【考察】アーセナルの今後の方向性について

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ピッチ内外でドタバタしがちなアーセナルですが、今回は、今後若手主体のチームを作り上げることを目指した方が良いのか、あるいは今所属しているベテランの力を借りてとりあえず全力でCL出場権獲得を目指した方が良いのか、珍しく真面目に考察してみたいと思います。

はじめに

アーセナルがプレミアリーグ終盤で大失速し、ヨーロッパリーグ決勝でチェルシー相手に惨めな敗北を喫したことで、アーセナルファンの間では、『むこう2,3年を犠牲にしてもいいからもう全員売却して、アヤックスのような優秀な若手を集めたチームを作るべきだ』という過激な意見も見られるようになった。

もちろん全員売却、というのは大げさにしても、現在アーセナルは3年連続でEL出場、という明らかにヨーロッパリーグレベルのクラブになってしまったにもかかわらず、CL出場時代の名残の選手たちの給与によって経営が圧迫される、という不健全な状態にあることは事実だ。

そして、更なる問題は、そのCL級の給与を受け取っている選手たちが思うような活躍を見せられていないこと、また、逆にアーセナルのスター選手で給与に見合う活躍を見せている数少ない二人であるオーバメヤンとラカゼットを、CLがない場合で引き留められるのかどうか不透明である、というのもある。

一方で、一時は3位も視野に入っていたところから悲惨すぎる勝ち点の落とし方から5位転落、また決勝で3点差を付けられてのチェルシーに大敗したことで、実際の成績以上に今季は大失敗という印象が強まってしまったが、実際は、ヨーロッパリーグは決勝進出、プレミアリーグは4位と勝ち点1差での5位ということで、総合してみればCL出場権獲得まであと一歩のところまで迫ったという見方も出来る。

であるならば、現有戦力をもう少しだけ上乗せし、来季も戦うべきであり、チームの大革新など必要ない、とりあえずCL出場権を得てから金銭的にもっと余裕のある時に刷新に乗り出すべきである、という見方にも一理あるのかもしれない。

もちろん、現実的にはそこまで両極端になることはなく、その間のどこかで落ち着くのだろうとは思うが、この二つの考え方を比較してみようと思う。

革命だ!若手だ!派の意見

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まず、第一の前提として、アーセナルは成績どうこう以前にチームの刷新が必要だという点がある。今季終盤の守備陣のうちナイルズを除いた三人はもう31を越えているし、特にモンレアルとコシェルニーの2人は恐らくこの夏にアーセナルを去らなかったとしても来季が最終年になることはほぼ間違いないだろう。

加えて、オーバメヤンとエジルとムヒタリアンの3人も30歳であり、攻撃陣守備陣両方ともに若返りが最優先課題なのだ。それならば、ここに中途半端な予算で、CL出場権のないクラブに来てくれる中堅選手の獲得を目指すよりも、将来性豊かな若手を獲得したり、自前のユースにチャンスを与えるべきだという発想は自然な流れではないだろうか。

そもそも、今季前半はラッキーな試合も多く、5位でシーズンを終えられたのはオーバメヤンとラカゼットの力によるものが大いため、少し補強したくらいで来季CL出場権を奪取できるのか疑念が残る。

そして、アーセナルより下の順位のチームも着々と力をつけているのだ。今季の終盤、アーセナルはレスター、ウォルバーハンプトン、エヴァートンといったクラブよりも強いチームであると自信をもって言い切れるアーセナルファンがどれだけいただろうか。

これに加えてニューカッスルにも買収の話があり、競争はより熾烈になるだろう。少しでもアーセナルが金銭面、ブランド面で優位を保てている今のうちに将来のために投資するべきだ。

なによりも、もしこのままベテランを使い続け、若手も育成できないままCL出場権獲得失敗となった場合、数年後にはアーセナルには何も残らない、という事態になってしまう。若手育成に舵を切れば、最悪少し順位を落としたとしても、育成した若手を売却して予算を得て、それを元手に再びチーム強化、CL出場権に再チャレンジが可能だ。

