【検証】レジェンド監督って実際どうなの?

オリジナル

アルテタがアーセナルの”レジェンド”とまで言えるかどうかは議論の余地があるところかもしれませんし、まだまだ彼の監督としての力量について結論を出すには早いですが、ここまでのところアルテタはアーセナルで素晴らしいチーム作りに取り組んでいる、とは言えるかと思います。

何となくあまりポジティブなイメージがない、現役時代に活躍した選手がそのまま監督になるいわゆる”レジェンド監督”パターンですが、実際にある程度現役時代に知名度があった選手が監督になったケースはどれくらいの割合で成功を収めているのか見てみようと思います。

ペップ・グアルディオラ: S

グアルディオラに関しては今更言うまでもないかとは思いますが、バルセロナで300試合以上出場、タイトルも多く獲得したグアルディオラは一年バルセロナBチームの監督を務めただけですが、チームを4部から3部に昇格させ、その後トップチーム監督に大抜擢されます。

もちろん当時は不安視する声もあったに違いありますが、その後のグアルディオラの経歴は伝説と言ってもいいくらいです。以後バルサ、バイエルン、マンチェスターシティと行く先々でタイトルを獲得しました。世界最高の監督との呼び声も高く、選手時代の実績もさることながら、監督としての名声の方が広く知れ渡っているといっても過言ではないかもしれません。

レジェンド監督の最も成功したパターンと言えるでしょう。

ジネディーヌ・ジダン: S

期待の戦術家として名を馳せているグアルディオラとは対照的に、そのモチベーターとしての素質を存分に発揮して大成功を収めたのがジダンです。こちらも現役時代の実績に関しては言うまでもないと思いますが、彼もまた、レアルのBチームの経験があるのみの状態でトップチームの監督に抜擢されました。

レアル以外での監督歴がないため、監督としての力量が測りづらく、かつレアル・マドリードが監督に関係なく強いのは当然ではないか、と手腕を疑問視する声も上がりますが、とはいえ、強くて当然のレアルを率いて結果が残せず何人もの監督が解任されてきたことも事実です。

スターぞろいのチームをきちんと機能させることが出来るだけでもそれは才能の証と言えるでしょうし、何よりCL3連覇という前人未到の偉業も達成しています。

監督を退任してからも再び会長からの要望を受けてレアルに戻ったことからもわかる通り、むしろ今のレアルはジダンでなければ扱えない、という見方すらできるかもしれません。

コンテ: S

トップチームでの経験がほとんどない状態でいきなりスターダムをのし上がった上の二人とは対照的に、地道に経験を積み一流の監督としての評判を獲得したのがこのアントニオ・コンテです。

ユベントスでキャプテンを務め、リーグやCL優勝を勝ち取った選手としてのキャリアとは裏腹に、シエナのアシスタントコーチとして監督キャリアを始めると、その後もバーリをセリエAに導き、その後アタランタの監督を務めるなどイタリアの中堅どころで経験を積みます。

その後シエナに舞い戻るとチームを昇格に導き、トップレベルでの実績が未知数ながらユベントスの監督に就任、圧倒的な強さを見せ、その後はイタリア代表、チェルシーを経てインテルの指揮をとります。

今回調べた限りでは、堅実にキャリアを積み重ねるレジェンド監督というのはほとんどおらず、レアなタイプです。もちろんまだ将来はわかりませんが、最近の監督だと、この後紹介するガットゥーゾや、アメリカからセリエBという流れで監督を務めているアレッサンドロ・ネスタあたりが将来的にトップレベルのチームを率いるようになれば似たようなキャリアをたどるかもしれません。

ルイス・エンリケ: A

上の三人ほどの華やかさはありませんが、それでも十分な成功を収めているといえるのが現スペイン代表監督のルイス・エンリケです。

他の監督と同じように古巣のバルセロナのBチームで監督のキャリアを始めると、チームを昇格に導き、その手腕が高く評価されます。

その後ローマでは躓いてしまい、解任の憂き目を見て今後のキャリアが危ぶまれましたが、セルタの監督に就任すると降格間際だったチームの立て直しに成功、その実績を買われバルセロナ監督の呼び声がかかります。

