トーマス・パーティの起訴とアーセナルFCの暗黒の日について

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何が起きたかは既にサッカー界全体に知れ渡っていたことではあるが、昨日ロンドン警視庁がトーマス・パーティを強姦と性加害容疑で起訴したことを発表した。

1人の女性に対する2度の強姦、2人目の女性に対する3度の強姦、そして3人目の女性に対する1度の性加害容疑は全て2021-22年の期間中に起こったものであると報道されている。

まず、明確にしたいのがこの話題は非常に深刻な犯罪に関してのもので、被害者の人生に破滅的な影響を与え、恐らく彼女たちは今もまだ苦しんでいるであろう、ということだ。こういった行為は被害者の人生にそのような影響をもたらす。

今のオンラインコミュニケーション全盛の時代においては望みが薄いかもしれないが、アーセナルファンであろうと、他のチームのファンだろうと、この問題を冗談や自らのチームのライバル関係などの文脈で持ち出すような行為は軽蔑されるべきで、それに値する扱いを受けるべきだ。

これは非常にセンシティブかつ多くの人々の感情をかき乱す話題で、残念なことに、実際にサッカー界以外でも多く起きることであるがゆえに、多くの人にとって目をするのがつらいこともある話題だ。

コメントなどでこれに関して議論する場合は、そういった人々への配慮を持った文章で行ってほしい。

そして、法的なプロセスへのリスペクトも必要となる。

このニュースが3年前に報じられた時点で、既に『匿名のプレミアリーグ所属のサッカー選手』が誰を指すのかというのは明らかだった。

だが、英国法上の理由でその名前を明かすことはどのメディアもできなかった。したがって、これらの逮捕と結びつく可能性があるような何らかの形で彼の話をすることは不可能だった。

詳しくは以下の記事で解説されているが、簡潔に言えば、そのような報道が裁判前に出てしまえば判決に影響を与える可能性があるから、というのが理由だ。

私が運営しているプラットフォームでも、コメントの削除や制限などといったそれなりの措置が必要だったが、当然ながら司法における公正さを保つ方が遥かに重要だ。

そして、それにかかるほんの少しばかりの労力など、被害者の方が耐え忍ばなくてはならなかった可能性があることに比べれば微々たるものだ。

そして、現時点でもまだ、これに関する議論が判決に影響を与えないように、そのやり方に細心の注意を払うことが重要だ。

発表の中でロンドン警視庁は『法務省のガイドラインに沿って、節度を保った報道をお願いする。編集者、出版社、SNSユーザーは1981年裁判尊重法に違反することがないよう、専門機関の助言を得ることを推奨する』と述べた。

では、これに則って、何を言うことが出来るだろうか?

まず第一に、アーセナルファンとして、クラブに失望し、怒りを覚えなくてはならないというのは非常に残念だが、それこそが今日私が抱いている感情である、ということだ。

トーマス・パーティは単にこれらの容疑にかけられただけではなく、複数回逮捕されていた。それにもかかわらず、彼は保釈中にアーセナルFCでのプレイを続けた。

もちろん有罪の判決が下るまでは無罪として扱われるべきである、という原則は承知の上だが、それは法廷での話であって、職場での話ではない。

サッカー界以外で、従業員の一人が強姦と性加害容疑で逮捕されたにもかかわらず、通常通り仕事を続けさせるような会社が存在するだろうか?

アーセナルは全従業員に心理的安全性が保障されている労働環境を提供する責任があったが、彼のピッチ上での才能が何よりも重要である、と決断したようだ。

もしアーセナルがここで彼をプレイさせることを止めてしまえば、裁判前には名前を明らかにしない、というルールに実質的に反し、それがパーティだと明かすようなものだっただろう、という意見もあるようだが、これはそこまで説得力のある理由には思えない。そもそもサッカー界の誰もがそれが誰のことなのか知っていた。

既にTV放送に載るくらいにファンからのブーイングが起きていたし、非常に悪趣味な『彼女はNOと言った』というチャントがイングランド中のスタジアムで歌われ、ファンがこの件を挑発や煽りに使っていた。

