xG(得点期待値)を上回り続けるオーバメヤンの話

スタッツ・戦術

シーズンプレビューのポッドキャストで、私とエリオットはオーバメヤンとxGについて話をした。オーバメヤンが昨季xGをはるかに上回る点を決めてくれたのはアーセナルにとって非常にありがたかったが、今季はそれを継続する可能性は低いだろう、という文脈でだ。

もちろん我々は今季もオーバメヤンがポジティブな活躍をしてくれるだろうと楽観的だったが、それでも今季の彼の得点は昨季ほどにはならないのではないか、という見立てだった。

これにはなかなか多くの批判が寄せられた。

まず第一にそもそもxGという指標自体が完璧ではなく、選手がxGを上回って得点することはよくあるものだ、という指摘だ。これは今回のケースに限らずxGという指標データ全体に対するものだが、もう一つは単純にオーバメヤンは優れた選手で、だから彼はいつもxGを超えた得点をいつもあげられるのでは、というものだ。

これらの指摘について、考察してみたいと思う。

仮説1 オーバメヤンは単に非常に優れたフィニッシャーである

これに関しては、Understats提供のスタッツを使わせてもらう。私自身が集計しているものより前の帰還のデータも提供されているからだ。

アーセナルファンとして、私はこの仮説が正しいものであることを心の底から願っている、だがオーバメヤンのシュート全てを分析してみると、この仮説が正しいと示す証拠はない。

2014/15シーズンからの総計で、オーバメヤンは123.3のxGを記録しており、そして実際の得点は123だ。3シーズンではxG以上の得点を挙げ、3シーズンではxG以下の得点に留まった。

オーバメヤンは特定のシュートを得意としているのではないか、という意見もあるかもしれないが、それならば証拠を示してほしい。

例えばアーセナルビジョンのマットが集計したところによると、最近のオーバメヤンのトレードマークとなっている左からの中距離のシュートも特にxG以上に得点しているというデータはない。

仮説2 選手はいつもxGよりも多くの点を決めるものだ

xGを上回った/下回った選手の分布図

上のグラフは、2017/18から2019/20シーズンにかけて900分以上プレイした選手がどれくらいの割合でxG以上の得点を挙げたか、あるいは下回ったかを示したものだ。

確かに、1シーズンを見れば、xGを上回って得点を挙げる選手が数多くいるのは疑いようのない事実だが、長期的に見ると、±0近くにピークがあることがわかる。

もちろんこれを見てこのグラフの右側に位置している選手が優れたフィニッシャーたちなのだろう、ということを言うのは出来なくもないが、これには恐らく強い生存者バイアスが関係しているので注意が必要だ。

何故なら、チャンスを決めることが出来ない選手はプレイ時間が減る傾向にあるからだ。

より重要で価値があるのは、xGが現状を示すというよりも、将来の予測により役立つ指標だということだ。

1シーズン目にxGを超える得点を挙げた選手たちのうち、2季目も連続でxGを上回る得点を挙げたのは彼らのうちの48%だけだった(平均は、90分当たりマイナス0.003のxGという結果だった)。

もし決定力に優れた選手たちが当然のようにxGを上回って得点を挙げ続けることが出来るという仮説が事実であれば、この数字はもっと大きなものになっていなければおかしい。

同じく、xGを下回った得点数を記録した選手たちも翌年度はxG以上の得点を挙げることが多くあった(平均は90分当たりxG+0.002得点で、ほぼxG通りの得点だった)。

実際のところ、シュート数は来季の選手の得点数を予測する指標でとしては確実性に乏しく分散(確率論の用語、誰か詳しく教えてください笑)の8%しか説明できない。ゴール数はそれよりも正確で13%の分散を説明できるが、最良なのはxGで、26%の分散を説明できる。

もちろんxGも完璧ではなく、より深いレベルでの分析が必要とはなるが、xGはなかなか信頼できるデータで、もし誰かがxGはあまり当てにならないと主張するのであれば、彼らはそれがどのようなデータに基づいている主張なのかを示す必要がある。

仮説3 そもそもxGは有用な指標ではない

上で既にこれに関しては触れたが、もういくつか明確にしておくべき点がある。サッカーのシュートに関して多くの人が気づいていないのは、xGの計測サンプルに悪い選手というのはほとんど含まれていないということだ。

サッカー界は才能のある選手をきちんとトップレベルで活躍させることに長けており、大体の場合彼らほど才能のない選手は序列を落としていく。

もし誰かが決定力に欠けているとしたら、彼らがトップレベルにたどり着き多くの出場機会を得る可能性はかなり低い。そして、そんな選手たちが多くのシュートの機会を得る可能性はさらに低いだろう。

したがって、そもそもxGの計測のサンプルとなる選手たちは皆、かなりのシュート能力を有しているはずなのだ。

そして非常に優れたストライカーは多くのシュートを打つチャンスがあることが多いので、データの中で占める割合も多くなる。したがって、xGを測定する際に用いられる"平均"というのは非常にハイレベルな選手たちの平均ということだ。

もしxGをより低いレベルのリーグで用いないのであれば、そのレベルに合わせて指標を修正する必要が恐らくあるだろう。

もちろんxGへの批判の中には妥当なものがあり、個人的に最も問題なのは"ビッグチャンス"だ。ビッグチャンスは0.3-0.5程度のxG値を持っており、通常のチャンスが0.03-0.1程度なのと比べると、ビッグチャンスが総xGに与える影響が大きすぎる。

これらがオーバメヤンにとって意味することは?

さて、話を元に戻すが、結論としては、彼のこれまでの傾向を考えると、今季も昨季と同じレベルでxGを上回った得点数を記録する可能性は低い、ということだ。

もちろんこれは必ずしも今季の得点数が昨季よりも少なくなるだろうということを意味しない。

だが、過密日程の中で出場試合数が減る可能性があり、そして昨季ほどの決定力を発揮できないのであれば、全体の得点数が下がる可能性はあるだろうし、恐らく今季は昨季の得点数よりもxGに近い数の得点となるのではないだろうか。

だが、私がポッドキャストで指摘した通り、今季オーバメヤンはより高いxGを記録する可能性がある。昨季の彼のシュート一本当たりのxGはワースト記録をたたき出しており、これは彼自身というよりも、アーセナルのチャンス創出力不足と、左ウイングからシュートを打つことを強いられたためだ。

もし今季彼がより優れた戦術により、より良いポジションからシュートが撃てるようになり、かつよりチャンス創出力に秀でたチームメイトが加われば、彼はより多いxGを記録するだろう。

そうなれば、昨季ほどの決定力を見せなくとも、全体のゴール数は上がる可能性もある。

source(該当サイトの許可を得て翻訳しています):

訳者による補足

ちなみに、xGの算出に用いられる選手全体としては筆者のスコットさんの言うとおりだと思うのですが、毎年得点王争いに顔を出すごく一部の本当にトップレベルの選手に限って見てみると、アグエロ、サラー、ケイン、ヴァーディ、スターリング、オーバメヤンもここに含めていいと思いますが、過去3年で大体全員がxGを大きく上回る得点を挙げるか、xGと同程度という年が両方ある、といった感じです。(FBrefを参照)

これらの選手たちはxGを上回る得点を挙げる年はよくありますが下回ることはほとんどないので、本当に上位10人程度の一握りの選手たちに限れば、彼らが継続的にxGを上回る得点を挙げ続けることが出来る可能性はスコットさんが言うほど低いのかと言われると、そこまででもない可能性もあるような気がします。

オーバメヤンの詳しい選手紹介記事はこちら

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Posted by gern3137