アーセナルとマンチェスター・シティが左CBに左利きの選手を起用する理由

スタッツ・戦術

この夏、マンチェスター・シティとアーセナルがそれぞれネイサン・アケとガブリエル・マガリャンイスという左利きのCBを獲得し、サウサンプトンがまだ若いサリスになかなかの額を支払って獲得したことからもわかる通り、近年左利きのCBは移籍市場で希少な存在として評価される傾向にある。

シティとアーセナルは左利きのCBの控え要因も揃える事にこだわっていたようだし、アルテタに至っては左利きのパブロ・マリの怪我もあり、守備の適正が高いとは言えないコラシナツをCBで起用しさえした。

先日レスター・シティやイングランド代表が右利き11人で構成されたチームを送り出していたように、スタイルによってはCBの効き足を重視しない場合もあるが、後ろからのビルドアップを重視するチームにとっては左CBに左利きのCBを起用することは大きなメリットがある。

サッカーのプレイ経験があれば、こんなことわざわざ言われなくても当然ではないか、と思う方もいるかもしれないが、今回はグアルディオラやアルテタがこだわる左利きのCBの起用にボールを繋ぐうえでどのような利点があるのか解説していこう。

パスの軌道①

恐らく一番分かり易いのはパスの軌道で、技術が高い選手であればほぼ直線のようなパスや、アウトサイドで逆側に曲がるボールも蹴れなくはないが、基本的には短距離のパスを除いて、ボールを蹴ると利き足に応じて少しカーブがかかる(右足で蹴ると左、左足で蹴ると右に少し曲がる)。

縮尺的に少し誇張されているかもしれないが、右足では上図の白い軌道、左足では黄色の軌道のようなパスとなる。

基本的には相手は内側から追ってくることが多いので、この際右足でのボールの方が相手近くを通ることになり、少しのミスで相手にインターセプトされる可能性がより高いのが見て取れると思う。

パスの軌道②

また、左足でのパスの軌道の利点は内側の選手にインターセプトされづらいというだけではない。

右足から放たれたボールはピッチの外に向かっていく軌道を描きやすいため、上図の場面で左サイドバックの選手が前のスペースに入るためには一度パスをトラップして自分で前に運ぶ必要がある。ボールに触らなければ、そのままボールはスローインとなってしまうからだ。

だが、左足から放たれたボールは中に入っていくような軌道なので、すぐにコントロールしなくともピッチ外に出て行ってしまうようなことはなく、自由なタイミングで触ることができる。

また、パスに十分な威力があればそのまま縦に走りこむこともできるはずだ。

例えば上図のような場面で丸で囲まれたスペースに入ることができれば、その更に右前にフリーの選手がいるのでチャンスにつながるはずだが、右足で直接狙おうとすると間にいる相手選手にカットされる可能性が高いし、安全につながるコースを選択すると、左SBがワントラップして自分で前に進めてもらう必要が出てくるので、そのころには相手選手が追い付いてくる可能性がある。

また、同じようなことは地上でのパスだけではなくロングボールにも言える。ある程度のキック精度があることは前提となるが、上のような場面で裏へのロングパスを通そうとした際に、右足からのボールは外へ逃げていくので、シュートに持っていくためにはやはり一度コントロールしなければならない。

だが、もし左足から高精度のロングボールを放てる選手が居れば、中に向かっていくボールでいきなりGKとの一対一を演出できたりする可能性がある。

もちろん、細線の矢印で示されている通り、そこまでの自信がなければより安全にコーナーフラッグへ向けたパスを選択することも可能だ。これであれば、相手選手の頭上を越していくような軌道のパスを選択する必要はない。

体の向き

また、より低い位置でのボール回しに話を戻すと、パスの軌道だけではなく、ボールを受ける時の体の向きの違いも重要となる。中央左寄りの位置でGKあるいは右CBからのパスを受けるような場面を想定してもらえるとわかりやすいだろう。

このとき、基本的にはパスに向かって少し動きながら、あるいは少なくともボールがやってくる右側を向いてボールを受けることになると思うが、当然右利きであればボールのコントロールも右足の方が行いやすいし、ボールを受け取る時に上図のような角度になる場面が多い。

こうなってしまうと、大外の左の選手がフリーなのだが、素早くそちらにパスを出すのは難しく、向きを変えたりボールを左に運んだりするワンクッションが必要となってしまう。そのため、もし相手のプレスが迫っていた場合はボールを右CBに返すか、GKへという選択が多くなってしまうだろう。

一方で、左利きの選手であれば、左側に体を開いてボールを受ける、ということが遥かに容易だ。左利きのCBであれば、このボールをそのままダイレクトで左SBに出すこともできる。(もちろん予め細かく角度に気をつければ右利きでも出来るとは思うが)

これらの一つ一つは右利きでも技術次第で何とかなるものなのかもしれないが、やはりよりスムーズにパスを受けることができ、そしてその後放つパスも左足から放たれる方がより効果的、ということでアーセナルやシティといった後方からのビルドアップを重視するチームは左利きの選手をCBに起用することにこだわっているのだろう。

あまり深く考えたことはなかったが、確かに、こうやってまとめてみるとなかなか大きな利点のように感じられる。

今のところイングランドではそこまで多くない印象だが、後ろからボールを回すチームが増えていくのに伴って、今後も左利きのCBは増える、あるいは左利きの選手をCBにコンバートするようなケースは増えていくことになるのかもしれない。

参考:

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Posted by gern3137