アーセナルファンは忍耐強くアルテタの改革を見守らねばならない
ミケル・アルテタの監督としてのキャリアは、いきなりだがアーセナルで正念場を迎える。アルテタの前評判の高さが実戦ではどうなのかに誰もが注目している。
彼が素晴らしい監督になるだろうというものは多いが、それと同じくらい、彼が失敗するのを待ち構えているものもいるだろう。過去にいかなるレベルでも監督経験のない人物がアーセナルでの監督という大きな役割を任せられた例は過去にない。
もちろん、人々はアルテタが第二のグアルディオラとなることを期待しており、アーセナルで躓けば彼のキャリアは何年にもわたってその評判に傷がつくことになるだろうが、いくつかアルテタにとって有利に働くかもしれない点もある。
まず第一に、プレミアリーグという観点から見れば、 もちろんアルテタ自身はそう思っていないだろうし、金銭的な理由でヨーロッパリーグ出場権を落とすわけにはいかないアーセナル上層部は考えを異にするだろうが。 多くのガナーズファンは今季を既に諦めている、という点だ。
だからといってアーセナルファンがすべてを許してくれる寛大なる集団に突如として変貌したと考えるのは間違いないが、2018年の時点と比べれば失敗の余裕は少しあるように思える。
今のアーセナルが抱える選手たちの評判は史上最低と言ってもよく、恐らく彼らのうちだれが去ろうとも、そこまでファンはとやかく言わないだろう。アーセナルが降格争いに参戦しずに住んでいる理由であるオーバメヤンですらも例外ではない。確かに彼を失えば痛手だが、すでに彼は30才であり、どちらにしろ代役を考え始めなければならない時期に来ているのだ。
ベンゲル時代の終盤からエメリ時代にかけて、アーセナルは短期的にCL出場権を取り戻す方向性に舵を切った。オーバメヤンとムヒタリアンを非常に高額な給与で獲得し、それ以上に高額な契約をエジルに与えた。ともに既に30を越えているルイスとソクラティスを守備陣に加え、ラムジーとウェルベックを売却せず、フリーでもう一年留めることを選んだ。
エメリが就任した際にはこのような状況だったが、現在は、ムヒタリアンは既にローンに出され、エジルとオーバメヤンは少しずつ契約終了が近づいている。18か月前よりは、アルテタがチームの刷新を手掛けるのは少し楽なはずだ。そして、ラムジーの契約問題のようなデリケートな問題に対処する必要もない。
アルテタがもし望むのであれば、高給取りの選手を放出することも出来るだろうし、サポーターもそれに異を唱えることはしないだろう。エジルの擁護者は多いが、私が思うにこれはオンライン上での話で、アーセナルでの実情とは少し異なるように思う。
エジルがエメリとの争いともいえるものに勝利したのは、単にエメリがすぐに人気を失い、感情的な面で応援するのが難しくなったからに過ぎない。彼は既にユングベリから懲罰措置ともいえる采配を食らっており、エメリがもういない今、今度は純粋にエジルのパフォーマンスが問われるだろう。
恐らくアルテタにとっての最も大きな課題は、層の薄さだ。移籍市場は改革のチャンスでもあるが、今季に関しては、そういうわけにもいかないだろう。ユングベリが既にシニア選手を多くメンバーから外し、自身が指導した経験のある若手を起用するという大胆な策に出たが、アルテタが現スカッドをどのようにとらえているかは不透明だ。
ファンとしては、チームの刷新、何人かの選手の退団を望んでいるだろうが、アルテタは今すぐ大鉈を振るうというわけにはいくまい。彼自身が会見で口にした通り、選手に何が起きているかをきちんと理解するのは監督に必要な能力の一つだ。
彼らにはもう将来がないと決めつけてしまうのは簡単だが、それでも彼ら以外にアルテタが現時点で頼れる選手はいないのだ。どちらにせよ、賢明なリーダーというのは前評判で決めつけたりはしないものだ。
ジョージ・グラハムですらも、ベテランを放出し若い血に入れ替えるのに数シーズン待ったくらいだ。
ファンの感情としてはアルテタが大改革に乗り出しても不満は出ないだろうが、単にあまり多くの選手を放出するだけの層の厚さがアーセナルにはないのだ。
現実的には、ゆっくりとアルテタは誰が彼のビジョンに合致し、誰がそぐわないかを考えていく必要がある。シンプルに言えば、即座にチームに大改革が訪れるとは期待しない方がいい、ということだ。革命には時間がかかるものなのだから。
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