アーセナルはバロガンとの契約延長に関して一線を引かなくてはならない
2020年の7月1日を思い返してみよう。ブカヨ・サカがアーセナルとの契約延長にサインし、アーセナルファン界隈で安堵が満ちた日だ。
もしかすると契約満了と共にサカがアーセナルを去るのではないか、という不安が払しょくされた日だった。
その後サカはさらにとんでもない成長を続け、今季すでに国内戦だけで7ゴールを挙げ、もしかすると今季最優秀選手獲得もある勢いの活躍を見せている。
既にアーセナルアカデミー史上最高のタレントなのではないか、という呼び声も上がっており、クラブが彼の契約延長にクラブが必死になったのは理解できる。
報道によれば、この契約のサカの週給は3万ポンドで、うわさでは、すでにこの条件を改善する交渉がクラブとサカの間で始まっているという。もちろん、サカの活躍はそれに値するものだ。
だが、彼の現在の週給3万ポンドという数字は、クラブが若手にどれくらいの額であれば支払うつもりがあるかの良い指標となるだろう。
契約延長の時点でまだサカはトップレベルでプレイを始めてからそこまでたっておらず、チームの絶対的なスタメンというわけではなかった。
これを踏まえると、未だアーセナルのトップチームでの先発のないフォラリン・バロガンが週給として要求していると報じられている4万ポンドというのはなかなかとんでもない数字だ。
彼のユースレベルの成績は素晴らしく、ヨーロッパリーグでの3度の途中出場で2ゴールとアーセナルファンを興奮させるのに十分な成績だが、ダンドーク戦で得点した12月からバロガンとの契約延長交渉は進んでいない。
これが最近彼が試合に出場していない理由なのだろう、と見る向きもある。彼はアーセナルのU-23の試合にすら出ていないし、インスタグラムの投稿をすべて削除したりもしている。
会見でバロガンに関して質問された時のアルテタのスタンスは一貫しており、残留を望んでいるとコメントしている。もっとも最近のコメントは以下の通りだ。
『彼と話すたびに彼はここに乗るつもりだといっているし、私はかなり楽観的でいるよ。代理人との会話もポジティブなようだし、これはエドゥが担当している。アカデミーのタレントをクラブにとどめるのは重要なので、エドゥはこの交渉にかなりの時間とエネルギーを割いているし、彼をとどめるために出来る限りのことをするつもりだ。』
メディアを前にして正直に、かつ説得力溢れる会話ができるというのはアルテタの魅力の一つのひとつで、このようなコメントを出すのは契約延長交渉においてポジティブな影響があるだろう。
ミケル・アルテタにこれ以上何が出来るというのだろうか。
もちろん、よりシニカルな答えは『もっとバロガンを起用する』というものだ。
だが、これに関してアーセナルの姿勢は一貫している。契約延長すれば出場機会が得られる。その逆ではないのだ。
これは他の若手に関しても同様だし、今後もクラブが継続すべき方針だ。若者が一流のレベルでその能力を証明するまでは、彼らに気前の良い契約をオファーしたりはしない。
したがって、アーセナルでブレイク一歩手前という位置にいる選手たちもこれを受け入れなくてはならないわけだが、少なくともバロガンの代理人たちはこれに満足していないようだ。
もちろん、これもまた理解できることではある。
バロガンはイングランドサッカー界で将来が嘱望されている若手で、ヨーロッパの多くのクラブが彼がフリーで移籍するならその契約を勝ち取ろうと躍起になっている。
アーセナルが現状出しているよりも金銭面で好条件のオファーを出すクラブがあるのは間違いないだろう。
そして、これによりアーセナルは若干トリッキーなシチュエーションに追い込まれることになる。バロガンの代理人会社であるエリートプロジェクトグループはアーセナルのユース卒の選手の多くの代理人を同時に努めており、バロガンの要求をはねつければ、もしかすると彼らとの関係は悪化してしまうかもしれない。
だが逆に、要求を呑めば、代理人はアーセナルは無理を言えば妥協するクラブと見込み、他の選手に関しても高給を要求してくるかもしれない。
そして、そもそもバロガンに高給を支払うのは全体の給与体系を脅かす可能性のある問題だ。
未だにアーセナルでの先発がない選手が例えばリース・ネルソンより高額の給与を得ることをどうやって正当化出来るだろうか。
既にファーストチームの経験が豊富な選手たちよりも高額の給与をアカデミーを卒業したばかりの若者に与えることはできない。
アーセナルは早めにバロガンとの契約延長に関してどこかで一線を引かなくてはならない。あるいは、もしかするとクラブはもうすでに決定を下しているのかもしれない。
仮に彼がどれほど将来性がある選手だとしても、プレミアリーグに出場経験すらない若手の為にクラブ全体の給与体系を捻じ曲げるわけにはいかないのだ。
もちろん、かといってまだアーセナルファンが希望を失う必要もない。バロガンの代理人会社は出来るだけ契約を満了に近づけ、最後の最後で延長することで良い条件を引き出すことに定評がある。もしかすると、最後にバロガンも折れ、夏に延長に合意するかもしれない。
一つだけ確かなのは、アーセナルが現在のバロガン側の要求を呑むべきではないということだ。エドゥとエリートプロジェクトグループのいたちごっこは、もうしばらくの間続くことだろう。
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