スタッツと戦術で振り返るアーセナル vs マンチェスター・シティ
アーセナル・コラムらしからぬ硬派な戦術記事となっております。
先発メンバー
もちろんレノが先発となり、ティアニー、ガブリエル、ルイス、ベジェリン、サカというメンバーが彼の前に並んだ。ジャカとセバージョスが中盤で、前線三人はオーバメヤン、ウィリアン、ペペという顔ぶれだった。
グアルディオラはよりトリッキーなメンツで、ウォーカー、ディアス、アケの3バックに、ウイングバックが誰だったのかは議論の余地があるところで、フォーメーション表上はマフレズとフォーデンで、カンセロがロドリとバーナード・シウヴァの横に入る形が多かった。
アグエロの相方をスターリングが務め、どちらが前に残り、どちらがスペースに降りるかは交代しながら入れかわった。
フォーメーション
アーセナルは3-4-3からボール保持時に4-3-3に移行するシステムで、横幅を使ってスペースを作り出そうとした。だが、シティがライン間に選手を多く配置したことで彼らはボール奪取した瞬間にパス連携からの攻撃を仕掛けられるという代償を支払うことになった。
アーセナルの非ボール保持時の3-4-3は規律正しく、ウィリアンが中盤を助けることで3対3を作り出していた。
シティはアーセナルの高さに応じて3つの異なるフォーメーションを採用し、アーセナルがボールを後ろで保持している際には4-2-4のような形で、アーセナルが中盤にボールを運べば4-4-2、そして引いて守備をする際には5-4-1のような形だった。
得点期待値とプレス
アーセナルは良いクオリティのチャンスを作り出すのに大いに苦戦し、これが0.7というxGに現れている。オーバメヤンとのワンツー後のサカのシュートが0.28という最大xGを記録しておりペペのヘディングのxGは0.22だった。
この試合でシティは1.53のxGを作り出しており、スターリングのゴールのxGは0.56で、アグエロとフォーデンもそれぞれ0.29と0.24のシュートを放った。
試合後アルテタはチームのプレスと守備に対する満足を表明したが、アーセナルはこの試合でシティを1守備アクション当たりパス(PPDA)14.2本という数字に抑えることに成功した。
これは素晴らしい数字で、実は途中でアーセナルは調子を落としており、その前は8.7という異例の数字だった。
シティはアーセナルをPPDA10.1に抑え、やはり彼らのアーセナルの後ろからの組み立てを止めるという強い意志が現れている。
マンチェスター・シティのボール保持
シティはビルドアップ時にスリーバックをワイドに広げ、さらにそこにフォーデンとマフレズが加わった。当初はアーセナルはハイプレスを仕掛け3バックと3対3の状態を作り出したが、シティはこれに対してシウヴァあるいはロドリが下りることで対応した。
グアルディオラはこれによりジャカあるいはセバージョスを前にひきつけられると知っており、これによりフォーデンとマフレズは相手との1対1を得ることが出来た。
カンセロが狭いハーフスペースでプレイしサカを中に引きつけていたことでアーセナルはマフレズ相手に1対2を作れず、ティアニー一人で対応しなければならなくなった。
このようなハイプレスからゴールは生まれた。シティがアーセナルのプレスをかいくぐってボールをマフレズに届け、中のアグエロにボールが渡ったところで、ジャカが前にプレスに行っていたためセバージョスとスペースをもって向かい合うこととなった。
この時スターリングは前でアーセナルのバックラインをピン止めしており、ここからボールはベジェリンと1対1のフォーデンにわたり、彼がシュートに成功、レノがはじき、そしてそのリバウンドをスターリングが押し込んで得点となった。
アルテタはこのハイプレス戦術を変更し、ダブルボランチを後ろに留めてバックライン前のスペースを守らせようとした。
だがここでスターリングが前線から離れさらに後ろに下がって、アーセナルの中盤、あるいはその前でボールを受けるようになった。
ハイプレスがなくなり余裕が出来たシティの守備陣と中盤は今度は左でフォーデン、アケ、スターリングとシウヴァで数的優位を作ることに成功した。
アーセナルもこちらに人員を集めて対応しようとしたが、これにより、右サイドでマフレズとカンセロがサイドチェンジを虎視眈々と待つ、という状況が生まれた。
アーセナルのビルドアップ
シティはアーセナルのレノからのビルドアップを阻害するために6人の選手をアーセナル側のサイドに送り込んだ。
これによりビルドアップ時の人数は6対7となり、レノがパスを出すと、シティは5対5を作り出そうとしていた。下の図ではアグエロ(10)がルイスとベジェリンのパスのオプションをそのポジショニングで削り、このような状態でアーセナルの選手がパスを受け取った時にプレスのエンジンを掛けようとしているのが見て取れる。
アーセナルはジャカとセバージョスが下りてボールの受け手になることでこれを回避しようとした。確かにこれはアーセナルがシティのプレスの第一波を回避することには役立ったが、中盤の人数が一人減ることなった。
シティは逆に中盤を制圧してボールを取り戻そうとした。理想を言うと、オーバメヤンあるいはペペはこれを読んで、中に入るべきだったかもしれない。
前述の通り、アルテタがジャカとセバージョスをより深い位置に落としたことで、アーセナルはコンパクトになりシティはアーセナル守備陣の前でスペースが与えられることになった。
これによりシウヴァはより前に移り、ロドリはより伝統的な守備的MFのような位置を取ることとなった。
これはアーセナルにとってプラスの点もあり、アーセナルがシティのプレスを突破した際にはシティの選手たちを置き去りにすることが出来る可能性が高まった。
結論
この試合は戦術面で注目するポイントの多い非常に興味深い試合だった。二人の監督が自身の攻撃方針は維持しつつもお互いを無力化しようとしていた。
アルテタが試合中に対策を行うまではシティがアーセナルを自由に切り裂けるように見えたが、その後アーセナルはよりコンパクトになり、中央をよりよく守れていた。
だが逆にアーセナルはサイドで脆さも見せ、ベジェリンとティアニーが1対1を作られ、そこで逆足に追い込むのではなくデュエルにトライしすぎていた。
我々は皆知っている通り、アーセナルのこの先の道のりは長い。だが、アルテタが正しい方向に進みつつあるという兆候はこの試合で見られた。
もちろん競争力を維持するうえでは当然ではあるのだが、この数年間でアーセナルが90分間通してマンチェスター・シティときちんと戦えたというのは非常にレアな出来事だ。
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