クロエンケにはもう飽き飽きだ 後編
前編はこちら:
KSEの人材の任命はことごとく失敗に終わっている。ベンゲル後の体制に備えて超高額の給与を受け取るフロント陣を構築したが、これはスーパーリーグ崩壊よりも少々長続きした程度に終わってしまったし、KSE体制で最近は短期間のうちにフロント陣の解雇と退任が相次いでいる。
もちろん、アルテタとエドゥの任命が成功だったか失敗だったかに関してはまだもう少し様子を見ないとわからないが、KSEの人材登用は基本的に消極的、あるいは後手後手で、彼らがアーセナルの経営を行いだしてから、商業面ですら上手くいっていないのだ。
そして、その影響はピッチ上にすでに表れている。KSEがアーセナルを買収してからのアーセナルの順位を考えるだけでそれは明らかだ。
彼らの現場に任せて遠くから見守るだけで、経営に関与しない姿勢が問題をさらに悪化させている。彼らはこちらを全く見ていないので、家が火事になっているという事に気づくまでに時間がかかりすぎ、その間に無能さは増し、衰退がさらに進行する。
その最新の結晶と言ってもいいのが今回のスーパーリーグを巡るごたごただ。この件が、サッカー界歴史上もっとも恥ずべき残念な出来事であることは間違いない。
しかも、クロエンケはスーパーリーグ号が出発するのでおいていかれないように慌てて飛び込んだわけではなく、この茶番の中心人物なのだ。
だが、結果的にこの構想は、まるで12人の億万長者たちが自分の尻丸出しの写真を間違えてグループチャットに送信してしまったかのようなものだった。
スーパーリーグはスポンサーも確定しておらず、放映先も決まっておらず、これに参加することになっていた選手たちとの合意すら取り付けていない状態でいきなり公の場に放り出された。
このような劇的な変化をもたらすであろう構想のメリットとデメリットを吟味したような痕跡は見当たらず、単に無料のブログのようなホームページとフリー素材のようなロゴだけでの見切り発車だった。
アーセナルのオーナーがこのような惨劇的な出来事の首謀者だとは、なんと誇らしいことだろう。
何よりも、このような計画が発表されてから2日後に頓挫していしまうというのが、いかにこの構想が無計画なものだったかというのを表している。
この12人に任せていては、ビール醸造所で飲み会を企画することすらできまい。サッカーリーグの離脱などなおさら無理だ。
アーセナルがこのようなスーパーリーグをなぜ必要したかというと、クラブ運営があまりに酷く、国内リーグで成績を残せなくなったので、成績に関わらず収益を上げられる枠組みが必要だったわけだ。
2019年にジョシュ・クロエンケはアーセナル公式チャンネルのカメラを親密な様子でのぞき込み、『我々はヨーロッパリーグクラブの予算しかないのに給与はチャンピオンリーグレベルのものを支払っている』と宣言したが、いったいこれは誰のせいだというのだろうか?
このような言葉は、一生安全地帯で過ごせることが保証されている人物だけが真顔で話せるような内容だった。
『この居酒屋は我々が火を放ってしまったので運営にかなり予算が必要です』というようなものだ。
スタン・クロエンケがなぜアメリカで今のようなやり方でクラブを運営しているかは理解できる。アメリカ流の仕組みであれば、それが可能なのだ。
そして、結局彼の最終目標はイングランドサッカー界も今のアメリカのような仕組みに変えてしまい、自身の所有する"フランチャイズ"で同じことが出来るように、というものなのだろう。
アーセナルのこれまでの歩みを見るに、このような経緯でKSEが動いてきたのは明らかだ。
だが、私を驚かせたのは、クロエンケがこの計画を実際に遂行する能力が思ったよりもはるかに低く、全ての局面で決断を間違えたことだ。
彼の動機や、何を望んでいるかを考えれば、このような方針をアーセナルでとったことは驚きではないが、ここまでそれを下手にやってのけようとしたのはサプライズだった。
ファンとの関係はもはや修復不可能なまでに壊れてしまっており、さらにアーセナルと他のプレミアリーグやヨーロッパのクラブとの関係性すら悪化している。
スタッフを救うためにという名目で給与カットを選手たちに受け入れさせながら、裏でこのような巨額の金が動く計画を進めていたとは。
私はこれまでにアーセナルに苛立たせられたことは何度もあるし、今後もあるだろうが、アーセナルファンであることが恥ずかしいと思ったのは、今回が生まれて初めてだ。
このスーパーリーグというのは完全無欠なまでに滅茶苦茶で、この責めはたった一人が負うべきだ。
クロエンケアウト。
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ディスカッション
コメント一覧
上手くいってないのは明らかですが、ヒルウッドら旧経営陣で何かかわったでしょうか
たしかウスマノフのような得体の知れない全体主義のオレガリヒより、身元がはっきりしているクロエンケのほうが好意的だったはずです
低迷期の原因としてしまうその感情はプライドからでしょうか、勝てれば誰でもいいでしょうか、それは価値観と呼べるでしょうか
強引なやり方で買収した訳でも、縁起かついでアーセナル・ドラゴンズに変更した訳でも、息子の友人の左官工を強化部長にした訳でもない
むしろ何もしない、注意を払われない、何を考えてるかわからないことが苛立たせるのでしょうか
合理的ならば躊躇ない怖さは確かにあります
投資を口実に近づいてきたにも関わらず、
むしろこれまでは何もしないことが合理的だった
低金利による負債の借り換えなどは躊躇なくする訳です
CLが経営を左右する本質的な問題を解決する手段のひとつがスーパーリーグだったのでは
当然プレミアとの両立はかるのが合理的
まずは既成事実からなし崩し的に課題を解決していく
終わったことですが本質的な問題は何もかわらない
たしかラムズはスーパーボール出てましたよね
競争力維持は合理的な判断になるでしょう
スポーツ投資の長期保有ですから低リスクで10年後に資産価値が何倍になっているか
一方ファンの一度抱いた感情はなかなかかわれない
ヴォルフガングファイヤージンガーさん
よくこの結果で、クロエンケを擁護できますね。
ロシア人や中国人が胡散臭いと言われますが、クロエンケやアメリカ人がいつも正しいと判断されるのが理解に苦しみます。
アブラモヴィッチは、オルガリヒの代表格ですよ。確かに、アメリカ人の基準からしたら、胡散臭いかもしれません。
では、この十年で、クロエンケとアブラモヴィッチの残した結果はどう判断されますか?
いまや、子供たちの間では、こう言われていますよ。
アーセナルって、チャンピオンズリーグ出たことあんの?
アーセナルって、プレミアリーグ優勝したことあんの?
ここまで、クラブの価値を貶めているオーナーを擁護する理由が分かりません。
結果がすべてとは言いませんが、貴方の意見には100%賛成しかねます。