アーセナル 20/21シーズンプレビュー by StatsBomb 中編
この記事は前編の続きとなっています!後編は、アーセナルの2020/21シーズンの改善点について、です!
では、今季のアーセナルはどのような点を改善すべきなのだろうか?
補強方針
ここ何年かのアーセナルのスカッドは噛み合わないレゴブロックのような状態がずっと続いている。才能のある選手はいるが、トップクラスの選手たちのポジションは被っており(オーバメヤンとラカゼット)、かつこれからキャリアのピークを迎えようとする24-27歳の選手がほとんどいない。
長期的なチーム作りという点では、アーセナルのここ何年かのアーセナルの不手際は際立っているといわざるを得ない。
守備陣
恐らくこの夏の最優先課題はCB陣の入れ替えで、アルテタがグアルディオラの影響を受けているとすれば、彼もまた足元が上手くスピードのあるCBを求めていたことだろう。
ウィリアム・サリバはまだ非常に若い点以外はこの要件を満たしており、リールから来たガブリエル・マガリャンイスもよりアルテタの希望に近い選手だろう。
だが、この二人の年齢を考えると、彼らがペアを組んで先発する機会は少なくとも今季は非常に限られるのではないだろうか。
となると、彼らの相方は誰が務めるべきか、というのが問題になる。
ムスタフィはリーグ再開後は最も信頼できるオプションのように思えたが、今季の終盤には元の姿に戻ってしまった。これまでのムスタフィの傾向を鑑みるに、今季終盤の好調は一時的なものだったとみるのが自然だろう。彼は監督が好んで守備陣を預けたいような選手ではない。
ソクラティスは既に移籍が許可されているようだし、獲得時の年齢を考えれば、あくまで応急処置的な補強であるのは最初から明らかだった。
パブロ・マリに関して我々が知っているのは左利きであるということと背が高いということくらいで、怪我のせいで我々が彼への評価を下す機会は失われてしまった。
ホールディングはトップレベルのCBになるにはパス能力もスピードも足りておらず、ローンで出されるのが濃厚のようだ。もちろん、中位クラブならばそれなりにやれるだろうし、ボルトンから雀の涙ほどの移籍金で獲得されてきたことを考えれば悪い取引ではなかったと思うが。
チェンバースにはまだ契約がある、ということ以外は特にいうことはない。
そして、問題はルイスだ。彼のアーセナルでの時間はミスとレッドカードに満ちたものだった。したがって、彼の契約延長は大きなサプライズだったといえる。
ファンは『キア・ジューラブシャンはアーセナルから利益を得てばかりで、いつ我々が彼との関係性から得をするのだ?』と囁き合った。恐らく彼らが聞きたかった答えはウィリアンのフリー獲得ではないだろう。
これらすべてを見るに、ガブリエルとサリバがアーセナルの将来であることは間違いないが、現在はいささか不透明だ。
中盤
不透明なのは中盤も同じで、セバージョスの帰還はアーセナルにとって非常に大きい。ジャカはパスはうまいがこのポジションでワールドクラスになるには機動性を欠くように感じる。
トレイラとゲンドゥージは放出候補となっており、アーセナルはエジルももし出来ることなら彼がどこか他のクラブでプレイしてくれれば、と願っているに違いない。
これらを考慮すると、アーセナルの中盤はなかなか擦り切れて見える。仮にアワールのようなハイクオリティの選手を加えるのに成功したとしても、恐らくウィロックの出場機会もありそうだし、ベジェリンが移籍すればナイルズは中盤ではなく右サイドバックになるはずだ。
残りの選手で中盤が務められそうなのはサカに快速ボランチになれるポテンシャルがありそうなくらいで、他にはだれもいない。
トーマス・パーティに関する私の意見は、後述する。
若手
サカと長期契約延長に成功したのはガナーズにとって非常に大きい。この5年でアーセナルのユースアカデミーはほぼトップチームの選手の輩出ゼロから若手タレントで溢れる世界でも有数のレベルにまで発展した。
