クロエンケにはもう飽き飽きだ 前編
最初から、私がKSEあるいはスタン・クロエンケを好きにはなれないだろうというのはわかっていた。アグレッシブなベンチャーキャピタリストというのは私が普段温かな感情を抱くようなタイプの人間ではない。
もし彼らが明日アーセナルを売却するとしても、彼らの思い出にグラスを傾けるようなことがないのは断言できる。もちろん、アーセナルの次のオーナーになる人物に対しても、歓迎の歌を歌ったりなどといったことはないわけだが。
最初からKSEがファンのクラブへの愛を試すような決断をいくつか行うだろうというのはわかっていたことだ。そして、かなり昔の段階からクロエンケの頭の中にスーパーリーグ構想があったのは間違いない。
ガジディスとサンジェイというクロエンケが雇った二人の人物はスーパーリーグに関わっていた。
サンジェイのアーセナルのサッカー長任命こそがKSEのアーセナルの管理を象徴するような出来事だった。彼のサッカー界の幅広い人脈を、アーセナルに新たな将来をもたらすことに使うのではなく、スーパーリーグ創立に活用しようとしたのだから。
最近のAthleticのポッドキャストで、ビリオネアズクラブの著者であるジェームズ・モンタギューがゲストに呼ばれていたが、今回のスーパーリーグ構想を主導した可能性が最も高いのはスタン・クロエンケだろう、と語っていた。
『彼がラムズの本拠地をLAに移す直前にセントルイスを訪れたことがあるんだが、アメリカの一つの町全体がNFLを嫌わせるとは、ある意味凄いことだよ』とコメントした。
KSEのアーセナル運営のうち、予想通りだったこともあるが、1点予想していなかったことがある。それは彼らが無能だったということだ。
皮肉なことに、最初にスタン・クロエンケがオーナーになると聞いて私が危惧したのは彼らがアーセン・ベンゲル(当時はまだなかなか高い評価を保っていた)のやり方に介入するのではないか、という事だった。
彼らがベンゲル流のやり方にとっての障害になるのではないかと思ったのだ。だがすぐにアメリカのアーセナルファンの友人から、それは全く心配の必要はない、と聞かされた。確かにその通りだった。
だがそれでも、私は彼がもっと決断力をもってクラブを運営していくだろうと思っていた。ファンからの評判は良くなくても、ビジネス面/スポーツ面では筋が通った毅然とした決断をいくつか下すのではないかと思っていた。
彼らがアメリカで平凡なクラブをいくつか所有しているとは聞いていたが、すぐに、彼らがアーセナルを3-4位争いから上に押し上げるつもりなど毛頭ないことがわかった。
だが、この時点でもまだ、KSEは何もしなくても悪くない立場に留まれるアーセナルに満足しているのだろう、と考えていた。
だが、いざアーセン・ベンゲルの魔力が失われてみると、KSEがクラブ運営がいかに下手であるかというのには驚かされた。サッカークラブを運営する上での決断は失敗ばかりだった。
彼らが多くのスポーツクラブを他にも抱えているというそれだけの理由で、彼らは賢い運営をするのだろうと勝手に思い込んでいたが、スタン・クロエンケのアーセナル運営のやり方は大惨劇だ。
少し静かに思い返してみて欲しい。KSEがアーセナルのオーナーとして、何か一つでも先見の明のある素晴らしい決断を下したことがあっただろうか。
渡しには一つも思い当たらない。
しいて言うのであれば、StatDNAの買収は、理論上は悪くない案だったはずだが、控えめに言ってこれはそこまでうまくいったとは言えない。
私自身は、クロエンケが沈黙を貫くこと自体はそこまで問題だとは思っていなかった。なぜなら、多くの嘘を聞かされてもしょうがないからだ。
実際のところ、クラブ運営の『専門家』を雇い、自身は経営の直接関与せずアーセナルの運営を任せるというのも悪くはない考えのはずだ。
ただ、問題はKSEはそのクラブの運営を任せるべき専門家の選定が下手すぎるという点だ。
(後編に続きます)
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