バルセロナでは3冠を達成するなど素晴らしい成績を上げ、その後はスペイン代表監督に就任したことからもわかる通り、非常に高く評価されています。

ガットゥーゾ: B

流石は戦術の国イタリアというべきでしょうか、今回調べていてなんとなく、スペイン系あるいはスペインのクラブの監督はトップチームでの経験が浅くともいきなり抜擢され、かつ一発で成功する例が多い一方で、イタリア系は泥臭く中堅クラブから修行を積んでのし上がっていく、という傾向にあるのが興味深いですね。

その良い例がガットゥーゾで、こちらもコンテと同じようなキャリアの軌跡をたどっているように感じます。

選手兼任監督としてスイスのシオンで監督キャリアを始めると、パレルモ、ピサとセリエBを経てACミランの下部組織、そしてついにはトップチームに昇格、そして今季はナポリ監督の座を勝ち取りました。

ミランではそこそこの成績を残していましたし、ナポリでの結果次第でトップレベルでの監督としての評価が定まりそうです。

その一方で

とはいえ、何事にも言えることではありますが、監督も常にうまくいくとは限らないのも事実です。上の成功を収めている監督の陰には。死屍累々と言っては大げさかもしれませんが、大失敗をしている元選手監督たちもたくさんいます。

特に悲惨なのがイングランド勢で、トニー・アダムズは散発的に監督を務めたものの通算勝率たったの20%前後、ギャリー・ネビルは解説者としての腕が高く買われ鳴り物入りでバレンシア入りしたものの、28試合で解任されるとその後は監督の世界から遠ざかっています。フィル・ネビルが女子サッカー監督として成功を収めているのがせめてもの救いでしょうか。

とはいえ若い世代にダービーを経てチェルシーを率いてトップ4争いをリードしているランパード、レンジャーズを率いてセルティックと優勝争いを演じているジェラードが居ます。彼らは英国人監督の評判を覆せるでしょうか。

また、ミランはレジェンドの使い潰しともいえる起用が目立ち、セードルフ、フィリッポ・インザーギと2人立て続けに経験の浅いレジェンドを監督に起用しては解任しています。

ここにモナコをたった20試合で解任された我らがアンリも加えていいと思いますが、浮かび上がってくるのはキャリアの一歩目が非常に大切、ということではないでしょうか。

1クラブ目(Bチーム含む)で躍進とはいかなくてもそこそこの成績を残せば、その後イタリアルートでもいうのか、どこかしらからはオファーが来るので新天地での活躍次第で挽回の可能性が与えられるものの、一歩目で派手に躓くとそこから立て直すのは難しい、という傾向があるように思います。

インザーギはセリエBでやり直しを狙い、アンリはMLSで再び監督に就くようですが、将来的な巻き返しはどうなるでしょうか。

アルテタは?

したがって、監督デビューの舞台としてプレッシャーの大きいアーセナルのようなクラブを選ぶのは非常にリスキーではあるのですが、アルテタは非常に高い評価を受けていますし、アーセナルが泥沼であることがむしろアルテタ個人のキャリアにとっては働くかもしれません。

もしアルテタがアーセナルで仮に失敗してしまったとしても、彼ほどの高評価を受ける人材であれば、むしろアーセナルの環境に問題があった可能性もある、となりどこかしらのクラブが手を差し伸べそうなので、これで監督のキャリアが断たれる、という可能性は低そうです。

また、例えばスールシャールのようによりプレッシャーのかからないクラブで実績を積んでもやはりビッグクラブでは結果を残せるかどうかはわからない、という例もありますし、エメリ監督のように経験豊富な監督でもアーセナルを解任されるくらいですから、経験豊富であれば監督が務まるという保証もないわけです。

経験が浅いままトップクラブにやってきていきなり結果を残した監督はスペイン系が多いというのも心強いデータです。ここまでのところアルテタは非常によくやっていますし、今後も結果を残し、できるだけ長くアーセナルを率いてくれるよう願いたいものです。

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