画が上がっている。

その中で彼は『チームメイトを助けるというのはチームメイトに近寄っていくことだと思われがちだが、実は逆で、むしろ離れていくことの方が助けになるんだ。例えば私がボールを持っているとしよう。私は1対1の方が好きなので、チームメイトが離れていってくれた方が助かるんだよ。』と述べている。

もちろん、これは非常に単純化されたバージョンの話で、実際にはチームメイトのために1対1を作り出すために、まず一旦そのチームメイトに近寄った上で、そのあと離れていく、という作業を行う必要がある。

チームからチームメイトを孤立させて後は全てを任せたところでうまくいかない。

だが同様に、その後離れていくわけでもないのにただ近寄って行っただけでは特にチームメイトを助けることはできないのだ。

この二つがまさに金曜日に起こったことで、アーセナルはティアニーを完全に孤立させたかと思えば、逆に特にアイディアなく近寄っていき彼の活躍の機会を限られたものにしまうようなアプローチをとっていた。

上の画像の通り、マルティネッリ(画像中では丸で示されている)はスタートポジションは左だったが、中に入っていくことが多く、ティアニーは誰とも連携が出来ず、かつティアニーがプレイしやすいように相手の注意を惹きつけてくれる味方もいなかった。

左でティアニーは良いクロスを上げるためのポジションに入り込むためにはブレントフォードの選手2人以上を相手に一対一に勝利したり、あるいは非常に長い距離を走る必要があった。

マルティネッリあるいはバログンがサイドに寄って行った際には、どちらかというとスペースから相手を引き離すようなプレイではなく、単にマーカーを引き連れてティアニーが利用できたはずのスペースを埋めてしまうことも多かった。

違う目線で見てみよう。この場面で相手にとってティアニーに誰がついていけばいいのかは明らかで、特にブレントフォードに混乱を引き起こせていない。

また、この試合で基本的にティアニーが足元で、攻撃を進めるためにその後ティアニーが多くの仕事をこなさなければならない状態でボールを受ける場面が多く、彼をマークする相手の裏側にボールが出ることがほとんどなかった。

それでもティアニーがアーセナルの攻撃の中心にあったのは間違いないが、チームメイトはティアニーのプレイを難しくしてしまい、彼にはたった一つ、サイドラインを全力で駆け上がってクロスを上げるという唯一のオプションしか与えられなかった。

これを逆サイドでのスミスロウの動きと比べてみよう。彼はペペのサイドで彼を助けることが多く、非常に利他的なプレイヤーだ。彼は常にチームメイトに寄って行き、その後彼らが進もうとしている方向とは逆に向かって自身は動き、彼らのためにスペースを作り出す、あるいは相手選手を引き離すというプレイをずっと繰り返すことができる。

ブレントフォードの左サイドバックリコ・ヘンリーがつり出され、相手CBがカバーに行かないといけないような状況がまれに作り出された場面では、スミスロウが相手を引き付けているか、あるいはペペのポジショニングをおとりにして裏に走りこむという形だった。

アーセナルの新たな10番は、常にペペと逆方向に走っていた。

しかし、サカが登場するまで、このように助けてくれる選手がティアニーにはいなかった。サカは交代出場して20秒で既に深い位置でジャカからボールを受けてアイエルを引き連れながらカノスの裏にティアニーをリリースするようなプレイを見せた。

サカはマルティネッリよりも低い位置まで下がり、パスの先に走りこむことを目指すよりもむしろ、ティアニーとより近い位置でプレイし、彼の外あるいは家でブレントフォードの選手をつり出そうとしていた。

これによりティアニーは何度も相手右サイドバックのカノスの裏でボールを受けられるようになり、これにより、相手の右CBはティアニーに対処するために外に出る必要が生まれた。

さらにサカは相手を引き連れてそのまま守備ラインから中盤までつり出すこともあった。彼はサイドに流れてブレントフォードの右サイドバックと右CBの両方を引き寄せ、それにより空いたティアニーは走りこむことも出来るようになった。

マルティネッリは基本的に前に向かって走っていくことが多かったが、サカは前線から逆に下りてきてティアニーのためのスペースを開けるようなプレイも見せた。

またこれによりジャカが前に上がることすらも手助けし、これも相手にとって注意をより広範囲に咲かなくてはならない要因の一つとなった。

アーセナルはよりフレキシブルになり、突然ブレントフォードは誰が誰をマークすべきなのかが曖昧になった。ティアニーに足元でボールを預けてドリブル突破を任せた!というスタイルではなく、何度もティアニーの走りこむ先にボールが出せるようになった。

ブレントフォードはこれに対処するのはより難しくなり、得点こそ生まれなかったものの、この試合のベストチャンス、ティアニーのプルバックからのペペのシュートが生まれた。

このような相手の布陣を乱すにあたってのコンビネーションプレイの改善がアーセナルの最大の課題だとすれば、やはりこのカギとなるのはスミスロウとサカの二人だろう。

ミケル・アルテタがアーセナルの攻撃を今季改善するにあたって、ティアニーと彼の前でプレイする左サイドでプレイする選手が良い連携を築くのが必要不可欠となるのは間違いない。

アーセナルの開幕戦においてポジティブな点はあまりなかったが、一つだけ明らかになったことは、攻撃を機能させるためには左サイドにストライカー型の選手を起用するのはやめるべきだ。

ボールから離れていくような動きが得意なティアニーの能力を最大限引き出すには、ボールに近寄ってきてプレイするようなMFを起用するべきだ。そして、現アーセナルのスカッドではサカとスミスロウの二人がほかの選手にはないやり方で行うことができるプレイだ。

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Posted by gern3137