アーセナルフロントは今回の解任劇から学ばなくてはならない
記念すべきフレディ・ユングベリの初陣の日にネガティブな論調の記事を書くのは本来ならば避けたいところなのですが、やはりこのままレジェンドの監督就任&解任ブーストで色々なことがうやむやになってしまう前に、今回のエメリ監督解任を巡るアーセナルフロントの対応を振り返っておきたいと思います。
クラブ側はエメリのことを100%信頼している、と報じられてからまだ20日しか経っていないが、フランクフルト戦の敗戦後に、ウナイ・エメリが解任されることとなった。
ファンからすれば、ようやくか、という気持ちだろう。(結果論を言えば恐らくそれが最善なのだろうとは言え)去年の段階で解任すべきだったとまではいわないが、本来ならば、去年後半の不調がまぐれではなく、今季も継続しているということが明らかになった時点、シェフィールド戦での敗北辺り、あるいは遅くともレスター戦前の代表選期間中に手を打てたのではないかと思う。
エメリが全力を尽くしていたことは疑いはしないが、監督として、アーセナルで目的が果たせないことは既に明らかになっていたし、Standard紙などが報じる通り、選手が監督をからかうような状態だったとすればなおさら、もっと早く監督の任を解くべきだった。
これに関しては、やはり監督解任経験の少なさが影響しているのだろう。どういう結果に転ぶかはまだわからないものの、お隣のトッテナムでは功労者をためらいもなく解任すると同時にジョゼ・モウリーニョ招聘へと迅速に動いてみせたし、チェルシー、リバプールもやはり監督の扱いに関してはアーセナル、ユナイテッドよりも一枚上手という印象だ。
アーセナルとマンチェスターユナイテッドがベンゲル・ファーガソン体制の間に安定した成功を収めている裏側で試行錯誤を繰り返してきたクラブの方が、やはり監督解任や後任の選定に関しては経験豊富な分うまくやれるということなのだろう。
逆に言えば、アーセナルは今回の一件から学ぶ必要がある。未だにマンチェスター・ユナイテッドはファーガソン後のオペレーションがスムーズとは言えず、スールシャールも上手くいっているとは言い難く、恐らく上述の三クラブなら彼も既に解雇されているころだろう。
既にユナイテッドはモイーズ、暫定監督のギグス、ファンハール、モウリーニョ、スールシャールとファーガソン以降5人目の監督だが、このうちの誰も大きな成功を収められているとは言い難い。
ユナイテッドは莫大な資金があるため未だにヨーロッパのエリートクラブの座に留まれているが、アーセナルが彼らと同じ過ちを繰り返せば、ヨーロッパリーグレベルのクラブとして定着、あるいはさらに下のリーグ中位レベルのクラブまで転落してしまう可能性がある。
今季初めにはサンジェイはエメリと契約延長しようとしていた、という報道も出ているし、また、モウリーニョの招聘にも動いていた話もあり、今回の解任騒動を巡って、ペペの獲得で評判を上げたラウール・サンジェイ体制はファンの間で大きく株を落とすこととなった。
また、衝撃的だったのがエメリ擁護報道の際にデイビッド・オーンスティン氏が語った『 アーセナル上層部はウナイ・エメリのことを100%信頼しており、"ノイズ"に屈するつもりはない 』という言葉だ。
最近は準公式広報部のようになりつつあり、信憑性には定評のあるオーンスティン氏がこう言っているということは、この報道は恐らくある程度フロント主導で意図的になされたものなのだろう。彼のソースがサンジェイ自身なのか、あるいはアーセナルのどれくらいの立場の人間なのかはわからないが、少なくとも、もしこのような情報が表に出ることをクラブ側が快く思わないのであれば、ストップをかけるくらいはできたはずだ。
この報道がなされた時点ですら、ファンの声をノイズとしかとらえていないというのは傲慢だ、という批判の声が上がったが、皮肉なことに、今回のエメリの解任をもって、ノイズどころかクラブ上層部よりファンの声の方が的を得ていたことが証明されてしまった。
また、現在アーセナルは後任探しに奔走しているようで、エメリ監督解任後は現アシスタントコーチのユングベリを暫定監督として任命されている。このことからも、アーセナルフロントが監督解任という事態に本当に備えていなかったことが伺える。
もちろんユングベリの指揮下で、あるいは新監督のもとチームが良くなるという保証はどこにもないため、監督の解任というのは一種の賭けのようなものであるのには違いないが、それでも最近のアーセナルを見れば、エメリの解任が正しい決断だったのは間違いない。
逆に、解任の決断を先延ばしにすることで、アーセナルの評判は傷つき、スタジアムの空気は悪くなり、恐らく落とす必要のない試合を落としてしまった。
アーセナルフロントはより注意深く状況を観察し、より迅速に、決断力を持って行動すべきだった。これから全力で後任探しに力を注がなくてはならないのはもちろんだが、アーセナルは今回の経験から学ばなくてはならない。
ベンゲル監督がアーセナルを去った際には多くのファンがほっと溜息をつき、『誰が後任だろうと、どちらにしろこれ以上悪くなるはずがない』と思ったはずだ。だが現実は我々の想像を超えて過酷だった。
次の監督がアーセナルで成功を収め、CL出場権を取り戻してくれる保証はどこにもないのだ。リバプールやトッテナムが試行錯誤の末にクロップやポチェッティーノにたどり着き成功を収めたように、アーセナルもこれから何人かの監督を任命し、解任することを繰り返さなくてはならないかもしれない。
アーセナル上層部は今後に備え、より監督交代をスムーズに行えるような体制を整えるべきだ。
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