アルテタは早急にアーセナルの攻撃を改善しなくてはならない
監督としてのミケル・アルテタを見た時に、過去の実績がない、というのが彼のチーム作りを非常に興味深いものにしている。
エヴァートンでカルロ・アンチェロッティがどのようなサッカーをしようとするか、あくまで大まかにだがある程度の想像はつく。現有戦力の力を引き出すのに最も適したシステムと方針を起用するのが彼の方針だし、この夏にアンチェロッティは二人過去に指導経験のある選手を獲得した。
モウリーニョの3年サイクルは有名になりすぎていて、我々はもうそれが訪れるのを待ちきれないし、スパンに多少の変化はあるにせよ、後から振り返ってみれば、彼らしい采配を見せることが多い。
噂では、グアルディオラのインテンシティも何年か経つと選手には負担となりすぎるためうまくいかなくなるそうだ。
いずれにせよ、我々サッカーファンはピッチ上の事象を見て判断するよりも、監督のタイプに関する理論から演繹を行う傾向にある。
アルテタにはそのようなバックグラウンドのストーリーが存在しない。グアルディオラに師事していたので彼と似たスタイルを目指すのではないか、というのがあったくらいだ。
だがアルテタがアーセナル監督に就任してからそろそろ10か月がたち、我々は彼のアーセナルにどのようなことが期待できるのかがわかってきつつある。
アルテタは恐らくアーセナルの最優先課題と言っても良かった最初のハードルをクリアした。チームをよりソリッドで組織立ったものにし、アイデンティティを復活させたのだ。
ウナイ・エメリがついに越えられなかったこのハードルをアルテタは既に越えており、かつての守備の脆かったアーセナルの姿はもうどこにもない。これに関して彼は賞賛に値する。
一方で、私はアーセナルの攻撃のやり方に関して少し前から不安を感じている。今季ここまでのアーセナルの一試合平均シュート数は8.2で、ウエストブロムとクリスタルパレスに次いでリーグワースト3位だ。
ガナーズは今季最も難しい二試合と言ってもよいアンフィールドとエティハドの試合を既に消化しているというのはあるが、それでもこれはずっと昔から続いているトレンドだ。
昨季アーセナルは90分当たりのシュート数は10.7でリーグ15位という成績だった。このスタッツに色々な見方などは存在せず、シンプルに、この傾向は今すぐ変えなくてはならない。
アーセナルには50m£のストライカーが2人居て、72m£のウイングが居るのにたったの56ゴールしか決められなかったのだ。
とにかく一試合平均で15本程度はシュートを放てるようにならなければ、アーセナルがトップ4入り出来る可能性はほぼないといっていい。(昨季トップ4入りしたチームは全て一試合平均15以上のシュートを記録しており、5位のレスターがかろうじて届かない14.7だった。)
多くのアーセナルファンがアルテタは強固な守備を構築してから攻撃を作るつもりなのだ、と主張する(もちろんそれはある程度筋の通った意見でもある)が、単にそれは彼らの想像に過ぎない。アルテタに監督歴はなく、過去の経歴から予想することはできないからだ。
単純に現在のアーセナルだけを見て考えれば、攻撃で相手を圧倒するような道筋は全く見えていない。アルテタはいずれ攻撃も改善してくれるだろう、というのはただの希望的観測かもしれないのだ。
もちろんだからと言って、それに実現の可能性がないわけではないが、実際に証拠が見られるまでは希望的観測であることに違いない。
マンチェスター・シティ戦後に巻き起こった議論は非常に興味深かった。結果というよりむしろパフォーマンスを見るに、試合の大部分を通してアーセナルはシティ引退して一歩も引かない戦いを見せ、これは過去のエティハドでのアーセナルの姿と比べれば劇的な改善だ。
だが、それでもアーセナルは相手の守備陣を崩す明確なプランはなく、それは試合が進むにつれてより明らかになった。
ウィリアンのゼロトップ起用というのは策士策に溺れるという感があったが、それ以上にアーセナルを素晴らしい攻撃的チームに作り替える術がわからない監督が藁にも縋る思いでたどり着いた策なのかもしれない。
アルテタアーセナルの代名詞となった得点パターンはGKからストライカーまでシームレスにボールが流れるように渡るものだが、これには針の穴を通すような正確さが要求され、このパターンからアーセナルが得点を量産するのは無理だろう。
さらに、これは対策するのもそこまで難しいものではなく、シティはシンプルにアーセナルの左サイドをブロックするだけで良かった。現在のアーセナルの中盤には中央から危険な攻撃を繰り出せるだけの人員がおらず、右サイドにはボールすら渡らないので、アーセナルの攻撃中はペペもウィリアンもピッチに酒と雑誌でも持ち込みたい気分だろう。
トーマス・パーティがこれを変え、右サイドにボールを運べるようにもなるかもしれないが、この夏アルテタはフセム・アワール獲得も狙っていた。これは、アルテタが相手の守備ラインと中盤の間をつけるオプションの少なさに気付いているという証だろう。
もちろん、アルテタにはいくつか取れる選択肢がある。そのいずれもアーセナルを世界トップクラスのチームに変貌させるものではないが、ルイス・アンブローズが論じた通り、オーバメヤンの中央起用はその一つだ。
確かにオーバメヤンはポストプレイに少し何はあるが、そのデメリットと、今季ここまでオーバメヤンが一試合当たり1.2本のシュートしか放てていないという事実を天秤にかけるべきだ。
また、オーバメヤンを中央に移せばもう一人追加でクリエイティブな選手を起用することもできる。具体的には、サカを左ウイングで起用できるという事だ。
これにより、アシストが多い選手を前で起用でき、オーバメヤンは相手の守備陣を惑わせ続ける自由を与えられることになる。もしかすると、右に流れてペペやウィリアンと連携することもできるかもしれない。
そろそろアルテタはアーセナルの改革を一歩進め、攻撃面で効果的なチームにしなければならない。しかし、これは彼にとって計算が容易な方程式ではない。
彼はここまでチームにもたらした安定性を犠牲にせず攻撃力を上げることができるだろうか?今の守備陣と中盤の選手たちは、基本的にかつてアーセナルの足を引っ張り続けた選手たちと変わらないのだ。
ムスタフィとルイスがアルテタのもと別人になったわけではない。ジャカはより素早くプレス耐性が高くなったわけではないし、セバージョスも得点とアシストマシンになることはないだろう。
監督が彼らの弱みをさらけ出さないシステムを考え出しただけだ。恐らく、攻撃面を優先しようとすれば、かつての脆さ、古傷が再び開くだろう。
アルテタがいかにしてアーセナルの腹を爆発させることなく攻撃にスパイスを加えようとするのかは非常に興味深い。
アーセナルがより自信をもって攻撃できるチームに生まれ変わらなければならないのは明らかで、そのためには監督は何かを変えなくてはならない。
彼がどのようにこの問題に対処するかを見るのは楽しみだ。これこそがアルテタのアーセナルでの真価を測る本当のテストなのだから。
source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません