【徹底分析】マッテオ・ゲンドゥージ!一シーズン目の総括、強みと今後の改善点 後編

選手紹介Peter Munnelly

この記事は前編の続きとなっています。

スピード、視野とパスレンジ

ゲンドゥージは素晴らしいパスレンジを備えているだけではなく、周囲を把握するのが下手な分を補って余りある考えるスピードと、行動に移すスピードが非常に速い。

一度彼が前を向いて頭を上げて周囲を確認してしまえば、彼はそこからのスピードがすさまじい。コンマ数秒でライン間を切り裂くパスや、相手の頭を超えるパスを見つけることが出来る。彼はこの二つの種類のパスのスペシャリストだ。

彼がこのようなパスをライン間のアタッカーに届けた回数は数えきれないほどで、エジルとの連携もよくとれていた。結果的につながらないこともあったが、彼は野心的で、チャンスを作り出すパスを常に狙っている。

また、このようなパスを届けるのにおいて重要なのが、相手に予測されないことだ。彼の思考のスピードは非常に早く、相手DFにパスコースを読んで体を動かすだけの時間を与えない。同じように、彼はボールをもってプレイを中断するかのようなそぶりを見せたり、ボールから助走をとるようなふりをすることで相手に次のプレイを読ませないことが上手い。

彼の浮き球のパスの精度は非常に高く、チームメイトの足元にすとんと落とすことが出来る。どうやら彼はボールにかすかなバックスピンをかけることで最終ラインの狭いスペースにもボールを届けることを可能にしているようだ。

たいていの場合このように幅広いレンジのパスが可能な選手は、パスの選択を誤ることも多い場合がある。ジャカに少しその傾向があるように。

だが、これはあまりゲンドゥージには当てはまらない。稀に、彼がピッチ上を把握するのに失敗したせいで間違ったオプションを選択するケースがあったくらいだ。彼のほとんど出すべきパスを誤らないというサッカーIQの高さは、もう一つの彼の強みだ。

これは数字にも裏付けされていて、昨季ゲンドゥージはジャカとエジルに次いで深いエリアからボールを前に進めることに成功している。

また、パス選択に関してはジャカはまるでロングパスマシンで、ゲンドゥージの倍近く(90分当たり8.4本、ゲンドゥージは4.38)のロングパスを通しているが、より効率がいのはゲンドゥージだ。

昨季のゲンドゥージのロングパス成功率は73%で、ジャカは61%だった。ジャカはプレッシャーがかかっていない状況ではほとんど常にロングボールを選択するが、ゲンドゥージはより状況を判断する。

この差は彼らに与えられた戦術的な役割の違いによるものなのかもしれないが、ゲンドゥージがより隙を見てロングボールを通そうとするタイプなのに対して、ジャカのほうがよりどん欲に一見チャンスに見えない場面でもロングボールを通そうとするタイプだといって差し支えないだろう。

守備面での懸念

しかし、残念なことに、守備がゲンドゥージの最大の弱点だ。何度も指摘しているように、彼の空間認識力(頻繁に首を振って周囲の状態を確認する能力)の欠如の影響が最も大きいのはチームが守備に追われているときだ。

ゲンドゥージは周囲の状況を把握する代わりに、ボールや相手の位置ばかりを追っていることが多く、守備面で適切なポジションをとることが出来ない。

シーズンを通して彼は自身の前のスペースをがら空きにしてしまうことが多く、これは相手のアタッカーがサイドからドリブルで入り込んでくる際に顕著だった。

これに加えて、彼はプレスにも大きな問題を抱えている。彼はプレスをかけてボールを追いかけている際に細かい動きが出来ず、ボールを動かして彼を回避されてしまった際の対応が遅い。

さらに悪いことに、彼はどこまで自分が追いかけるべきなのかがわかっていないようだ。上で述べたように、ドリブルで入ってきた相手に対して大きなスペースを与えてしまうこともあれば、本来ならば彼が詰めていなければいけない相手に簡単にパスを通させてしまったりもしていた。

このような場合に彼は飛び出ていってインターセプトを狙うことが多いが、現実的には、彼がボールに触れる可能性はほとんどなく、そういった場合に簡単に敵に振り切られてしまうのだ。

さらに、ゲンドゥージはいったん振り切られてしまうとその後の戻りが遅いことが多く、全力で自分のボックス内に帰陣したり、相手のワンツーに備えて敵選手を追いかけたりすることはほとんどない。

そして、自陣のボックス前でも彼は緩慢な守備を見せ、そこを突かれてしまうことが多い。彼は守備時の重心が高すぎ、相手にターンで容易に振り切られてしまう。

そして、彼は自分の後ろの動きに気づかないことが多いので、彼の前と後ろの選手がパス交換などを行うと、ボールを追って容易につり出されてしまう。また、そもそも彼は自陣までボールを追って奪い返そうという気持ちがあまり見られないように見える。

しいて言うのであれば、ゲンドゥージはタックルに関しては苦手ではない。長い脚でボールをつつくように相手から奪うことが出来る。とはいえ、90分当たりのタックル数ではジャカ、トレイラ、ラムジーといった選手たちにはかなわない。

まとめ: ゲンドゥージの将来は?

ゲンドゥージがバランスの取れた完璧なMFを目指しているのだとすれば、まだまだその道のりは長い。だが、まだ未完の大器とはいえ、彼に賭けるだけの価値は大いにあるといえるだろう。

年齢を考えれば、今季彼のさらなる成長を期待するのは自然なことだろうし、彼のここまでのスタッツは、彼が深い位置からのビルドアップの中心を担えるという兆候を示している。

だが、もしエメリがゲンドゥージの能力を最大限引き出したいのであれば、そのもっとも手早い方法は4-2-3-1でトレイラの隣で起用することだろう。そうすれば、トレイラがゲンドゥージの守備面での欠点をカバーしてバランスをとるバランサーとして機能してくれるはずだ。

(Source:
https://statsbomb.com/2019/07/after-a-breakout-year-how-can-arsenals-matteo-guendouzi-take-his-game-to-the-next-level/ )

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Posted by gern3137