信頼に応えるベン・ホワイト
最近のアーセナルの右サイドバックはカルトヒーロー(少々個性的/ストライカーのようにサッカー界全体から圧倒的な評価を受けているというわけではないが、自クラブのファンからは絶大な人気を誇る、といったタイプの選手たち)の宝庫だ。リー・ディクソン、ローレン、バカリ・サニャ、ヘクター・ベジェリン、冨安健洋(彼はカルトヒーローとしてのステータスにあった期間はここまでの所少し短めではあるが)、そしてベン・ホワイトだ。
ベン・ホワイトはこの2年のアーセナルにおいてほぼ常に先発しており、彼のいないアーセナルを想像するのは難しい。
もともと過小評価されやすいサイドバックのポジションからはカルトヒーローが生まれやすい。それは、サイドバックの役割が大きく進化した現代においてもそこまで変わらない。
だからこそ、ベン・ホワイトとイングランド代表をめぐる騒動がイングランド中で報じられるニュースとなったのは、サイドバックの選手としては少々珍しいことだ。
2022年の冬にW杯のメンバーとして代表に帯同していたが"個人的な理由"でイングランドが二戦目を終えたタイミングで離脱すると、そこからは一度もイングランド代表に召集されていない。
そして、イングランド代表の右サイドバックは層が厚いため、ここまでそれがそこまで大きな注目を集めることもなかった。
だが、アーセナルとの契約延長の同日に行われたイングランド代表の(再びホワイトが選外となった)メンバー発表で、ホワイトの件が話題になった。
ホワイトとアーセナルの契約延長は実質的に随分前から完了しており、あとは発表を待つだけという状況だったことを考えると、これが偶然同じ日に発表されたとは考えづらい。
同時に、ガレス・サウスゲートのなぜホワイトが選外なのか、という問いに関する演出された(あまり良い演出だったとは言えないが)答えも事前に準備されてあったものと考えるのが自然だ。
恐らく、アーセナルはこの日これが大きな話題になるであろうことを予期しており、あらかじめ手を打つことにしたのだろう。
契約延長発表のビデオではチームメイトがベン・ホワイトがいかにプロフェッショナルで、人格者であることを語っており、まるで公の場での『彼はサッカーが好きではない(なぜそれが彼はそこまでプレイすることに対して献身的ではないという疑義に繋がるのかはわからないが)』という彼のイメージを打ち消すために作成されたようなものだった。
ホワイトの性格は少々勘違いされているように思えるし、また、報じられている情報を見るに、イングランド代表のアシスタントコーチのスティーブ・ホランドも同様に彼の性格を勘違いしているように見える。彼はそこまで社交的というわけではないホワイトの性格を、より何かしらの悪意が感じられるようなものと捉えてしまったようだ。
もちろん、アーセナルファンの私がこの状況について、少々ホランドに対して否定的なバイアスをもってとらえているかもしれないというのは認めるが、サウスゲートが公の場でホランドとホワイトの確執があることを否定し、ホランドは悪くない、と潔白を主張(確執など存在しないと言いつつ潔白を主張する、というのは矛盾しているが)、そしてホワイトが一方的にイングランド代表からの招集を拒んでいるかのような言い方をしたのは非常に不正確なコメントだったように思う。
サウスゲートがイングランド代表において、自信が気に入っている選手たちを優先しすぎているのではないか、という批判は以前から多くあり、完全に突き放されたホワイトは、ヘンダーソンやマグワイアといった選手たちが受けてきた扱いとは非常に対照的だ。
ホワイトはこれまでに、ビエルサ、ポッター、アルテタという非常に優秀な3人の監督から高評価を受けてきた選手だ。
ビエルサは非常に細部にこだわる監督として知られているし、アーセナルファンであれば、アルテタが全く妥協を許さない人物であるのは良く知る通りだ。
ホワイトが彼らのように要求水準がとんでもなく高い監督の元問題なくプレイし、輝くことができている以上、ホワイトはとてもプロフェッショナルな姿勢でサッカーに臨んでいるはずだ。
彼がいかに責任感があり、そしてタフな選手かをアーセナルファンであればだれもが知っている。
幸運なことに、実際の所プレミアリーグファンの間でイングランド代表のコメントというのはそこまで大きな重みをもっていない。毎週スタジアムに通うプレミアリーグのファンの多くは検索しなければ次のイングランド代表の対戦相手を知らないだろう。
ハリー・ケインはシーズン途中で開催されたW杯中に重要なPKを外しているが、その後のプレミアリーグの試合でそのことが話題に上がることはほぼなかった。
10年前であれば、スタジアム中に相手のファンから『お前は母国を落胆させた』とチャントが響いていたに違いない。
したがって、同様にホワイトがイングランド代表と上手くいっていないからと言って、スタジアムから罵声が浴びせられるということもないだろう。時代は変わり、今はもう、イングランド代表がファンの意見を引っ張る存在ではないからだ。
もちろん、彼のキャリアや評判に対してこれは多少の傷とはなるだろうが、今の英国メディアでのホワイトへの批判はもはやあまり影響力がない、過去の盛大となってしまった人物(ハリー・ゴホン、、レドナップ)から寄せられているように見える。
最近ホワイトは、家族や育った環境が全くサッカーと関係がなかったことが役立った、と述べた。彼の父は全くサッカーに興味がなく、ホワイトがプレイした際も特にプレッシャーを感じる必要もなかったそうだ。彼はただ試合を見ているだけで幸せだし、特にサッカーにも詳しくないので、ホワイトのプレイに関して何か言ったりアドバイスをしようとしたり、ということもないのだという。
NEW: Nowadays right-backs can be asked to be extra centre-backs, extra midfielders, quasi wingers. And sometimes just right-backs.
— Lewis (@LGAmbrose) March 19, 2024
Ben White is every one of them, all at once. And always the right one at the right time.
Analysis for @arseblog: https://t.co/mv9oSJx9aW pic.twitter.com/SdUbGYqmtZ
また同時に、アルテタはホワイトは怪我について話したがらず、怪我を隠してでもプレイしようとするので、本人ではなくドクターに話を聞く必要がある、と話していた。
そして、サッカーを観ることに興味がない、と語った選手はベン・ホワイトが初めてというわけでもなく、デイビッド・バティも同じようなことを述べていたし、ガブリエル・バティストゥータでさえ、そう話していた。
ホワイトはそのキャラクターのせいで特に常に"男らしさ"が求められるようなサッカー界では誤解されがちだが、一方で、アーセナルとアーセナルファンはこの騒動をより選手との強いきずなを生み出すのいつ買うこともできる。
そもそもイングランド人ではないアーセナルファンも非常に多いし、イングランド人のアーセナルファンでもW杯やユーロ以外の場面でそこまで熱心にイングランド代表を応援している、というファンは少ないはずだ。
特定のクラブにフィットできなかった、という選手がいるように、ホワイトも単にイングランド代表にフィットしなかった、というだけなのかもしれず、外部から見る限り、サウスゲートと彼のスタッフが、そこまで慎重にホワイトや彼の性格を見極めようとしたようにも見えなかった。
アーセナルはよりホワイトに目を注ぎ、きちんと彼を評価した。そして、ベン・ホワイトはその信頼に、彼のクラブに、応えて見せているのだ。
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