これらは全てとても悪質だが、アーセナルの、パーティを起用し続けるという対応こそがこれを引き起こしたのだ。

私はホーム最終戦をスタジアムで観戦したが、ニューカッスルファンは90分間ずっとこのチャントを歌い、ブーイングを行っていた。これは私が何十年もずっと愛してきたクラブの消えない汚点となってしまった。

ただ、これだけなら、彼の名前を出すことはできない、という原則だけで説明がつく可能性はなくはなかった。

だが、その後起きたことを考えれば、アーセナルが倫理面での非難を免れるとは思えない。

彼の契約は6/30で満了することになっていたのだから、そこで別れを告げればよかったのだ。にも拘わらず、アーセナルは6月中、彼と契約延長の可能性を模索し交渉し続けた。

クラブのトップのオーナーや上層部、中間管理職、法務部、メディアチームに至るまで、誰もが彼にどのような嫌疑が書けられていたかを知っていたはずだ。それでもクラブは彼に新契約を与えるべきだと決断した。これは本当に恥ずべきことだ。

スポーツ面の都合が、何が正しいかよりも優先したと言いうわけだ。

さらに言えば、クラブは現在公の場で報じられているよりもさらに詳細な情報をこの件に関して得ていたはずだ。それにもかかわらず、クラブである程度の立場にあるメンバーの誰一人として『このような対応はアーセナルFCにとって受け入れられない』と主張しなかったのか?

いったい『妥協不可のポイント』はどこへ行ってしまったのだ?

彼の契約延長がまとまらなかったのは、単に金銭面が理由で、それ以外の何物でもない。この発表が行われた後でさえも、彼の名前がアーセナルの公式サイトに掲載されていたことは、このような発表が行われるであろうということをクラブが知らなかったことを示唆している。

アーセナルはモラルハザードを起こしているかもしれないが、彼らも馬鹿ではない。もし知っていれば、前もって何かしら対応していたはずだ。

昨日は繰り返し『元アーセナル所属の選手』と報じられたが、もしかするとこれが『アーセナル所属で、クラブは容疑を知りながらごく最近契約延長を行った選手』だったかもしれないのだ。

何と悲しく、何と陰鬱なことだろうか。

確かに、アーセナルというクラブは地元、世界中を問わずアーセナルコミュニティのために素晴らしい仕事をしている。だが、この件に関しては、我々全員が愛し、思い入れのあるクラブの歴史に消えない傷をつけた。

これは大変なスキャンダルだが、クラブが出した声明は法律上の状況を隠れ蓑にした、クラブにとって都合の良い簡潔な文章のみだった。

他に何か言うことが出来るだろうか。何度かなぜこの件を私のブログは報じないのだ、と聞かれた。実際に心苦しい思いもしたし、もしかすると、それについて話すことが正しいことなのではないか、と思ったこともあった。

だが、もしそれを報じていても、法律上の理由でコメントはオフにする必要があっただろう。だが、いずれにせよこの件は様々なメディアで報じられていたし、今朝の時点では、これに対する対応が間違っていたとは思わない。

これはアーセナルに都合の悪いことを報じないようにしよう、というような決断ではなかった。

加えて、そもそもこのような件に関してはクラブの手にゆだねるのではなく、プレミアリーグが何かしら方針を決めなくてはならない、という意見も見られる。現状今回のような事態が起きた際に何かしらのプロトコルが定められているわけではなく、クラブが自由に対処を決定できる状況になっているからだ。

確かに、選手の誰かが非常に深刻な犯罪の容疑にかけられた際には、何かしらの規制が必要だろう。この件が出来る限り早く対処されることを願っている。

一旦今日はここで終わりにしたいと思うが、アーセナルにとって非常に暗い日だ。もちろん二度とこのようなことが起きないことを願っているが、もし起きてしまった場合には、クラブはここから学び、より適切な対応を見せて欲しいものだ。

もし今日の記事を読むのを困難に感じた方が居たとしたら、イギリスの方であれば、サポートを提供している窓口があることを知っておいて欲しい。

また、アーセナルファンの性加害反対団体も存在している

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Posted by gern3137