悠然と再浮上し前進を続けるルイス=スケリー

分析Tim Stillman,海外記事

半年前、アーセナルはエミレーツスタジアムでフラムを3-0を下した。薄氷の勝利が続いた緊迫したシーズンの中で、この試合は珍しく余裕のあるものだった。

アーセナルはマンチェスター・シティとのリーグ優勝争いを懸けた一連の『プレーオフ』のような5試合の真っ只中におり、同時にアトレティコ・マドリードとのチャンピオンズリーグ準決勝も控えていた。

だがその中でアーセナルは前半だけで3点のリードを奪い、ハーフタイムに選手たちがトンネルへと引き上げる際には、スタンドから割れんばかりの歓声が送られた。

その前の週末はニューカッスルを相手に苦しみながら1-0の辛勝で、アトレティコとのアウェー戦でも低調な内容で1-1の引き分けに終わっていた。

ブカヨ・サカが長期離脱からチームに復帰していたがアルテタが停滞した攻撃を活性化させる方法を模索していたことは明らかだった。

このタイミングで、アーセナルのフィールドプレイヤーの中で最も多くのリーグ戦での出場時間を記録していたスビメンディがベンチに下がり、ルイス=スケリーがアーセナルでのキャリアにおいて初めて中盤で先発した。

実はその前に、ウィガンをホームに迎えたFA杯の試合でも彼は中盤で先発する予定だったが、試合直前にカラフィオーリが負傷したため、ルイス=スケリーは左SBに戻り、代わりにサカが中央でプレーすることになった。

このフラム戦は、BBCのマッチレポートは、以下のように評した。

アルテタ監督、リスクを伴うと受け取られかねない決断を下したことを評価されるべきだ。左SBのマイルズ・ルイス=スケリーを初めて中盤で起用し、最多出場時間を記録していたスビメンディを先発から外したのだ。19歳のルイス=スケリーは中盤で落ち着いたプレーを見せ、カラフィオーリ、サカ、エゼも揃って先発したことで、アーセナルの攻撃はここ数週間で最も流動的なものとなった。

ルイス=スケリーはその後、アトレティコとのチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグでも先発の座をキープし、ウェストハムとの重要なアウェー戦でも先発出場した。そしてチャンピオンズリーグ決勝でも先発した。

フラム戦の一週間前ごろまでは、多くのアーセナルファンが、左SBにインカピエ、中盤にスビメンディが加入したことを受けて、彼が夏に売却されるのは避けられないと話していたにもかかわらずだ。

アカデミー出身選手で、獲得に移籍金がかかっていないという事情が彼を売却候補としてクラブにとって魅力的なものとしていた。彼の道は塞がれているように見えた。そして、そうした声は明らかにルイス=スケリー本人の耳にも届いていた。

彼はプレミアリーグのトロフィーと一緒に撮った写真をInstagramに投稿した際、『pure profit(純利益)』(アカデミー出身選手なので、ルイス=スケリーを売却すれば、その移籍金全てを帳簿上利益として計上できる、としばしば話されていたことを受けて)というキャプションを添えたほどだった。実に痛快な切り返しだった。

しかし、彼の運命は変わった。アルテタは、トップチームでCMFとしてほとんどプレーした経験のない10代の選手を起用するために、スビメンディをベンチに下げるという大胆な決断を下した。そしてルイス=スケリーは、その信頼に応えた。

ユース時代のポジションではなかった左SBとして彗星のように現れたルイス=スケリーは、今度は中盤でも同じことをやってのけたのだ。

アーセナルほどのクオリティを持つチームで、10代の選手が異なる2つのポジションでそれぞれレギュラー争いに割って入るというのは、並外れた偉業だ。彼が当たり前のようにそれを成し遂げたため、ほとんど誰もその凄さに気づいていないように感じる。

さらに、この夏も、彼にとって難しいものになる可能性もあった。

まず第一に、シーズン終盤の復活劇を経てもイングランド代表のW杯メンバー入りを勝ち取るには十分ではなかった。振り返ってみれば、トゥヘルのこの判断は少し長期的な視野を欠いていたと思う。

