【アーセナル新戦力分析】ミケル・メリーノ
リカルド・カラフィオーリの獲得に続いて、ついにアーセナルが2人目の夏の補強となるMFのミケル・メリーノのレアル・ソシエダからの獲得を発表した。
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— Arsenal (@Arsenal) August 27, 2024
ではこのメリーノは一体どのような選手で、チームに何をもたらしてくれ、そしてなぜ32m£という移籍金がついたのだろうか。
ニューカッスル退団の経緯とスペインでのプレイ
最初にメリーノ獲得の噂が出た時、『なぜアーセナルは6年前ニューカッスルで結果を残せなかった選手を獲得するのだ?』というのが時折ファンから聞こえた質問だった。
だがメリーノは6年前の時点で既にニューカッスルでチームトップのインターセプト数とボール奪取数を記録しており、かつパス数90分当たり55.7、79.8%というのはチーム2位の数字だった。
実際には、ニューカッスルはメリーノをクラブに留めたいと望んでいたが、契約の中にバスクのクラブが獲得に動いたときに限って有効となる12m€の契約解除条項が含まれていたため移籍となったにすぎない。
これによりレアル・ソシエダは競争相手なしで格安でメリーノを獲得でき、また当時の監督ベニテスによると、この契約解除条項が、メリーノのニューカッスル加入時の条件だったのだそうだ。
そして、その後の6年間でメリーノはずっとプロフェッショナルなプレイを続けた。生まれ育ったオサスナでの台頭、ドルトムントとニューカッスルでのプレイを間に挟み、スペインでオールラウンダーとして成長を果たした。
また、スペインのサッカー教育は戦術やボールの扱いに時間を割くことが多かった一方で、ドイツではあまり出場機会を得られなかったものの、ドルトムントではトゥヘルからより基礎的な部分の重要性を学び、またニューカッスルでは大柄な選手相手にどのように対応し、あたりに負けないようにするかを学んだとも話している。
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デュエル・モンスター
メリーノを分析するにあたって、やはり一番目立つのはそのデュエル勝利数だ。彼はデュエルの申し子で、昨季のデュエル勝利数326というのは欧州五大リーグ最多の数字だった。
なんと彼は、2018年にレアル・ソシエダでプレイし始めて以降1663回のデュエル勝利を記録しており、これもまた、この期間中で欧州トップだ。
彼は積極的で、タックルで存在感を見せ、近い位置で相手に対応し、威圧する。彼は相手と泥臭い勝負を演じることを厭わないし、このような側面はイングランドで培われたのかもしれない。
上手く体を使って相手にぶつかり、ファウルをゲットし、肩をぶつけて相手を追いやったりといったプレイをずっと継続することができる。
中長距離に関してはそこまでスピードがあるわけではないが、相手のタッチミスへの対応やプレスのトリガーとなる必要がある場合には、驚くべき瞬発力も備えている。
昨季メリーノはアタッキングサード内でのタックル数18とこれもリーグトップの数字で、これは彼が高い位置からのプレスやボール奪取を任せることができる選手だというのを示している。高い位置でのボール奪取からシュートに繋げる回数が昨季リーグトップ(70回)だったアーセナルとも相性はいいだろう。
また、メリーノは空中戦も非常に強い。
ソシエダは地上で相手をかわしていくようなビルドアップを好むが、時折よりダイレクトなボールを選択し、そういった意味でメリーノは戦術的に非常にユニークな選手だ。
90分当たり10.1回の空中戦というのは昨季リーグ2位の数字で、そのうち勝利数の6.1はリーグ最多だ。今のアーセナルは空中戦に強い選手を多くそろえており、彼もまたそこに加わることになる。
また、メリーノは昨季オープンプレイからヘディングで3得点も挙げている。そのうちの2つはよく似ており、後ろからファーポスト側に走りこむ形だ。
ボール保持時のプレイ
では、ボールを保持している時のプレイはどうだろうか。
先月カラフィオーリの獲得はより左サイドを円滑にしてくれるだろうと書いたが、メリーノもその助けになるはずだ。
昨季アーセナルで左8番の位置で起用された選手はライス、スミスロウ、トロサールと右利きの選手が多く、よりピッチの内側に入るような形でボールを扱うことを好んだが、メリーノは左利きなので、よりパスのアングルが広い。
彼のパス成功率はキャリアを通して77%程度にとどまっているため、その質や正確さに疑問を抱くのは最もだが、一方で、その背景も知っておく必要がある。
