ファビオ・ビエイラの今後は?
この数シーズンで、アーセナルのスカッドの層は厚くなった。ヌノ・タヴァレスやサンビ・ロコンガといったもともと即座に主力となることが期待されていたタイプではないような獲得を除けば、アーセナルの2021年以降の選手獲得の多くは成功に終わっているし、彼らも、大失敗だった、というほど出場機会が限られていたわけでもない。
全てのチームにコンディションさえ整えば全試合に出場する、という選手がいるに違いないが、アーセナルは例えば左サイドバックのポジションではキヴィオル、ジンチェンコ、冨安のうちの誰が先発しても大きくクオリティが変わることはないし、ライスがハヴァーツと中盤でくむこともあれば、ハヴァーツはその一列前でプレイし、ライスもより高い位置をとることもあるが、そのどちらも特にチームの総合力に影響を与えない。トロサールの起用も同様だ。
ただ一方で、チームでの居場所が少しずつなくなり始めている選手も存在する。
ネルソン、エンケティア、スミスロウの3人は最近ほとんど出場していないし、ラヤ獲得後のアルテタの決断は早く、ラムズデールでのアーセナルの残りの期間は長くないだろう。
もし彼の怪我の多さを改善できると考え、獲得したいというクラブがもしどこか現れるのであれば、アーセナルが移籍を容認するのは間違いない。セドリックとエルネニーも夏に契約満了となるし、サンビ・ロコンガもローン先での好調はより高い移籍金を得られる、という以上のことを意味しないだろう。ティアニーの移籍も確実に見える。
今のアーセナルでは、選手たちはかなり明快に、以下の4つのいずれかのカテゴリーに分類される。まず絶対的な選手がおり、重要な選手、ローテーション要員、そしてほとんど出場機会のない選手たちだ。
だが、恐らくその唯一の例外と言えるのがファビオ・ビエイラだろう。ビエイラはこのいずれにも属していないように思われる。
部分的にはこれは怪我のせいで、今季のパフォーマンスがアーセナルでの将来を左右するのではないか、と思われたシーズンにあまり出場機会を得られていないことが原因でもある。移籍金の差を考えれば、クラブはビエイラにタヴァレスやロコンガ以上の立場となってくれることを想定していたはずだ。
2022年にアーセナルが彼を獲得した時に、これはチームにとって絶対に補強が必要なポジションだったというわけではなく、どちらかというと獲得のチャンスが訪れたので獲得した、というタイプの移籍に見えた。
ビエイラはポルトで次世代のスターになる一歩手前の選手に見え、昨今の相場を考えれば35m£というのはそこまで法外な移籍金でもなかった。恐らく『獲得をもう1シーズン遅らせると、彼は100m£プレイヤーになってしまうかもしれない』という思いがアーセナルにはあっただろう。
それは実際には実現していないが、今後ビエイラにチャンスが訪れる可能性はある。パーティに加えてジョルジーニョも来季アーセナルに残るかわからず、アーセナルはある程度の資金をMF獲得に夏には費やす必要があるはずだ。そして、左8番の競争相手であったスミスロウも将来が不透明だ。
さらにカイ・ハヴァーツはストライカーとして素晴らしいパフォーマンスを見せているため、中盤のポジションが空くかもしれない。
興味深いことに、ビエイラはプレシーズンでは右ウイング、あるいは右8番として、ほぼ常に右サイドで起用されていたが、9月にグディソンパークの試合で先発した際には左8番としてプレイした。
アルテタはこれまで何度かよりテクニカルな選手をこのポジションで起用したいという意思を見せている。グディソンパークではビエイラがプレイし、ブレントフォードではトロサール、フォレスト戦ではスミスロウがプレイした。
アルテタは低いブロックと長身の守備陣を兼ね備えた相手にはこのポジションにテクニシャンを起用したいと考えているようで、これはビエイラにとってポジティブな要素だろう。
右ウイングと右8番にはサカとウーデゴールがいる以上、『素晴らしい控え選手』以上に昇格できる可能性はほとんどないからだ。
そして、サンビ・ロコンガ(あるいはエンケティアやネルソンもここに含めてよいのかもしれない)が明らかにした通り、若手にとっては、このような立ち位置で選手としての成長に重要な年代を過ごすのは、選手としての停滞に繋がってしまう。
花開くためにはビエイラはある程度定期的な出場機会を得る必要があるはずだ。
イングランドのサッカーに適応するために彼がある程度の時間を必要としていたのは間違いないが、フィジカルという意味では彼はキャプテンのウーデゴールを参考にすべきかもしれない。
ウーデゴールはライスやハヴァーツのように体格が良いわけではないが、彼がフィジカル面で問題があると言われたことは一度もない。
また、ビエイラのユーティリティ性の高さも大きな武器になるだろう。アルテタ自身がビエイラ獲得時に『ファビオはとてもクリエイティブで、高いクオリティとユーティリティ性を我々の攻撃にもたらしてくれる』と話していた。
恐らくここでアルテタが念頭に置いていたのは、単にビエイラがピッチ上の様々な一でプレイ出来る、ということだけではないだろう。アルテタはユーティリティ性をより複雑に、複数の役割をこなせるような選手と捉えているはずだ。
ベン・ホワイトがそのよい例だが、ビエイラもかなりプレイに幅のある選手に見える。
彼は左サイドバックのような低い位置まで下りてボールを受けることもあれば、ほぼゼロトップのようなプレイを見せることもある。このようなプレイの幅の広さはアルテタからは高評価のはずだ。
もちろん、それもそもそもある程度のプレイ時間がないと発揮されないわけではあるが。
ハヴァーツも同様にユーティリティ性の高さを持つが、彼がそれをものにするまでには少し時間がかかった。彼にはその時間が与えられたわけだ。
一方で、怪我による緊急事態などが起きない限りは、ビエイラにそのチャンスは今季は訪れなさそうだ。今はアーセナルにとってサイコロを振って運試しをする時期ではないからだ。
ただし、サッカーでは物事は短い期間で大きく変わる。本の数週間前まで、キヴィオルもビエイラと同じような立ち位置にいたが、冨安とジンチェンコの怪我により彼にはチャンスが与えられ、そしてアルテタがキヴィオルにより合った形にこのポジションの役割を修正したことも助けとなって、彼はチャンスを掴んだ。
今彼はトロサールや冨安と同じようなポジションにまで序列を上げているだろう。
したがって、今季残りでビエイラが自身の価値を証明しなくてはいけない、とするのは少々アンフェアに思われるし、そもそも一試合素晴らしい活躍を残したからと言って選手の評価が大きく変わるわけでもない。リース・ネルソンはまさにそのような瞬間を経験したが、それでも彼の立ち位置は大きく変わらなかった。
とはいえ、それでもビエイラには今季終了までに何かしらのポジティブな貢献が求められるだろう。
20代前半の選手というのはローテーション要員に向いているとはいえず(ベテラン選手、あるいはより若い選手の方が向いているだろう)、ビエイラが今後アーセナルで成長するのに必要なだけの出場機会を自らのプレイで生み出せるかどうかは注目したいところだ。
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