【戦術コラム】アルテタアーセナルの攻撃の仕組みと課題を徹底分析 後編

スタッツ・戦術海外記事

前編・中編はこちら:

ファイナルボール

ファンから大手メディアに至るまで、アルテタアーセナルが攻撃においてクロスに頼ることが多いというのはありとあらゆるところで話題になっている。

問題は、アーセナルのクロスは、B級映画でモブキャラの悪役が主人公のヒーローに向けて放つ弾丸と同じくらい効率が悪い、という点だ。

もちろん、クロスに頼ること自体が問題というわけではない。

近年のリバプールとシティが示している通り、クロスを効果的にするには必ずしもピーター・クラウチが何人か必要、というわけでもない。

この2チームはスペースの上手い活用とボックス内に人数を多く送り込むこと、良い走り込み、そしてよりゴールに近い位置からのカットバックを駆使してクロスからハイクオリティのチャンスを生み出している。

だが一方で、アーセナルのクロスは中での動きに乏しく、かつ相手の守備陣が大人数で待ち構えている所へ遠くからクロスを放り込むことが多いので効果が薄い。

時折サカやティアニーが非常に効果的なクロスを見せるが、大部分はあまり効率が良いとは言えないものだ。

特に浮き球でのクロスが多いのはアーセナルにとって問題で、FW陣が特に空中戦が得意とは言えず、かつボックス内にアーセナルの選手が多く送り込めているわけでもない状態でオーバメヤンやラカゼットに空中戦を挑ませても、単に相手のGKの手に収まってしまうだけだ。

(アーセナルのクロスが相手GKにカットされる割合はリーグワースト2位)

攻撃をクロスに頼るにもかかわらず、そのクロスによる攻撃が効率的ではないおかげで、アーセナルは高価な代償を支払っている。

一試合平均でアーセナルは不正確なクロスから16.6度ボールロストがあるが、つまりこれは、相手陣の深めの位置で16.6回もそのチャンスをふいにしているということだ。

そもそもアーセナルがボール前進に苦戦していることを考えると、せっかく前に運んだボールをこのような形で失ってしまうのは大きな問題だ。さらに、これらがラインを割らなかった場合はもれなく相手にカウンターの機会を与えることにもなる。

そもそもオーバメヤンとラカゼットがクロスに合わせるのを得意としているタイプのFWなのか疑問の余地がある(2014年からの彼らの得点のうちクロスからのものが占める割合は12%程度しかない)し、恐らくこの二人は中央からの縦パスを受けることのほうが慣れ親しんだもののはずだ。

ただ、恐らくだがアーセナルのクロス偏重は問題点そのものというよりも、むしろチームの抱える問題点の症状だろう。

例えば、過去にマンチェスター・シティの得点源となったカットバックの典型的な形というのは以下のようなものだ。

あるいはこちら。

マンチェスター・シティがクロスを入れるのは、味方の前に広大なスペースがある場合か、ポゼッションの結果としてゴールに近い危険なエリアにたどり着いた場合だ。

これが、アーセナルの課題、危険なエリアにボールを進められないことと、相手のブロックを動かすことが出来ないことと密接に関係しているのがわかるだろう。

結局のところ、なぜアーセナルがスパーズ戦で44本もクロスを入れ、そしてそのうち9つしか成功しなかったかというと、スパーズがコンパクトなブロックを固め、アーセナルにはゴールに近づく方法がクロス以外になかったからなのだ。

クロスどうこうというより、アーセナルはこのような状況下で別の解決策を見つけ出す必要がある。

セットプレイに関して

アーセナルは夏にブレントフォードからセットプレイのスペシャリストコーチであるゲオルグソンを招へいしたものの、攻撃面に関しては、セットプレイから多くのチャンスを演出し始める、という様子はない。

アーセナルの一試合当たりのセットプレイからのシュート1.1というのはリーグワースト2位だ。

まず、コーナーキックに多くの改善の余地があり、正確に味方に繋がる割合が17.4%というのはリーグワースト2位だ。アーセナルはコーナーにかなり人数を多くかけることが多く、リバウンドを奪取することでカウンターを避けるという作戦なのだろう。

ボールの軌道や選手の動きなど、アプローチに違いはあるものの、アーセナルの基本的なテンプレートは共通しており、1-2人がゴールエリア内に、4-5人がペナルティエリア中央に、そして最低でも1人をエリア外に配置し、そしてショートコーナー用のオプションも1人、という形だ。

アーセナルのコーナーの多くが下の画像の色のついた部分を狙って入れられる。

そして、インスイングの(ゴールに向かっていく)ボールでゾーンディフェンスの相手には、ゴール前に多くの選手を固めるという作戦をとることが多い。

我々には実際にアーセナルが練習場でどのようなトレーニングをしているのかする術はないが、アーセナルの選手たちはボールが入れられたタイミングで外に広がりながら前に入る動きを見せることが多い。これにより、選手一人ひとりのスペースを増やすという狙いなのだろう。

既に述べた通り、2番目のルーティーンは恐らくゾーンディフェンス対策で、この場合はサイドと逆足の選手がキッカーを務めることが多い。

また、スローインに関して言うと、アーセナルの選手たちはボールが投げられる直前にポジションを入れ替えながら走り出す、というパターンが多い。

スローインは助走なしで行われることが多く、これはより正確なスローイングを可能にする。

私はセットプレイの分析、あるいはコーチングの専門家ではないので、これ以上そこまで多くコメントすることはないが、攻撃面でFKとコーナーに関して大いに改善の余地があることだけはわかる。

アーセナルの今後は?

アーセナルにはいつだって、人々をワクワクさせるものがある。歴史、才能豊かな選手たち、ファン層、ブランド、スタイル。これは今日のアーセナルにも当てはまるものだ。

チームの今後を支えていけるサカやティアニー、スミス=ロウ、マルティネッリ、ゲンドゥージ、ウィロック、ネルソン、エンケティア、サリバ、アズィース、バロガンなどなど多くの若手がいる。

しかしながら、ここまで落ちてしまったクラブが復活を遂げるのは易しいことではない。今のスカッドはチームに貢献できないが人数は多く、史上最高額クラスの給与を支払っている。

失敗に終わった短期的な決定によりベテランに高給を支払っているし、ゲンドゥージやサリバといった若手が干されているのも懸念だ。

簡単ではないだろうが、今のアーセナルは戦術面でいくつか対処しなければならない点があり、これはブラントやブエンディアのような選手の獲得が力となってくれるだろう。

今のヨーロッパサッカー界のトップレベルの競争の激しさを考えれば、ほんの少しの差がかなり大きな影響を与えるかもしれない。

どちらにしろ、あなたがどのようにアーセナルを見ているにせよ、それが退屈になるということだけはないだろう。

Source:

スポンサーリンク

関連記事(広告含む)

Posted by gern3137