メリーノはユーティリティ性を持つプレイヤーで、自陣からファイナルサードまで、あらゆる位置でボールを受け、状況に応じて最適なパスを選択する。
彼は中盤でハブとなってスペースに入り、チームメイトとのワンツーも得意としている。だが、非常にタッチの効率性がよく、メリーノはほとんど不要なボールタッチを行わない。ドリブルするよりもほぼ常に3タッチ以内にボールを離し、試合がスピーディに進むことを優先するのだ。
そして、これが、時折ボールロストが見られる原因の一つとなっている。
そして、メリーノは90分当たり5.91本のプログレッシブパス数を記録するなど縦へのパスも得意だ。トランジション時に縦に走るランナーさえいれば(マルティネッリとのプレイを見るのが楽しみだ)、常に長めのパスを狙っている。
ただ、彼はときどきパスを急ぎすぎることがあり、1,2秒まって先の展開を見るよりも、ランナーが見えた瞬間にパスを出してしまうこともある。
また、時々ボールタッチが大きくなってしまったり、パスの威力が強くなりすぎてしまう場面も見られるので、これは今後改善の必要があるだろう。
ただし、これは技術的な問題というよりも、どちらかというと忍耐や安定性の問題に見える。
アーセナルの左8番
昨夏アーセナルにハヴァーツが加入した際には、彼が任されたアーセナルの左8番の役割がどのように進化していくのか非常に興味深かった。
それまでは主に後ろでボールを繋ぐことが仕事だったジャカが逆に自身が前のスペースに飛び込んでいくことを任され、中に入るジンチェンコと縦に走るマルティネッリと共に得点を狙いだしていたが、その後任のハヴァーツの中盤でのプレイは機能するまでに少し時間がかかった。
だが、チームがどのような方向に進んでいるのは明らかだった。ハヴァーツは深い位置でボールを収め、デュエルに勝利する能力を持ちつつも、低めの位置から裏に走り、ボックスに飛び込んでいくこともできる選手だった。
興味深いことに、メリーノはどちらかというとジャカに似たタイプの選手だが、空中戦やデュエルの強さというハヴァーツ寄りの要素も兼ね備えている。
恐らくメリーノの加入で、アーセナルの中盤は再構築されることになるだろう。最近は8番としてプレイすることが多かったデクラン・ライスがアンカーとしてプレイする時間が増えるはずだ。
トーマス・パーティとジョルジーニョが二人とも来夏契約満了となることも含め、これによりアーセナルの中盤の役割はより明確になるだろう。
よりダブルボランチ的な形でメリーノとライスがプレイすることもあるかもしれないし、場合に応じてメリーノのの方が低い位置で起用されることもありうる。
まとめ
1年半前にトロサールとジョルジーニョがアーセナルに加わった際にも同じことを感じたが、今のアーセナルの成功は若手の活躍によるところが大きいものの、それでもチームには経験豊富な選手も必要なのだ。
上の二人の選手は適応も早く、スカッドに非常に貴重なものをもたらしたし、調子の波も少ない。メリーノも同じようなカテゴリーに分類される選手だろう。
報道によると、メリーノはレアル・ソシエダとの契約延長にも前向きだったが、アーセナル含む一部のクラブが獲得に動くのであれば移籍したいという希望を持っていたそうだ。
もちろん新たチームメイト、監督の指示、クラブの基準などに慣れる必要があり、メリーノ本人にとってもアーセナル移籍は大きなチャレンジでもある。ホワイトやライスはかつてアーセナル加入後学ばなくてはならなかったこと、情報量の多さを語っていた。
メリーノは移籍市場を沸かせる大型補強にはならないだろうが、キャリアのピークを迎えるタイミングで加わる経験豊富な選手で、すぐにアーセナルの戦力になってくれるだろう。直近の代表戦でも成功を収めていた。
彼はアーセナルの現在を見据えた補強なのだ。
イーサン・ヌワネリとマイルズ・ルイス=スケリーの成長も考慮されるべきで、彼らは今準備ができているというわけではないが、メリーノがきちんと役目を果たしてくれれば、数年後にチームの一員となってくれるだろう。
33m+5m€という移籍金はメリーノの年齢と、契約の残り年数を考えると確かに少し高いが、レアル・ソシエダは交渉が容易な相手ではないし、移籍市場も最終盤に差し掛かったアーセナルは他のオプションはなかったようだ。
もしメリーノがタイトル獲得まであと一歩に迫ったアーセナルがその悲願を達成するひと押しをしてくれる選手なのであれば、割高に感じられる数m£は全く問題とならないはずだ。
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