ウィリアンがアーセナルにもたらすもの

分析

フラム戦のメンバー選考で最も注目されていたのはゴールマウスを誰が守るかだったが、監督は前線にもう一つのジレンマを抱えていた。

ウィリアンのフリーでの獲得はこの夏最も注目された移籍だが、一方で彼のポジションはついに右のインサイドFWとしてチームでの立場を固めつつあったペペと被っている。

もちろんスカッドの層が厚いのは良いことだが、ウィリアンの獲得は、ペペはアルテタにとっての理想の右ウイングではないかもしれないという事を示唆していた。

痛み止めの注射やテーピングをしてでも出場させなくてはならない、といったタイプの選手がどのチームにも何人かはいるもので、アーセナルで言えばオーバメヤンとジャカがその例だろう。

本来であればペペに支払った72m£という移籍金は『何が何でもプレイ』のカテゴリーに選手を入れるはずだが、彼はそこまでの地位には今のところ達していない。

そして、アーセナルがウィリアンに支払う給与を考えると、ペペが将来的にその位置に達するかどうかも怪しい。

もちろんそれでもペペは多くの試合をプレイするアーセナルにとって重要な選手となるだろうが、アーセナルファンは一旦彼に支払った移籍金から見るにペペがチームの中心になるだろうという考えを捨てる必要があるかもしれない。

実際のところ、アーセナルが史上最高額の移籍金で獲得した選手の多くはこのようなキャリアをたどった。マルコム・マクドナルド、シルヴァン・ヴィルトール、レジェスにアルシャビン。

彼らの獲得は失敗だったというわけではないが、支払った移籍金からファンが期待したほどの活躍は皆出来なかった。

もちろんシーズンはまだ初戦が終わったばかりで何も決定的なことは言えないが、私はフラム戦でのウィリアンのパフォーマンスは非常に興味深かったと思う。

以前指摘した通り、彼は横幅を保って相手サイドバックを孤立させることが出来るので、フラムより強固なブロックを作ってアーセナルに対応しようとするチームに対処する際には有効だろう。

だが、それ以上にウィリアンをアルテタにとって有用な選手にするクオリティがある。

ウィリアンをイングランドに最初に連れてきたのはチェルシー時代のモウリーニョで、彼はその後も何度か自身の元にウィリアンを呼ぼうとした。

何故彼が底までウィリアンを気に入っていたかというと、ウィリアンはチームに枠組みをもたらせる選手だからだ。彼は監督の指示によく従い、プレスや自陣への帰陣をサボらない。

実際のところ、チームに枠組みをもたらすことこそがウィリアンのキャリアのテーマだったといってもいい。ブラジル代表では、ピッチ上をふらつく自由を与えられたネイマールの逆サイドでチームのバランスをとるのが役目だった。

攻撃時にはオーバーラップするダニ・アウヴェスと連携して攻撃を作り、左でネイマール、コウチーニョとマルセロがジャズのような自由なサッカーを展開する一方で、右では戦術的な攻撃を仕掛けた。

彼はチームのリズムを作る選手で、チェルシーでは自由を与えられたアザールの逆サイドで似た役割をこなした。

アーセナルでも同じように、ウィリアンは攻撃が左サイド偏重のチームにいきなり放り込まれることとなった。オーバメヤンは左サイドでプレイするFWで、ネイマールやアザールのようなドリブルはないが、左サイドを離れスポットライトの当たる舞台に飛び込んでいくという点では共通している。

ネイマールがリードギターだとしたらオーバメヤンはボーカリストのようなものだ。だがウィリアンとしてはどちらも同じことだろう。どちらにせよ、彼は主役のためにリズムを整える役を担う(ラカゼットも同じくリズムと)

アーセナルのお決まりの攻撃パターンのようになったフラム戦でのオーバメヤンのゴールでウィリアンが何の問題もなくキラーパスを放てていたことが象徴的だった。

アーセナルで一週間程度しか練習時間がなかったにもかかわらず、即座にチームの約束事に従いプレイを見せることが出来る。何度も言うが、これがモウリーニョとティテが彼を高く評価した理由なのだ。

また、彼は素晴らしいキック精度でセットプレイのキッカーとなれることも示した。セットプレイコーチの招聘と夏にアーセナルが長身のCBを加えたこともあわせて、これはアーセナルの強みとなるかもしれない。

昨季アーセナルは4位に勝ち点10を離されていた。下位のチーム相手の取りこぼしを減らし、セットプレイの改善はその差を埋めるのに貢献してくれるだろう。

ウィリアンは伝統的なウイング的な能力だけではなく、中盤にバランスをもたらすことも出来るはずだ。もちろんルイスがコラムで指摘した通り、3バックだからと言ってアーセナルが中盤を二人しか起用できないというのは少しシンプルすぎる見方だが、ただ第三のMFの役を果たすことが多いのはナイルズであることも事実だ。

フラム戦で示した通り彼は中に入ってのプレイも可能で、まるで3人目の中盤のような役割を果たせる。彼はペペよりも低い位置でボールを受けても仕事ができるので、中盤と前線をつなぐ役目をより効果的にハスことが出来る。

そして、右サイドのベジェリンとメイトランド=ナイルズのオーバーラップ、またはアンダーラップを活かすことが出来るはずだ。(セドリックにも同じことが言えるかもしれないがそれを判断できるほどまだ私は彼の姿を見られていない)

ペペはボールを送り届けてやるべき選手だが、ウィリアンはボールを供給する側の選手なのだ。ガナーズが最近獲得したサリバ、マリ、ガブリエルの3人のCBの所属元のチームは皆サイドから組み立てを行うチームで、結果として彼らは皆斜めのロングパスを得意としている。

恐らく斜めのボールが得意な左利きのCBによる右ウイングへのパスはアーセナルの攻撃のトレードマークとなるだろう。

そして興味深いことに、ウィリアン自身もまた逆サイドへロングパスによる展開が出来ることをフラム戦で示した。

まだ期待しすぎるのは禁物だが、左利きのCBの獲得とウィリアン獲得は明確なチーム作りのプランに基づいているものに見える。

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Posted by gern3137