ジョシュ・クロエンケの声明に関する突っ込みどころ
今回は、先日発表された、盛り上がる #WeCareDoYou? に対してのアンサーレターとして公開されたジョシュ・クロエンケ氏の声明に関して、個人的に思うところを少し書いてみようかと思います。
ポジティブな部分
正直、語られた内容に関してはそこまでポジティブというか実質的な中身が伴っていたわけではなかったと思うのですが、オンライン上でのアーセナルファンの抗議が10万以上の署名を集め、それに対してオーナー側がなんらかのアクションを起こさなければならなかった、というのはそれ自体がポジティブなことだといっていいことなのではないかと思います。
ある程度はファンに不満をためさせるとまずい、と彼らが思っている証拠でもありますし、もしかすると今後のファンとオーナーとの対話の道が開かれるための第一歩ということになるのかもしれません。
また、去年までは、こういう話をするのはCEOのイヴァン・ガジディスが主に担当していました。したがって、ラウール・サンジェイではなくオーナーの息子自らが出てきてインタビューに答えたりというのは今までにない出来事であり、その点でもある種の本気度のようなものは感じさせます。
また、目を引くのは、少し露骨ともいえるくらいにアーセナルファンの心をつかむようなアーセナル関連のネタというのでしょうか、言葉が散りばめられていることです。
エドゥやボールド、ユングベリへの言及や、アーセナルDNA、アーセナルのモットー調和の中の勝利や、最後のノースロンドンが永遠に赤く染まっていますように、という締めまで、オーナーの言葉とは思えないくらいアーセナルファンには親しみある単語がずらりと並んでいます。
もちろんこれを『クロエンケも意外とわかってるじゃないか』ととるか、『ご機嫌取りにきたな』とシニカルに見るかは人それぞれだと思いますが、それでもファンの心に響くように注意深く言葉を選んだのは間違いないでしょう。流石にいくつもの会社やスポーツクラブを束ねてきた実力は伊達ではないようです。
突っ込みどころ
さて、ここからが本番です。笑
まず、気になるのが、アーセナルの不振が最近始まったもののように扱われているようです。確かにKSEによるアーセナルの完全買収はつい最近のことですが、それ以前から実質的に大株主であり、アーセナルの支配権を握っていたのはKSEです。
したがって、アーセン・ベンゲル時代後半の緩やかな衰退とでもいうべき成績も、元をたどっていけばクロエンケファミリーの責任が問われるべきでしょう。
そして、あたかもベンゲル監督退任に伴う変革や混乱が自然発生的に始まったかのように書かれていますが、これは単に、オーナーが現場に任せきりにした結果、移籍金や給与の分配もうまくいかず、そして成績は下降し最終的にシーズン途中でのベンゲル監督退任発表となる、というドタバタ劇になったわけであり、自分たちのミスマネージメントが原因なわけです。
そして、モデルチェンジに関してですが、現在のアーセナルのモデルチェンジを推し進めたのはガジディスであり、オーナー主導で行われたわけではありません。しかも、当初はガジディス・サンジェイ・ミスリンタートというスリートップ体制で進めるはずだったのに、結果としてそのうち二人は去り、サンジェイ一人しか残っておらず、万が一このモデルチェンジがオーナーの意向だったとしても大失敗と言えます。
そして、この一年間少しずつ改革を推し進めてきたのでエドゥが最後のピースで、あとは安定が必要だ、というのも非常に奇妙な話です。
上に書いた通り、ガジディス・サンジェイ・ミスリンタートの3人体制でやってきたのにも関わらず、途中でミスリンタートもガジディスも去り、また一からのスタートを強いられているわけで、着実に改革を進めてきた、というのは率直に言って事実からほど遠いです。
また、エドゥが最後のピース、という言葉ですが、そもそもアーセナルは当初TDとしてモンチを狙っていたことは誰もが承知の事実なので、第二あるいは第三希望だったエドゥがアーセナル改革の最重要ピースのような言い方をするのも不自然です。
また、メルテザッカーのアカデミー長就任を薦めたのはベンゲル監督ですし、ユングベリがトップチームに加わったのも、ボールドとユングベリ自身が役割の交換を提案したと明らかにされています。ということはつまり、どこにもオーナーが指示を出したり、介入したという要素が見当たりません。笑
そして、最後にですが、常に公式の発表などではクロエンケファミリーは優勝を目指す、プレミアリーグとチャンピオンズリーグに挑戦する、と口にしておきながら現実がそれとは程遠く、そもそもそれを目標としてクラブが努力している様子さえ見せないからこそファンが失望しているわけです。
そんな中、このメッセージ中では変革が必要なのではなく、安定が必要、と口当たりの良い言葉に包まれていますが、つまりはこのままでよい、ということであり、特になんらかのアクションを起こすことを示す減給などは全くありませんでした。
もちろんだからと言って何もするつもりがない、とは限りませんが、やはり、最も重要なのはオーナーが何を言うか、ではなくクラブが実際にどのような動きを見せるかでしょう。もし百歩譲って現アーセナルのフロント陣が本当にアーセナルをプレミアリーグ挑戦可能にできるくらいにまで立て直せるだけの能力を備えているのだとしたら、やはりそれを移籍市場や契約のマネージメント、そして究極的にはピッチ上の成績で見せてもらわなくては、ファンは納得できないでしょう。
というわけで、後半はなんだか愚痴みたいになってしまいましたが、結局一言でまとめると、メッセージはわかったから行動で見せてくれ、といったところでしょうか。
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