彼はその後すぐ、今季の9月の代表ウィークでは、イングランド代表のネーションズリーグ4試合のうち3試合にCMFとして先発することになった。

ただし、ワールドカップで消耗する夏を過ごさずに済んだことは、長期的には彼にとってむしろプラスだった可能性はある。そのおかげでプレシーズン全期間をアーセナルで過ごすことができ、しかも中盤でプレーする機会も得られた。

ライス、メリーノ、スビメンディ、ウーデゴール、エゼ、ブルーノと言った選手たちがW杯の終盤まで残っていたため、中盤でアピールする絶好の機会が与えられたのだ。これによって、彼はシーズン開幕に向けて有利な立場に立つことができた。

しかし、この夏には彼にとっての障害となっていたかもしれない2つの要素もあった。

1つはギマランイスの加入だ。彼の加入は、ルイス=スケリーの成長を阻む新たなハードルになり得た。そしてもう1つは、大物アタッカーを獲得する資金を捻出するため、クラブ内部の一部の人間(!?)がルイス=スケリーを他クラブに売り込んでいるという噂があったことだ。

夏の間にこうした話が飛び交う中、ルイス=スケリーはコモとのプレシーズンマッチでゴールを決める活躍を見せ、その後はさらに印象的だった。

ギマランイスがコンディションに多少の不安を抱えながらシーズンを迎えたが、ルイス=スケリーのパフォーマンスがあまりにも良かったため、彼が中盤にいる限り、それはまったく問題にならなかった。ヴィラパークでの勝利や、ホームでのチェルシー戦でも素晴らしい活躍を見せた。

実際のところ、ギマランイスは現在も、ライスの中盤のパートナーというポジションをルイス=スケリーから完全に奪い取るほどのプレイを見せてはいない。

また、ルイス=スケリーが左SBで積んだ経験も非常に役に立っており、彼がさらに多くの出場時間を得る助けになっている。フリートウッド戦ではこの両方のポジションでプレーし、エヴァートン戦とリール戦でも左SBとして先発した。

若手選手が自身のキャリアを築くにあたって、メインのポジションだけでなくサブポジションも持っているというのは非常に有益だ。

先週のバイエルン戦でルイス=スケリーはギマランイスに代わって途中出場したが、より経験豊富で、より高額な移籍金で加入したチームメイトを上回るプレーを見せたように映った(誤解しないでほしいのだが、ここでギマランイスを批判するつもりはない。彼も今シーズン、非常に重要な貢献をしている)。

9月にインタビューを受けたルイス=スケリーは、プレッシャーや緊張に対処するために、マインドフルネスのテクニックを活用していることを語っていた。

仏教には『モンキーマインド』という考え方があります。落ち着きのない心のことで、心配事から別の心配事へと次々に意識が飛び移ってしまうような状態を指します。

だから、何か重圧を感じたときには、興奮を鎮めて、心に静けさを取り戻し、落ち着くことが自分にとって重要なんです。呼吸法でも、音楽でも、誰かと話すことでもいい。どんな方法であれ、常に冷静さを保つことが大切だと感じています。

この考え方は、彼のプレーだけでなく、さまざまな状況への対処の仕方にも表れている。ここ半年間は彼にとって、決して順風満帆なものではなかった。何かを与えられたわけでも、自然と物事がうまく運んだわけでもない。だが彼は自らの力で再浮上し、ひとたびポジションをつかみ取ると、それを守り抜いた。

昨季の冬の時点で、半年後にはルイス=スケリーが中盤の序列でスビメンディを大きく上回ることになると、いったい誰が想像できただろうか。

これほど数多くの困難を乗り越え、このチームで居場所を勝ち取るには、特別な才能だけでなく、特別なメンタリティが必要だ。

彼はあまりにも堂々とそれらの試練を乗り越えてきたため、我々はその稀有な素質にほとんど気づいてすらいなかった。彼は、紛れもなく並外れた才能の持ち主なのだ。

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Posted by gern3137