アーセナルのトップ4(ほぼ)脱落を受けて思うこと

語ってみた

日曜日にアーセナルがブライトンと引き分けたことで、最終節でアーセナルが勝利+トッテナムが敗北+8の得失点差をひっくり返す、という非現実的な結果にならない限りはアーセナルの順位は5位か6位で確定、CL出場権の望みはEL優勝のみ、ということになります。

一応数字上はまだ可能性は0ではないですが、実質今季のアーセナルにとっての国内リーグ終了といってもいいでしょう。総括というか振り返りはまたきちんとやりたいと思いますが、とりあえず最終盤でのブレーキを受けて思う所(主に何が問題なのか)を書いてみたいと思います。

今季のミッション

Embed from Getty Images

[adsense]

まず最初に明確にしておきたいのは、今季のアーセナルのタスクは明確で、CL出場権を獲得することだったということです。もちろん理想を言えば優勝できるに越したことはありませんが、現実的に昨季6位のチームが急に優勝争いできるとは考えづらく、またクラブのフロント陣もCL出場権が与える金銭的な影響を何度も口にしています。したがって、まずはCL出場権を獲得し、タイトル獲得に挑戦できる土台を整える、というのが最初の一歩だったはずです。

そして、結論から言えば、アーセナルは国内リーグ戦経由でのルートではこのミッションに失敗しました。まだELが残っていますので、この結果次第ではアーセナルの今季は成功だった、という結論に達することも十分考えられますが、一発勝負の繰り返しとなるカップ戦ではどうしても運の要素が絡みますし、これまでのアーセナルが象徴している通り、カップ戦に強いチームがリーグで安定した成績を残せるとは限りません。ELの結果に関わらず、より安定したプレミアリーグ4位に入ることに失敗したということは謙虚に受け止め、その原因を分析する必要があると思います。

実際にピッチ上のどの分野が悪かったのか、などといった分析は、より適任の方がいらっしゃると思いますし、もしやるとしてもまた場を改めて、ということにして、とりあえず今回はフロントやオーナーも含め広い意味でのアーセナルというクラブ全体を対象にして考えていきます。

監督

Embed from Getty Images

当然ながら、チームの不出来に関して、まず真っ先に責任を負うべきなのは監督です。ただ、今季に関していえば、そもそもアーセン・ベンゲル監督の後を継ぐというミッションの難易度が並大抵ではなく、かつチームも給与的にも能力的にも非常に偏ったものを引き継いだため、必ずしも監督に最も大きな責任があるとは言い切れないと思います。

とはいえ、もちろん全く責任がないというわけにはいかないでしょう。例えば、もし今季が始まる前に、エメリ監督は頑張るけれどシーズン5位で4位まではギリギリ足りなかったよ、と言われれば、そうか、まあアーセナルの実力はそんなものだよね、と納得できていたかもしれません。

しかし、事実として、エメリ監督は アンバランスなチームを何とか立て直し、 4位を手中に収めるどころか3位まで視野に入れるポジションにまでつけていたわけで、そこからのシーズン終盤の崩れ方は悪い意味で衝撃的でした。

疲労の影響があったとはいえ、ほとんど同じメンバーでビッグマッチではシティとリバプール以外の相手には互角どころかそれ以上の戦いを見せていたことを思えば、この結果はそもそもアーセナルの選手が劣っていたのだ、というのは理由にならないでしょう。クリスタルパレス戦でのメンバー選考など、一番大事なところで采配を間違えてしまったことは確かです。

また、セビージャ時代からアウェイを苦手にしているのと、今季もここまで50失点ということで昨季の51失点から全く改善されていないのも懸念点です。今季はレノ・トレイラ・ソクラティスという戦力を加えていることを考えるとこれは由々しき問題です。特に、格下相手の試合で失点が多すぎます。

更に、ゲンドゥージとナイルズを除けば若手の起用にそこまで積極的ではなかった点も気になります。もちろんトップチームで若手を使うのは非常にハードルが高いことではありますが、エンケティアはレンタル移籍をブロックしたにもかかわらずほとんど起用されませんでしたし、あくまで若手が戦力になるのであれば使う、という姿勢で、カップ戦で少し試してみたのを除けば特にユース選手を"育成"しようという姿勢があまり見られなかったのは少し悲しいですね。

ベンゲル監督と比べるのは流石に酷かもしれませんが、ベジェリンをチャンピオンズリーグのドルトムント戦でいきなり先発デビューさせてみたり、イウォビをいきなりバルセロナにぶつけたり、などといった時代と比べると対照的でした。

ただ、総合的には、エメリが責められるか、といえばそこまで責められない、とは思います。ですが、チームの能力が足りていない、フロントがサポートできていない、前体制の負の遺産が大きすぎる、などということを言っても、現実問題アーセナルがそのような制約で縛られた状況でもCL出場権をもたらしてくれるような監督を必要としているのも事実です。

