見え始めたデクラン・ライスのベストポジション

分析Tim Stillman,海外記事

2021-22シーズン、ウエストハムでライスはスーチェクと共にダブルボランチの一角でプレイしていた。この時2人のうちでより守備的なMFだったのがライスで、1ゴール4アシストを記録した。

この頃のウエストハムは守備の追われることが多かったが、より前目の位置でプレイしたスーチェクは5ゴールを挙げた。

その翌年、22-23シーズンはモイーズがこの並びをいれかえることにかえ、スーチェクをより低い位置で起用しライスを前に置いた。ライスの得点数とアシストは入れ替わり、この年は4ゴール1アシストという数字だった。

スーチェクも低い位置からも2ゴール3アシストを挙げたものの、彼の守備には疑問符が付き始め、アウェイでクリスタル・パレスに敗戦した試合でスーチェクが交代した際にはアウェイのアイアンズのファンから歓声が飛んだ。

実際の所、ライスはより高い位置でも、守備的な位置でも何の問題もなくプレイしていた。単に、スーチェクがより攻撃的なポジションの方が向いていたのだ。

ライスが去った後のウエストハムでより高い位置に再び戻ったスーチェクは7ゴール2アシストを挙げている。

もしライスがもう一年ウエストハムに残ることを選んでいたら、ライスをアンカーとして起用し、スーチェクをボックストゥボックス型のMFとして起用した方が良い、という結論に至っていたに違いない。

ここで興味深いのは、ライスはアーセナルに移籍した時点では守備的MFとみなされていた点だ。

ジャカの代役にはカイ・ハヴァーツというのがプランで、主にライスは低い位置で起用されていた。

だが、ジェズスの怪我、とトーマス・パーティのコンディションが安定しなかったことにより2024年の早い段階でアーセナルはチームを再編する必要があった。ハヴァーツをトップに移したことで、パーティを中盤の底に置いてのより高い左8番の位置でのプレイがライスは増え、結果的に昨季ライスは7ゴール8アシストとCMFとしては素晴らしい数字を残した。

このため、私もライスこそがグラニト・ジャカの後継者なのではないかというコラムなども書いたが、これは少し早計だったかもしれない。

この時点では初期のプランではなく、アルテタはハヴァーツをFWとして起用し、ライスを左8番として固定する方向に進んでいるように見えた。

ユーティリティ性のある選手が当初の想定と異なるポジションで花開く、というのは既にベン・ホワイトの前例があった。

もちろんホワイトが複数のポジションでプレイできるのは魅力ではあっただろうが、彼はファーストチョイスの右サイドバックで起用するというのはプランではなかったはずだ。

だがこれこそがユーティリティ性のたかい選手の魅力で、怪我などでチーム事情が苦しくなった時に助けてくれるだけでなく、状況次第で監督がプランAを変えることもある。

しかし、ライスに関しては夏から状況は少し変わっているように見える。

この時点でアーセナルはトーマス・パーティとジョルジーニョの後継となるMFを獲得しようとするのではないかと思われた。

だが実際にはアーセナルはミケル・メリーノを獲得し、彼はジャカとハヴァーツを足して2で割ったような選手だ。

また、イーサン・ヌワネリの成長スピードも凄まじく、もう1-2年もすれば彼が絶対的な先発メンバーとなっている可能性もある。

今季末でジョルジーニョとパーティは契約満了になるが、ここまでの出場機会を見ると、ジョルジーニョが契約延長なることはないだろう。

今季アルテタは好調のパーティをほぼ常に起用しており、彼に関しては何とも言えないが、いずれにせよ直近ではなく、中長期的な将来を見据えると、アーセナルが8番タイプよりも6番タイプを切実に必要としているのは間違いない。

もちろんライスのことだけを考えた場合には、必ずしも焦って彼のベストポジションはどこなのかという答えを出す必要はなく、単に必要に応じて使い分ければよいのだが、スカッドの将来のプランという点から見ると、そうもいっていられない。

ライスは両方のポジションにおいてまだ成長の余地を残している。

ボックストゥボックス型のMFとして昨季の数字は素晴らしかったが、今季ここまでは怪我の影響もあり、まだプレミアリーグでもCLでも、ゴールもオープンプレイからのアシストも記録できていない。

恐らくアーセナルはチームの8番にはもう少し得点とアシストでの貢献を求めているだろう。

彼は危機を察知してシンプルにそれを回避する能力が素晴らしいが、攻撃時の直感的なプレイにはそこまでの鋭さはないように見える。

ただいっぽぷで、ライスはボールの後ろでカウンターに対応したり、ルーズボールを回収することを非常に得意とする一方で、低い位置からボールを前に進めるようなパスはジョルジーニョやパーティほど得意というわけではない。

したがって彼を中盤の底で起用する際には少しこの点がネックとなる。イングランド代表もでボールを前に進められるパサーが不在の時に苦戦していた。

シャビ・アロンソやピルロのようなワールドクラスのパサーを相方にライスは必要としている、というわけではなく、ヘンダーソンやフィリップスのような堅実なパサーが居れば十分だが、そういった選手が今のイングランド代表にはいない。

ハーフターンでボールを受け、よりスムーズに前に繋げるようなプレイに関してライスはまだ成長途上ではある。

いずれにせよ、今の段階でもライスは6番と8番どちらのポジションでも良い仕事ができるが、ホワイトは右サイドバックになり、ハヴァーツはストライカーとなった。ブカヨ・サカはもう4年は左サイドでプレイしていない。

ユーティリティ性のある選手もどこかのタイミングで不動のピースとなることが多く、ここまでアルテタが獲得に動いてきたMFを見る限り、アルテタはアンカーのポジションをライスに託そうとしているのではないだろうか。

このポジションが確立されるまでの興味深いプロセスがどう進められるのか、見守りたい。

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Posted by gern3137