18歳の時点でサカは既にチームでも優れている選手のうちの一人のように見えたし、彼のベストポジションがまだよくわからないとはいえ、彼を失えばダメージは計り知れなかっただろう。
スタメンを任せるにはヌケティア(21)はまだ心もとないものの、もう1,2シーズンもすれば彼もそのレベルに達するはずだ。そのためには出場機会が多く必要かもしれないが。
より将来が不透明なのはネルソン(20)で、ウィリアンの獲得を合わせて考えるとよりそれが明らかだ。恐らくアルテタはネルソンはまだ右ウイングのセカンドチョイスを任せるほどのレベルには達していないと考えているのだろう。
だが、もしそうだとするのであれば、ネルソンはローン・あるいは資金捻出のための完全移籍という形でチームを去る可能性もあるかもしれない。
そして、怪我の前にはマルティネッリはまさに神童という姿を見せていた。彼のポテンシャルが花開くことを誰もが願っているが、恐らく冬まで出場はないだろう。
アーセナルの若手攻撃陣は少し若すぎ、粗削りな選手たちも多いが、それでも、カップ戦での出場レベルには達しているし、オファー次第では売却益を生み出せるレベルにある。
守備のスタイル
『世界最高のプレイメイカーでも良いゲーゲンプレスにはかなわない』
とはユルゲン・クロップの言葉だが、チームとして改善する一つの方法が、より優れた守備のスタイルを身に着けることだ。
ハイプレスは失点期待値の減少と得点期待値の増加両方と相関関係がある。アーセナルの中盤はチャンス創出力を欠いており、今年の移籍市場でアーセナルがこの課題を解決できるかはわからない。
しかし、ハイレベルなクリエイターが居ないのであれば、ハイプレス志向に舵を切り、トランジション時のプレイ精度を上げるのも一つの手だろう。高い位置でボールを奪えばほぼ無条件にゴールに繋がる場合もある。
問題は、アーセナルにこのような戦術を実行できるだけの人員が揃っているかどうか、そして、新しいシーズンが開幕するまでに新戦術を仕込む時間があるかどうかだ。
仮にシーズン序盤はうまくいかなかったとしても(クロップのリバプールやポチェッティーノのスパーズも最初からプレスが上手かったわけではなかった)、このスタイルを採用し、シーズンを通して改善を続けていけば、多くのゴールを生み出してくれるだろう。
もしかするとこれこそが食えりたー不足のアーセナルに必要な火力アップの策かもしれない。
セットプレイ
これに関しては、攻守両面で、エメリ時代の"悪くない"からアルテタに監督交代後は"なかなか酷い"となってしまった。
新コーチのアンドリース・ゲオルグソンがこの点を改善するために連れてこられた。彼が上手くやってくれ、我々がコーナーのたびにびくつかずに済むことを祈ろう。
試合をリードしている状態でのプレイ
これは他の点ほどは目立たないが、昨季を通してアーセナルの主要な課題の一つだった。アーセナルは自分たちがリードしている際に、リーグワースト4位の得失点期待値となってしまっているのだ。
順位表の上位6チームは皆リード時はプラスの得失点期待値を記録している。つまり、トップレベルのチームはリードしている際にそのリードを守るのではなく、リードを広げる、ということだ。
リードを守ろうとした結果どうなるかはアーセナルファンならよくご存じだろう。38試合中14の引き分け、そしてリーグ中位でのフィニッシュだ。
アーセナルの数字をもっとわかりやすくいうと『アーセナルは試合をリードしているとき、降格圏内をさまようチーム並みのクオリティになってしまう』ということだ。
昨季に関しては得点期待値よりはよい得点を挙げることが出来ており、これは幸運とFW陣の能力の合わせ技だろうが、これが今季も成功するという保証はどこにもない。
これは戦術的な姿勢に大きく影響されるので、今季アーセナルが躍進するためには、これを改めなくてはならないだろう。
(明日の結論+トーマス・パーティに関して、に続きます)
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