エメリの望む能力を備えた選手が揃うまで本当の意味での判断は出来ない、という意見にももちろん一理ありますが、アーセナルもベンゲル監督の時代を終え、モダンな構造に移行しつつあるわけで、そのような体制では監督の在任期間が数年というのは当たり前になるであろうことが予想されます。そういった中で、一人の監督に合わせてチームを一回一回総入れ替えしている余裕があるはずもないので、手元にある選手たちで結果を残せる監督、というのがそもそもの選考基準に入るべきでしょう。

エメリよりも有能な監督が見つかる保証は全くありませんので、今季ELが獲れなかったとしても、解任すべき!とまでは思いませんが、来季も今季と同じような状態が続く様であれば、必然的に監督の進退は話題に上がってくるに違いありません。

前体制の負の遺産

現フロントやオーナーの話に移る前に、まず前体制の負の遺産について整理しておきましょう。現フロントが直面する課題の大きさを説明せずに彼らの仕事を評価するのは不公平だと思うからです。

まず、アーセナルのメンバーはポジション的な偏りがあります。特に冬に顕著でしたが、ベンゲル監督体制下のアーセナルはしばしばパニックバイ的な動きを見せることがあり、その結果、必ずしもバランスの取れたチームが揃っているとは限りませんでした。

その傾向に拍車がかかったのが過去数年で、サンチェスとムヒタリアンの交換移籍をはじめ、ジルーを放出してラカゼットオーバメヤンの連続獲得とストライカーを二人獲った一方でウイングタイプの選手はおらず、守備が出来るCMFも今季新たに獲得したトレイラ一人といってもいい状況でした。

また、これはベンゲル監督ではなく、ガジディス主導だったようですが、給与も非常にアンバランスで、エジル一人が30-35万ポンド(トレイラ6人分)という非常な高給を得ているのに加え、正直に言って、ムヒタリアンの週給20万£という給与もとても活躍に見合っているとは言えません。ほぼ戦力外となっていながら売却に失敗した選手も数多くおり、それが今季以降の経営を圧迫しているというのは押さえておくべき事実です。

また、次にフロント陣とオーナーについても語りますが、フロントの失敗の責任の一端はガジディスが彼が居なくなった後のことを明確にせず去ったことにもあると言えるでしょう。それが結果として、分裂、そしてミスリンタート退団に繋がってしまいました。

現フロント

Embed from Getty Images

[adsense]

フロント陣には何人かの人がいるはずですが、実質的には現在アーセナルのサッカー面を取り仕切っているのはラウール・サンジェイ一人なので彼にフォーカスを当てたいと思います(彼はHead of Footballという他クラブで言うフットボールディレクターに相当する役職を与えられています)。

商業面を取り仕切るヴィナイはまだ何も結果を残していないので評価するには早すぎますし、フィットネス/メディカルチームやスカウト/データチームの活躍を外部から推し量るのは不可能でもあります。また、どちらにせよ構造的には彼らの(恐らくオーナーを通さないといけないとはいえ)人事権を持つ最上位にいるサンジェイが責任を負うのは当然でしょう。

まず、夏の獲得に関してですが、これに関しては特に不満はありません。リヒトシュタイナーはそこまで大きな戦力とはなれなかったかもしれませんが、フリーですし、ブライトン戦でも良いプレイを見せていましたし、右サイドのバックアップとして最低限の仕事はこなしたと思います。ソクラティスとレノは良い即戦力ですし、ゲンドゥージとトレイラも、上手くいけばチームを長く支え続けられる選手、悪くとも移籍金の回収くらいは出来ると思われます。

他にも補強が必要なポジションは確かにあったかもしれませんが、去年の夏の5人は予算を考えれば最高に近い獲得だったといえるでしょう。不足があるといっても、ウェルベックやホールディング、ベジェリンのうち一人か二人でもシーズンを通して活躍できていれば、トップ4レースはまた違った様相を呈していたでしょう。

ただ、問題は、これが恐らくサンジェイではなく当時スカウト長だったミスリンタート主導で行われたということです。もしかすると実際にスカウティングを行ったのは彼本人ではなく、スカウトチームの誰かかもしれませんが、いずれにせよ推薦を受けて誰を獲得するのか決めるのはミスリンタートの役目だったはずです。

しかし、皆さんご存知の通り、ミスリンタートは冬にアーセナルを去りました。このせいで、冬の移籍市場でのペリシッチやカラスコとの交渉は途中でサンジェイが引き継がなければならなかったようですし、もともと成功の見込みがどれくらいあったかはわかりませんが、結果としては交渉失敗に終わりました。

また、夏にあれほど素晴らしい選手を獲得できていたのに、冬の移籍市場では予算の兼ね合いがあったとはいえ獲得したのがデニス・スアレスです。これはエメリの希望にサンジェイが賛同するという形で実現したと言われています。これでは監督が望む選手を連れてくるだけ、という以前のやり方に逆戻りですし、結果から言えば、スアレスの獲得は大失敗でした。

そもそも即座に適応することが求められる冬の獲得で、バルサで出場機会をほとんど得られておらず、90分試合を行えるフィット状態に選手を獲得するというのは成功する可能性がほとんどないことは獲得時点でほとんど明らかだったように思います。しかも、レンタル代と給料で3-4Mかかったと言われており、これはアーセナルの予算を考えると決して安いとは言えません。