ただ、これに関して懸念点といえるのが、このプロジェクトを任せるにあたってエメリが最適なのか疑問が残ることだろう。冬のデニス・スアレス獲得に象徴されるように、今季エメリは一貫して自身が既によく知っている選手の獲得を求めてきた。全く無名の若手を育成する手腕は未知数だ。ゲンドゥージ、ナイルズの起用法を見るに、ベテランを重用しすぎるというわけでもないだろうが、アーセナルの運命を賭けた一大プロジェクトを任せるのに適任だというまでの証拠は今シーズン見せられていない。

また、本人が私のチームはカメレオンであるべきだ、と口にしていたように、戦術的にも一貫したスタイルのようなものが見当たらないのも心配な点の一つで、ユースから一貫したチーム作り、という意味では一本筋の通ったスタイルがあった方が、いきなり戦術的に非常に複雑なタスクを課せられるよりも、若手の成長には適した環境のような気がする。

現チームの主軸をキープしつつ来季のCL出場権に全力を注ぐべきだ!派の意見

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まず、既にチェフ、ラムジー、ウェルベックとチームの主軸が三人も退団することが決まっている状態で、ここから何人も一夏に主力を入れ替えようとするというのは無理があると言わざるを得ない。

FIFAやウイニングイレブンといったゲームならともかく、現実的には、チームを総とっかえするというわけにはいかないのだ。また、そもそも移籍市場の閉幕まであと二か月弱しかなく、時間的に、この短い期間中に選手の獲得と売却両方を実現できるかどうか疑問だ。

また、ピッチでの成績が酷いと、その試合に出場していない選手の株が上がる、というのはよくあることだが、若手の実力は当然全く持って未知数だ。世界一過酷ともいえるプレミアリーグに、ユース上がりの選手や、他国から獲得してきた若手が適応できるという保証は全くない。

確かに、エジルやムヒタリアン、あるいはムスタフィといった選手のパフォーマンスは満足いくものではなかったかもしれないが、ネルソンやマヴロパノス、スミス=ロウといった選手たちが、ベテランと同レベルのプレイが出来る保証すらないのだ。

そして、若手の積極登用がもし失敗に終わった場合、最悪6位や7位への転落もありうるだろう。今のところは過去のブランドがあるので何とかなっているが、一度ヨーロッパリーグ常連、あるいはさらに下のクラブになってしまえば今までと同じようにスポンサーがつくとは思えないし、そうなればそこから上に復帰するのは非常に難しくなってしまう。

CL出場時代にかき集めた選手たちが年齢を重ねているとはいえ、まだ現役で十分なプレイを見せられている今のうちこそCL出場権を獲得できる最大のチャンスであり、恐らく今のチームの選手たちの年齢的に、来季が今のチームの主軸を中心に戦えるラストチャンスになるだろう。

このチャンスを選手放出によってふいにするのは馬鹿げている。来季もCL出場権外となった場合は多くの選手の放出も致し方なしかもしれないが、とりあえず来季はまだ現在のチームの背骨を残したまま、新戦力を加えて堅実に戦うべきだ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

個人的にはどちらの意見にも一理あるとは思うので、エメリ&フロント陣にはチームの戦力を大幅に落とすことなく若返りを図る、という非常に難しそうなタスクをなんとかこなしてほしいところです。

リバプールのように一度CL/EL圏外に復活した例もあるとはいえ、一時期はトップに居ながらも消えていった名門クラブも数多くあります。恐らくクラブとしての成功を握るのは監督や選手といった現場レベルではなくクラブの運営体制なのかもしれませんが、そういう意味ではここが一番アーセナルにとって不安な点でもあります。

とりあえず、この夏の動きでアーセナルの進もうとしている方向性が恐らく明らかになると思うので、注意深く、かつ期待しながら見守りたいと思います。

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