エンケティアの輝く時が来た
ユルゲン・クロップはドルトムントを率いてバイエルン相手に戦うことを、弓矢でバズーカ砲を相手にするようなものだ、と例えたことがある。
このコメントがなされたのは2013年のことだが、クロップは再びリバプールでマンチェスター・シティのバズーカ砲相手に弓矢で戦うというミッションに挑戦しており、この4年間でシティに最も迫ったチームを作り上げることに成功している。
だが今季のリバプールは不調に陥り、どうやらマンチェスター・シティ相手に弓矢で戦う役割はアーセナルに回ってくることになりそうだ。
中段前の時点でアーセナルは2位のシティの勝ち点5の差をつけて首位に立っている。
ただし、恐らくそれでも総合的にはリーグ優勝の本命はシティだろう。ガナーズがシティと突き放したウルブズ戦の勝利後、スカイスポーツの公式アカウントは『アーセナルはタイトル挑戦者となりうるか?』というツイートをしていた。
14試合を終えて勝ち点5の差をつけて首位であるチームがタイトル争いに参戦できるかどうかの議論がされている、という時点で、どれだけシティが高評価されているかがわかる。
同時に、これは特に極端にアーセナルに不公平な見方というわけでもなく、アーセナルファンもアーセナルがシーズン終盤までタイトルチャレンジャーで居続けるためには、主力に怪我がないことが非常に重要となる、と考えていたはずだ。
だが、その願いもむなしくガブリエル・ジェズスは怪我で数か月程度離脱することが報じられ、ファンの嘆き悲しむ声が響き渡ることとなった。
まず第一に、ポジティブな点を挙げると、少なくともジェズスの控えにエンケティアという布陣はファーストチョイスの選手のクオリティとのギャップという意味では、他のポジションほど悪くはない。
例えば、そもそもアーセナルの今年のスカッドにはサカの明確な控え選手は見当たらないし、パーティの控えにエルネニー、というのもタイプが大きく異なる。
だが第二に、エンケティアにジェズスと全く同じプレイを要求するのはフェアではない、という点も強調すべきだろう。エディーはジェズスとは異なるタイプで、異なるクオリティをチームにもたらす選手だ。
エンケティアはジェズスのオールラウンド性は持ち合わせていない一方で、恐らく決定力はジェズスより上だろう。安定して出場機会を与えられれば得点はジェズスより多く決めてくれるかもしれない。
データは全て90分当たり(FBrefのもの) | ジェズス 22/23 | エンケティア 21/22 |
パス企図数 | 29.8 | 24.7 |
アシスト数 | 0.37 | 0.11 |
ボックス内へのパス数 | 0.89 | 0.43 |
プログレッシブパス数 | 1.85 | 1.18 |
シュート創出アクション | 4.21 | 2.81 |
シュートに繋がるドリブル | 0.67 | 0.54 |
タックル成功数 | 1.19 | 0.97 |
ボールタッチ | 46.8 | 38.0 |
今のメンバーに組み込まれた時にエディーがどのような数字を残せるかの参考にするために、比較対象としては彼の昨季のデータを選んだが、全体的にエンケティアの数字はジェズスよりも控えめであるのが見て取れる(もちろん、今季のアーセナルはチーム全体が昨季より好調であるため、エンケティアの数字はこれよりも伸びるかもしれないが)。
もちろん、これは必ずしもエディーが良い選手ではないということを意味しない。エンケティアの数字は悪く無いし、単にジェズスがストライカーとしては非常に例外的なレベルの貢献を見せる選手であるいうだけだ。
サンプル数は少ないが、得点面では昨季終盤エンケティアは先発8試合で5得点という数字を残しており、アルテタはこれを彼が再現してくれることを願っていることだろう。
夏から引き続きアーセナルは前線の補強に動くと見られていたが、恐らくだがアーセナルはジョタやリシャルリソンのような、状況に応じてサイドでも中央でもプレイできる選手を探しているのではないだろうか。
もし第一ストライカーが怪我をしたとたんに誰か代わりが必要だ、と考えるほどエンケティアに信頼を置いていないのであれば、彼との契約延長を行ったとは思えない。
当然ながら、どこかのタイミングでジェズスはチームに復帰してくることにもなるため、アーセナルが必要としているのはジェズスの控えというよりもジェズスとも共存できるような選手だ。
もちろん、そのような条件を満たす理想的な選手を1月に獲得するのはかなり難しいかもしれず、同時にアーセナルはよりエンケティアの特性にあった戦い方を見つけ出す必要がある。
より彼のゴール前での得点力を活かしながら、ジェズスの守備の献身性とボール前進への貢献を誰かに代替させるようなシステムを構築すべきだろう。
一つアーセナルにとってありがたいのは、アーセナルは公式戦の前にこれらを試す場があることだ。いくつかフレンドリーマッチが予定されており、エンケティアはW杯にも出場していないため、これらの試合でいろいろと試すことが出来るだろう。
その他のメンバーも大幅に入れ替わっていることを考えると今季のELでのパフォーマンスだけでエンケティアの評価を下すのはアンフェアに思われるし、上で触れた8先発で5ゴールという数字はサカ、ウーデゴール、マルティネッリの3人の前に構えるという布陣で記録したものだ。
今季ここまでの所エンケティアはプレミアリーグで一試合も先発がなく、彼自身は、今回訪れたチャンスを掴み取り、自身の能力を証明したいと考えているはずだ。
エディーはジェズスのような選手にならなくとも、既にアーセナルにとって非常に有用な彼自身の特性を備えている。
source(当該サイトの許可を得て翻訳しています):
ディスカッション
コメント一覧
もちろん期待しますが、
スミスロウがどこまで回復するか未知数であり、
冬の前線の補強もあるに越した事はない気がします。