【戦術コラム】アーセナルがオーバメヤンを中央で起用するべき3つの理由 後編

スタッツ・戦術Lewis Ambrose,海外記事

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加速と何度も見せる走り込み

これはアーセナルの1点目の場面でまさにオーバメヤンが行ったことだ。まず最初にマークについてた相手DFの後ろに位置取ると、ゴールエリアに走りこんだ。

だが、ボールは彼に出なかったので、再び後ろに戻ると次の機会をうかがい、そのたった7秒後にまたしても前に走りこんだが、ここでもウィリアンは中にボールを入れなかった。

だが、これによりクリス・バシャムを警戒させることに成功した。この後オーバメヤンはエルネニーに寄って行きボールを受けるが、バシャムはオーバメヤンがまたしても裏へ走り込むのではないかと警戒しすぎて、彼にタイトについていくことが出来なかった。

だがここでオーバメヤンは単にボールを受け、サカへのアシストをするベジェリンにパスを出すことに成功した。

これがコンスタントに裏への走り込みにトライすることの効果だ。相手DFを疲弊させることが出来る。これらのオーバメヤンの走り込みに対して実際にボールが出る回数はとても少ない。そして、オーバメヤン自身もそれはよくわかっている。だが、相手が一度でも隙を見せれば彼は襲い掛かるのだ。

ボールが彼の方に出る可能性が少しでもありそうな場面が来るたびにオーバメヤンは生き生きと前に走り出した。

例えばこの下の場面では、大チャンスを迎えており、ペペのボールがオーバメヤンに届かなかったことはバシャムはラッキーだったといえるだろう。

ポジショニングの良さと圧倒的な加速が合わさって、オーバメヤンはこのような走り込みを見せる際に常に相手より優位に立つことが出来る。

日曜日には直接このような走り込みから得点にはつながらなかったが、オーバメヤンが中央でプレイするのであれば、チームメイトが彼の特性を学び、いずれこのような走り込みにパスを届けることに成功するだろう。

また、オーバメヤンはボールに寄らずにファーポストで待つことが出来るので、相手がサイドにプレスに来れば、相手守備陣の隙間を作り出すことが出来る。そして、このような隙間が現れたとたんにオーバメヤンは走り出すというわけだ。

ただ不運なことに、中央に位置したオーバメヤンとのプレイ経験がないウィリアンは彼の動きを読み間違えてしまい、オーバメヤンが求めるところにボールが届くことはなかった。

だが、オーバメヤンにとって多少のミスは関係ない。彼は常にこのような走り込みを繰り出しているからだ。裏でボールを受けられずサイドに展開されればそれに合わせてまたもう一度走りこむだけのことで、オーバメヤンの瞬発力だけではなく思考の早さがこのようなプレイを可能にしている。

相手を押し広げ、頭上を越したボールに走りこむ

最近のアーセナルファンはラカゼットのように、中盤に居りてくるタイプのストライカーを観るのになれている。だがもしアーセナルが3人を中盤に起用できるのであれば、ストライカーが後ろに居りてきてボール運びを助ける必要性は薄い。

オーバメヤンは下がるよりも相手守備陣の後ろに走っていくプレイを見せることが多いだろう。

ボックス内への走り込みと同じように、オーバメヤンはより低い位置からでも、機会さえあれば頭上を越していくロングボールに備えて裏への走り込みを狙っている。

同じくこの試合ではチームメイトの誰も彼にボールを通すことは出来なかったが、やはりこれはセンターフォワードがこのようなプレイを見せることになれていないことが大きいだろう。

現在のプレミアリーグでは前からプレスに来るチームも多いので、これはガナーズんじとって大きな武器となるはずだ。

相手がハイラインを敷けばオーバメヤンに裏を取られるリスクが増すし、逆に彼に合わせてラインを下げれば、よりスペースが与えられアーセナルがボールを前に進められる可能性は高くなる。

またオーバのこのような動きは非常に利他的なプレイで、チームを危険なエリアに進める役に立つ。

自分がボールを足元でボールをもらうのではなく、裏に走るような動きを見せることで相手の守備陣を押し広げることになるからだ。

オーバメヤンについていこうとすればアーセナルのカウンターへの対処は遅れることとなり、ボールを持った選手あるいは他の選手がそれにより空いたスペースに走りこむことができる。

(オーバメヤンが裏へ走る動きを見せたことでティアニーらにスペースが生まれた例)

チャンスという意味ではこれらの走りは全て無駄に終わったが、これによりアーセナルの攻撃は危険度を増し、よりバリエーション豊かな攻撃が展開できるようになった。

オーバメヤンのボール保持者から離れていく知的な走りは2点目のペペのゴールにも貢献している。

下の場面では、最も分かり易いのは右前に向かって走ることだが、オーバメヤンはその代りに左に走ることを選択し、彼のマーカーをペペからより遠い位置に誘導、ペペのゴールへの道は開けることとなった。

ヨハン・クライフはかつて『私は1対1の状況を好む。したがって、私にとって味方を助けるとは私から離れていってくれることなのだ。だが何故か多くの人が近寄っていくことだと思っている。』と語ったが、まさにその通りで、ペペもまた1対1を好む選手だ。

多くのアーセナルファンがアルテタはもうオーバメヤンを絶対に左で起用するものだと思い込み、オーバメヤンのベストポジションを巡る論争は下火になっていたが、この日のパフォーマンスを見てアルテタも中央での起用をオプションとして考え始めたはずだ。

確かにゴールに背を向けた状態でのポストプレイなどは素晴らしいとは言えないが、中央でもインパクトを残せるし、何より非常に危険な存在となれる。

アルテタのオーバメヤンに加えてもう一人のゴールスコアラーを起用するという方針は筋が通っているが、オーバメヤンの走り込みを戦術の中心に据え、追加でもう一人のクリエイティブな選手を起用、チャンス数を増やすという方策も手かもしれない。

マンチェスター・シティ戦ではオーバメヤンはまた左サイドに戻るのではないかと思うが、アーセナルがてこずる傾向にある中位下位相手の試合では、オーバメヤンの中央起用が攻略の鍵となるかもしれない。

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Posted by gern3137