ウィリアンとラカゼットの不調の原因を探る 前編
ラカゼットとウィリアンの二人が調子を落としている、あるいは思ったような活躍を見せられていないことに疑いの余地はない。
もちろん、彼らの年齢を考えれば不調というより単なる衰えの始まりという可能性もなくはない。ミケル・アルテタのファーストチョイスの前線が29歳、31歳、32歳の選手で構成されているというのは大きな懸念点だ。
これらの選手にアーセナルは給与面で向こう数年間にわたって大きな投資をしている。
先日ローリー・スミスがニューヨークタイムズに非常に興味深い記事を書いていた。パトリック・バンフォードの台頭を例に出し、彼の主張は、トップレベルのサッカー選手たちは皆遜色がない程度の良い選手であり、彼らどうしの違いは非常に小さい、というものだ。
しかし、選手の調子というのはしばしば外部の要因によって決定される。監督や、チームのセットアップ、チームメイトとの関係、クラブでの人間関係がうまくいっているか、などだ。
つまるところ、サッカーはチームスポーツであり、自動的にチームがその選手に合わせて構築されるようなほんの一握りの宇宙1クラスのタレントを除けば、どのようなチームでプレイするか、そして周りを囲む選手とのシナジーに大きく影響される。
もちろんこれを理由にウィリアンとラカゼットが不調になど陥っていないというつもりはないし、当然彼ら自身にも責任の一端はある。
だが、彼らの不調がなぜここまで注目されてしまうのかに関しては、考えてみる余地があるように思う。
個人的には、ラカゼットの衰退の大きな要因の一つはメスト・エジルとアーロン・ラムジーというライン間でプレイできる二人のキープレイヤーがチームからいなくなったことだと感じる。
ラカゼットは常に前線から降りてきて中盤の選手と連携することを好むストライカーだった。相手の中盤と最終ラインでの壁パスなどのパス交換ができるエジルとの相性は良かった。
また、ラムジーは前線への走り込みからラカゼットの特性を生かせる選手だった。Orbinhoによる以下の図を見てほしい
Lacazette’s average position is so deep – there’s no focal point for Arsenal’s attack. pic.twitter.com/zkvofY0dxo
— Orbinho (@Orbinho) November 9, 2020
ラカゼットは前線からセンターサークル付近まで下りてくるタスクをこなしているが、その先彼はどうすればいいのだろう?誰と連携すればよいのだ?
通常であればこのようなゼロトップ型の形はラカゼットが空けたスペースに走りこむ選手がいてこそ有効となる。だが、このような走り込みはアーセナルで行われておらず、ラカゼットは誰とも連携できないコネクターになってしまっている。
誰もラカゼットが下りてきたところの裏に走りこんではくれず、サポートにも来てくれない、彼のプレイが楽になるように相手DFを一人か二人引き付けてくれる選手すらいない。
また、彼が今季何本かよいチャンスを逃しているのは事実だが、それでもチーム内得点王ではある。レスター戦とヴィラ戦でヘディングを外している(ウエストハム戦では得点しているし、レスター戦でも取り消されたとはいえ決めているのだが)が、チャンス創出に苦しむ今のチームで唯一それなりの数のチャンスに顔を出している選手でもある。
シュートのミスという点においては、我々サッカーファンは"チャンスを外す"ことが当たり前だという認識を持たなくてはならない。
xGが0.5を超えるチャンスというのは非常にまれなのだから、基本的にはファンから見て決めて当然のように見えるものでも、実際には外れる可能性の方が高いということだ。
だからこそ、チャンス創出やシュートを何本打てるかが大切となるのだ。
ハリー・ケインは今季36本のシュートから8得点を挙げているが、モウリーニョが注目するのは8点を挙げているという点だろうか?それとも28本を外したという点だろうか?
アーセナルにおける問題点は、チーム全体として作り出すチャンス数が少なすぎるため、たった一つのシュートミスが試合の勝敗に直結するように感じられてしまうことだ。
そして、現状ゴール前にいることがある選手がラカゼット一人となっているため、アーセナルが作り出すほとんどのチャンスがラカゼットの前に転がることとなる。
上述の通り、前にはシリコンでラカゼットの前からDFをどかしてくれるMFはアーセナルにいないし、もともとラカゼットはヘディングがそこまで得意な選手でもない。
したがって、そもそもなぜアーセナルはラカゼットへクロスを上げるようなチャンスばかりを作り出すのか、という点を問わなくてはならない。
ラカゼットは誰からも感謝されないタスクを任されており、彼が自信を喪失するのも当然だ。
(後編に続きます)
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