これだけを見ても、エメリとサンジェイにはない能力を持つミスリンタートの退団を許したことが愚かだったということが分かります。もしミスリンタートがチームにとって最善と思う通りの選手を冬に一人獲得していれば、もしかするとその一人が違いとなり、アーセナルのトップ4争いは違った結末を迎えていたかもしれません。

更に、彼の退団理由としては以前から望んでいた(ガジディスが約束したと噂されていた)テクニカルディレクターの職をミスリンタートに与えないことをサンジェイが決めたからと言われています。そうであるならば、せめて彼と同等程度のテクニカルディレクターを招聘する目途をつけていなければおかしいですが、モンチを呼び寄せるのには結果として失敗し、かつスカウト長の退団から既に何か月も経っているにもかかわらず、スカウト長もテクニカルディレクターの後任もまだ決まっていません。

このままでは今年の夏の移籍市場では大きく出遅れるでしょうし、そして冬の移籍市場から判断する限り、エメリ&サンジェイが選定する補強ターゲットがアーセナルの限られた予算を最大限活用できるものになるとは思えません。

今季のアーセナルの問題点、という意味に限って言えば、前体制の影響が大きすぎるので必ずしも今季のサンジェイのかじ取りが問題だったと言い切ることは出来ないとは思いませんが、例えばラムジーの退団は前体制とはあまり関係ありませんし、今季終盤の彼の活躍を見れば、この決断が誤りだったことは明らかです。そして、今季はともかくとしても、来季以降を見据えると、冬以降アーセナルが良い方向に進んでいるとは全く思えないのが非常に気になります。

また、サンジェイとエメリ監督のもう一つの懸念点は、彼らはベンゲル監督と違い、"アーセナルファン"ではない、ということです。もちろんそんなことは当然ではあるのですが、彼らにとってアーセナルはあくまで新しい職場に過ぎません。もしそこでうまくいかなければ、単に次の職場を探せばいいだけの話です。

もちろん彼らがダメならアーセナルは捨てればいいや、という気持ちで仕事をしているとは思いませんが、監督はどちらにせよ数年で入れ替わる可能性があるので仕方ないにせよ、サンジェイに関してはここまでを見ていると本当にアーセナルをこの先5年か10年かわかりませんが、長期にわたって任せられるのか少し不安になります。

オーナー

Embed from Getty Images

そして、何よりもこの不安に拍車をかけるのがアーセナルのオーナー、スタン・クロエンケがアーセナルの株式を100%買い取ったという事実です。彼はこれまで一貫して不干渉、というよりむしろ、そもそも興味すらなさそうな様子を貫いてきており、恐らく彼がフロントに結果を残すようプレッシャーをかけたり、励ましたりなどといったことは全くないでしょう。

実は、これが一番の懸念材料だと思います。例えば、冬に、完全買収に伴って、アーセナルの全部門に節約を促すメールが送られたそうですが、これが恐らくアーセナルの冬の予算ゼロ、という状態と関連性があるのは間違いありません。

少しでもサッカー、そしてアーセナルに興味を持っていれば、ホールディング、ウェルベック、ベジェリンと三人のレギュラー格の選手をケガで失ったアーセナルがこのまま闘い続けるのは厳しいということは簡単に分かったはずです。そのような中、監督に十分に支援を与えず、今回のような結果に終わってしまったことはオーナーの方針にも問題があると言わざるを得ません。

アーセナルを企業に例えるとすれば(というか実際に企業であるわけですが)、社長が自分の会社に注意を払っていないわけで、そうなれば、社員であるフロントや監督、そして彼らの指示に従う選手たちが120%の力を出そうと挑戦するわけもないのも当然と言えます。

また、この姿勢が間接的に広がる、といった影響が曖昧な要素を除いても、恐らくサッカーの知識をあまり持っていないであろう人物がオーナーであるということは非常にマイナスな影響を与えかねません。

例えばの話ですが、サンジェイとエメリ監督は同じスペイン人ということもあり、非常に信頼しあっているようですが、もしエメリが不振に陥ってもサンジェイが続投させ続けたとしたら、誰が彼を解任するという決断を下すのでしょうか。

また、あるいはサンジェイが結果的にアーセナルのフットボールディレクターとしてのレベルに達していない、ということになった場合でも、基本的には余程のことがない限りオーナーから解任するということはないでしょう。そもそも、サンジェイが前CEOのガジディスが連れてきた人物で、特にクロエンケは関わっていません。また、もし万が一アーセナルがあまりに低迷して流石にサンジェイを解任せざるを得ない、となった場合、後任探しは誰が行えるのでしょうか。

こうしてみると、フロントや監督が上手くいかなかった場合の状況打開が出来る人物として一番上の立場に居るオーナーがアーセナルに全く興味を示していないことは、非常に心配な点です。アーセナルのスタッフに対して上からのチェックが働かないとというのは憂慮すべきであり、単純にファンの力ではどうすることも出来ないのでそこまで話題に上がりませんが、究極的にはオーナーこそアーセナル不振の際に最も責任を問われるべきである、という言い方も出来るでしょう。

スポンサーリンク

関連記事(広告含む)

Posted by gern3137